「一生年収300万円の会社」にうっかり入ったら、どうすればいい? 2012年11月13日 ビジネスの書棚 ツイート 今、あなたは働いている会社が、どれだけ危険かを知っているだろうか? 経営コンサルタントの平康慶浩氏が書いた「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」(東洋経済新報社刊)では、以下の10個の質問を投げかけ、危険信号の判定をさせている。 (1)売り上げが減りつづけている (2)3年以内に早期希望退職を実施した (3)3年以内に一律の賃金カットをした (4)賞与が減る一方だ (5)年次ごとの平均人数よりも新入社員が少ない (6)サービス残業は当たり前だ (7)名ばかり管理職がいる (8)顔見知りの20代社員が年に2人以上辞めた (9)3分の1以上を出資している親会社がある (10)役員に名前だけの社長親族が2人以上いる さあ、あなたの会社には、いくつYESがあっただろうか。 著者の平康氏が解説する。 「3個以上の『その通り』があれば、その会社には危険信号がともる。さらに、5個以上になれば、昇給は、ほとんどなかったはずだ」 そしてこう続けている。「そうした会社は『ブラック型企業』か『業績悪化型企業』のどちらかだ」と。いや、「最悪の場合は、その両方の『二重苦企業』かもしれない」と。 ◇ 賃金アップがない時代に給与を増やす方法とは? いま日本の会社の4社に1社は、昇給がない。 厚生労働省の「賃金引き上げ等の実態に関する調査結果」によると、さらに、残る3社のうち2社では昇給額は5000円未満だ。つまり、5000円以上の昇給がある会社は4社に1社しかないのだ。 なぜ給与が増えなくなったのだろうか。理由は2つある。 1つは、人件費がコストとして管理されるようになったためだ。かつては人件費は「聖域」だった。給与を下げることは、どの会社でもほとんどなかった。しかし、今や人件費は、大半の企業で「変動費」になってしまった。 もう1つは、人を相場の給与で入れ替えられるようになったからだ。かつては、転職しないで、がんばる人が優秀な社員で、会社もそのがんばりに報いていた。しかし、転職が一般化するにつれ、企業は優秀な人だけを昇給させればよくなってしまった。つまり「給与の相場」ができてしまったのだ。 では、そんな時代にどうやって給与を増やせばいいのか。 この疑問に対し、この本は具体的に指南をしている。基本的な方法は以下の3つだという。 (1)定期昇給で増やす (2)昇進で増やす (3)配置転換で増やす もちろん、第4の方法として、その会社を辞めて「転職する」という道もある。だが、その前にするべきこととして、この3点を重視している。 ◇ 職種・業種別で具体的な方法を展開 そして、本書の真骨頂がここから始まる。 先の(1)~(3)で示した方法が、それぞれ「普通の企業」「ブラック型企業」「業績悪化型企業」での給与の増やす方法に対応するのだ。 「ブラック型企業であっても、業績悪化型企業であっても、社内にとどまって給与を増やす方法はある」。この本がユニークなのは、著者がこのように主張している点にある。 さらに、それを職種・業種別に区分けを行い、具体的な方法を展開している。そのため、非常に興味深い一冊となっている。 例えば、「ブラック企業型の飲食業」の場合は、どうすれば「昇進」によって給与を増やせるのだろうか。この本によると、次の3つがポイントになるという。 (1)POSシステムを使いこなす (2)原価率を覚える (3)常に役職者を目指し続ける 1つ目はどういうことだろうか。「POS」とは、「ポイント・オブ・セールス」で、多くの飲食店が導入をしている販売管理システムだ ただし、これは単なるレジではない。商品をいつ仕入れて、いつ売れたのかをタイムリーに把握するシステムだ。この本では、POSシステムを使いこなし、「売り上げ履歴の確認」と「客単価の確認」を、身をもって覚えていくことを強く勧めている。 こうして店舗ビジネスというものの仕組みを理解することが、低賃金から抜け出す手段になるのだという。残りの2点については割愛するが、本の中では、非常に詳しく説明されている。 もちろん、ブラック企業で昇進することのデメリットを認めた上で、「飲食業で昇進なんてしたくない」という意見に対しては、親身のアドバイスも展開している。 「一生年収300万円の会社に、うっかり入ってしまった」 その罠に落ちた若者たちにとって、この本は実践的な救済の書となるだろう。 【その他ビジネスの書棚の記事はこちら】
「一生年収300万円の会社」にうっかり入ったら、どうすればいい?
