• 「結婚しよう」って言ったくせに・・・ 不倫の責任逃れする課長【弁護士に言っちゃうぞ(1)】

    「向こうから誘っておいて・・・ずるい」。こう言って唇を震わせるのは、大手金融機関で経理を担当するA子さん(31歳)。

    彼女は、同じ経理課の課長(36歳)と帰宅時間が同じになることが多かったことから、一緒によく食事をするようになり、仕事の悩みを聞いてもらっていた。そしてある日、課長から「妻と別れて結婚するから」と誘われ深い関係になり、付き合うようになった。

    その後、A子さんは妊娠。結婚を前提として付き合っていた彼女としては、当然産みたい。そのことを課長に告げると、彼は出産費用の一部を支払っただけで、逢うのを避けるようになってしまったという。

    ようやく連絡をつけて話し合った結果、課長に妻と別れるつもりがないと知ったA子さんは、課長に慰謝料を請求したいと言った。しかし課長は「不倫って違法だろ? 慰謝料なんて認められるわけがない」と拒んだという。

    A子さんは、課長にこのまま何もできないのか? 男女間の問題に詳しいアディーレ法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞いてみた。

    嘘で傷ついた心に対する損害賠償を請求できる

    ――これはひどいですね。そういうことをする課長に対しては「奥さんに言うぞ!」とお金を脅し取った後で、奥さんに事のあらましをすべて教えてあげましょう。さらにその後、会社にもこの事実をばらして会社にもいられなくさせてやりましょうか。

    …というわけにもいきません。いうまでもなく、お金を脅し取ることはれっきとした犯罪です。恐喝罪が成立することになります。悔しい気持ちはわかりますが、絶対にやめましょう。そんな人間のためにあなたが罪を犯す必要はありません。

    では、そんな最低な課長には、正攻法では何もできないのでしょうか。みなさんもご存知だと思いますが、法律では、悪いことをして他人に損害を被らせた場合、その損害を賠償しなければならないと定められています。

    今回のケースでは、課長は、妻と別れるつもりがないのに「妻と別れる」と嘘をついてまでA子さんの乙女心を弄び、妊娠までさせた上、出産費用の一部のみ支払うことによって責任逃れをしようとしています。

    そんな課長の振る舞いに、A子さんの心はひどく傷ついたことは想像に難くありません。A子さんの傷ついた心(精神的損害)に対する慰謝料を請求できることになります。

    そして、この損害の賠償は、相手がどんなに悪いことをしていても免れることはできない義務です。ただ、損害を被ったことに対して相手に落ち度があった場合は、ケースバイケースではありますが、損害賠償の金額が低くなることがあります。

    不倫でも大幅減額は認められない。養育費も取れる

    今回、A子さんは課長に妻がいることをわかって付き合っていました。不倫である以上、最後には結ばれないことを予想することが可能だったということで、その部分によって被った精神的損害を減額させる理由になるかもしれません。

    しかし、それ以上に大幅な減額が認められるということはないと思われます。今回のケースでは、課長が悪すぎます。通常、不倫は民法上の離婚原因である不貞行為となりますが、離婚はあくまでも課長とその妻の間の問題ですから、A子さんの損害賠償請求に大きく影響することはないでしょう。

    また、損害賠償請求とは別に、子供が生まれてきた場合には、A子さんから課長がその子の父親であることについて調停を申し立てることができます。調停によって話し合いでまとまれば、そこで養育費の問題等も含めて解決することになるでしょう。

    それでも課長が父親であることを否定し続ける場合には、「強制認知の訴え」を提起して裁判所に親子関係を公的に認めてもらい、養育費を請求していくことが考えられます。DNA鑑定がある以上、本当に課長の子供であることが確実であるならば、裁判で負けることはほぼないと言っていいでしょう。

     最後に、損害賠償や養育費の金額についてです。これは様々な事情によるので一概には言えませんが、B課長の年収を500万円と仮定すれば、慰謝料は50~100万円前後、養育費は月々5万円前後くらいで落ち着くのではないでしょうか。

    今後どのようにしていくのがA子さんにとってベストなのか、一度弁護士などの専門家にご相談されてみてはいかがでしょうか――

     【取材協力弁護士 プロフィール】

        刈谷 龍太(かりや りょうた)
        弁護士(東京弁護士会所属)。中央大学法科大学院卒業。
      司法修習第64期。
        弁護士法人アディーレ法律事務所

        パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を
      専門に扱う部署
    に所属。
        問題点を的確についたシャープな切り口のトークには、内外問わず
      評価が高い。

       休日は趣味であるサッカー・フットサルを楽しむ。テレビも大好きで、ニュースだけでなくドラマからバラエティ番組まで幅広くチェックしている。
       公式ブログ「こちら弁護士刈谷龍太の労働相談所」では、労働問題などの気になる記事を「実おもニュース」(実におもしろいニュース)として、独自の視点から解説している。 

    (最新の記事は @kigyo_insiderへ)  

  • 企業ニュース
    アクセスランキング

    働きやすい企業ランキング

    年間決定実績1,000件以上の求人データベース Agent Navigation
    転職相談で副業