商社マン「7億円横領」で懲戒解雇 「玉突き人事」で社内大混乱 2014年4月21日 今週の「懲戒処分ウォッチ」 ツイート 伊藤忠商事は4月16日、ニュージーランドの関連会社に出向していた30代の元男性社員が、総額で約7億円を横領していたと発表した。横領した金は外国為替証拠金取引(FX)に流用しており、会社は元社員を懲戒解雇、業務上横領容疑で警視庁に告発する。 この男性は森林木材事業の関連会社に出向し、経理を担当していた。30代の若さで海外出向しており、かなり優秀な出世頭だったことだろう。金額から見ても出向先で重要なポジションにいて、大きな裁量を持っていたことが伺える。 年収1000万円超も「一攫千金」ねらい失敗? 伊藤忠の給与明細 伊藤忠商事の30歳時点の平均年収は、「年収リサーチ」によると996万円(平成25年3月時)。財閥系の大企業を押さえ、卸売業でもトップに輝く高収入だ。 キャリコネ「年収・給与レポート」に寄せられた同社30歳の会計職の口コミによると、毎月の給与は、基本給が60万円。時間外手当8万円に資格手当7万円、住宅手当2万円などを加えると、額面78万円あまりに。年2回の定期賞与計400万円を加えると、年収は1340万円にものぼる。 これは明らかに、高給取りの部類だろう。ということは、給与に不満があったのではなく、より大きな金を手に入れたいという野心があったということなのだろうか。高給には不正を防ぐ意味合いもあるはずなのだが…。 FX取引は破産ができないため、損失は必ず補填しなければならない。男性はおととし5月から今年2月まで2年近くにわたり、会社の銀行口座の金を自分の口座に不正に送金、合わせて777万ニュージーランドドル(日本円でおよそ7億円)を横領していた。 架空の請求書を作成するなどの方法で、会社の口座から自分の口座に資金を送り、FXでの度重なる損失を補填。ことし2月に発覚を恐れた男性が不正をみずから申告し、事件が明らかになった。 一番迷惑を被ったのは「自社の社員」か 関係者によると、今回の事件を受け、伊藤忠商事は大きな混乱に包まれたようだ。新年度が始まったばかりにもかかわらず、4月17日には新たな人事が発表された。社外監査役に、元経済産業事務次官の望月晴文氏が就任。本体だけでなく、いくつかの関連会社も同日に人事異動が決定されているという。 横領に直接関与した社員は他にいないようだ。しかし、男性の元上司や所属セクションの長など関係のある人物は管理責任が問われ、懲罰的な異動があったとみられる。関連会社に出向していた社員が、取締役から外れるケースもあった。 大企業では不祥事が起きた場合、上層部の首の挿げ替えがしばしば行われる。玉突き人事で様々なポストの異動が行われ、無関係の社員まで急な異動に巻き込まれる場合もある。当事者からすれば、新年度早々たまったものではないだろう。 伊藤忠商事の浦島宣哉部長は会見で、「このような事態になったことは誠に遺憾であり、関係者の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわびします」と陳謝。だが、この件で一番迷惑を被ったのは、伊藤忠商事の社員なのかもしれない。(懲戒処分ウォッチャー・ムライセツオ) あわせてよみたい:社員が明かす伊藤忠商事の年収・口コミ
商社マン「7億円横領」で懲戒解雇 「玉突き人事」で社内大混乱
伊藤忠商事は4月16日、ニュージーランドの関連会社に出向していた30代の元男性社員が、総額で約7億円を横領していたと発表した。横領した金は外国為替証拠金取引(FX)に流用しており、会社は元社員を懲戒解雇、業務上横領容疑で警視庁に告発する。
この男性は森林木材事業の関連会社に出向し、経理を担当していた。30代の若さで海外出向しており、かなり優秀な出世頭だったことだろう。金額から見ても出向先で重要なポジションにいて、大きな裁量を持っていたことが伺える。
年収1000万円超も「一攫千金」ねらい失敗?
伊藤忠商事の30歳時点の平均年収は、「年収リサーチ」によると996万円(平成25年3月時)。財閥系の大企業を押さえ、卸売業でもトップに輝く高収入だ。
キャリコネ「年収・給与レポート」に寄せられた同社30歳の会計職の口コミによると、毎月の給与は、基本給が60万円。時間外手当8万円に資格手当7万円、住宅手当2万円などを加えると、額面78万円あまりに。年2回の定期賞与計400万円を加えると、年収は1340万円にものぼる。
これは明らかに、高給取りの部類だろう。ということは、給与に不満があったのではなく、より大きな金を手に入れたいという野心があったということなのだろうか。高給には不正を防ぐ意味合いもあるはずなのだが…。
FX取引は破産ができないため、損失は必ず補填しなければならない。男性はおととし5月から今年2月まで2年近くにわたり、会社の銀行口座の金を自分の口座に不正に送金、合わせて777万ニュージーランドドル(日本円でおよそ7億円)を横領していた。
架空の請求書を作成するなどの方法で、会社の口座から自分の口座に資金を送り、FXでの度重なる損失を補填。ことし2月に発覚を恐れた男性が不正をみずから申告し、事件が明らかになった。
一番迷惑を被ったのは「自社の社員」か
関係者によると、今回の事件を受け、伊藤忠商事は大きな混乱に包まれたようだ。新年度が始まったばかりにもかかわらず、4月17日には新たな人事が発表された。社外監査役に、元経済産業事務次官の望月晴文氏が就任。本体だけでなく、いくつかの関連会社も同日に人事異動が決定されているという。
横領に直接関与した社員は他にいないようだ。しかし、男性の元上司や所属セクションの長など関係のある人物は管理責任が問われ、懲罰的な異動があったとみられる。関連会社に出向していた社員が、取締役から外れるケースもあった。
大企業では不祥事が起きた場合、上層部の首の挿げ替えがしばしば行われる。玉突き人事で様々なポストの異動が行われ、無関係の社員まで急な異動に巻き込まれる場合もある。当事者からすれば、新年度早々たまったものではないだろう。
伊藤忠商事の浦島宣哉部長は会見で、「このような事態になったことは誠に遺憾であり、関係者の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわびします」と陳謝。だが、この件で一番迷惑を被ったのは、伊藤忠商事の社員なのかもしれない。(懲戒処分ウォッチャー・ムライセツオ)
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