今、あなたは働いている会社が、どれだけ危険かを知っているだろうか?
経営コンサルタントの平康慶浩氏が書いた「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」(東洋経済新報社刊)では、以下の10個の質問を投げかけ、危険信号の判定をさせている。
(1)売り上げが減りつづけている
(2)3年以内に早期希望退職を実施した
(3)3年以内に一律の賃金カットをした
(4)賞与が減る一方だ
(5)年次ごとの平均人数よりも新入社員が少ない
(6)サービス残業は当たり前だ
(7)名ばかり管理職がいる
(8)顔見知りの20代社員が年に2人以上辞めた
(9)3分の1以上を出資している親会社がある
(10)役員に名前だけの社長親族が2人以上いる
さあ、あなたの会社には、いくつYESがあっただろうか。
著者の平康氏が解説する。
「3個以上の『その通り』があれば、その会社には危険信号がともる。さらに、5個以上になれば、昇給は、ほとんどなかったはずだ」
そしてこう続けている。「そうした会社は『ブラック型企業』か『業績悪化型企業』のどちらかだ」と。いや、「最悪の場合は、その両方の『二重苦企業』かもしれない」と。
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賃金アップがない時代に給与を増やす方法とは?
いま日本の会社の4社に1社は、昇給がない。
厚生労働省の「賃金引き上げ等の実態に関する調査結果」によると、さらに、残る3社のうち2社では昇給額は5000円未満だ。つまり、5000円以上の昇給がある会社は4社に1社しかないのだ。
なぜ給与が増えなくなったのだろうか。理由は2つある。
1つは、人件費がコストとして管理されるようになったためだ。かつては人件費は「聖域」だった。給与を下げることは、どの会社でもほとんどなかった。しかし、今や人件費は、大半の企業で「変動費」になってしまった。
もう1つは、人を相場の給与で入れ替えられるようになったからだ。かつては、転職しないで、がんばる人が優秀な社員で、会社もそのがんばりに報いていた。しかし、転職が一般化するにつれ、企業は優秀な人だけを昇給させればよくなってしまった。つまり「給与の相場」ができてしまったのだ。
では、そんな時代にどうやって給与を増やせばいいのか。
この疑問に対し、この本は具体的に指南をしている。基本的な方法は以下の3つだという。
(1)定期昇給で増やす
(2)昇進で増やす
(3)配置転換で増やす
もちろん、第4の方法として、その会社を辞めて「転職する」という道もある。だが、その前にするべきこととして、この3点を重視している。
◇
職種・業種別で具体的な方法を展開
そして、本書の真骨頂がここから始まる。
先の(1)~(3)で示した方法が、それぞれ「普通の企業」「ブラック型企業」「業績悪化型企業」での給与の増やす方法に対応するのだ。
「ブラック型企業であっても、業績悪化型企業であっても、社内にとどまって給与を増やす方法はある」。この本がユニークなのは、著者がこのように主張している点にある。
さらに、それを職種・業種別に区分けを行い、具体的な方法を展開している。そのため、非常に興味深い一冊となっている。
例えば、「ブラック企業型の飲食業」の場合は、どうすれば「昇進」によって給与を増やせるのだろうか。この本によると、次の3つがポイントになるという。
(1)POSシステムを使いこなす
(2)原価率を覚える
(3)常に役職者を目指し続ける
1つ目はどういうことだろうか。「POS」とは、「ポイント・オブ・セールス」で、多くの飲食店が導入をしている販売管理システムだ
ただし、これは単なるレジではない。商品をいつ仕入れて、いつ売れたのかをタイムリーに把握するシステムだ。この本では、POSシステムを使いこなし、「売り上げ履歴の確認」と「客単価の確認」を、身をもって覚えていくことを強く勧めている。
こうして店舗ビジネスというものの仕組みを理解することが、低賃金から抜け出す手段になるのだという。残りの2点については割愛するが、本の中では、非常に詳しく説明されている。
もちろん、ブラック企業で昇進することのデメリットを認めた上で、「飲食業で昇進なんてしたくない」という意見に対しては、親身のアドバイスも展開している。
「一生年収300万円の会社に、うっかり入ってしまった」
その罠に落ちた若者たちにとって、この本は実践的な救済の書となるだろう。
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