逆ギレ乗客を警察に突き出したバス運転手、上司から「やり過ぎだ」とまさかの始末書要求 ある男性の回想 NEW 2025年10月19日 キャリコネNEWS ツイート 画像はイメージ バスの前にパトカーが回り込み、サイレンが鳴り響く。緊迫した雰囲気のなか、車内に乗り込んできた警察官が乗客の一人を取り押さえ、そのままパトカーへと連行していった――。まさに衝撃的な出来事だ。路線バス運転手だった橋口さん(仮名、50代男性)は15年経った今でも忘れられないという。 発端は、一人の乗客からの一方的なクレームだった。11月の日曜日の夕方のこと、橋口さんが都内のターミナル駅と大学を結ぶ路線バスを運転していると、都心のバス停から一人の男性が乗車してきた。 「ジャケットを着たおしゃれな身なりの70代くらいの男性で、いきなりすごい剣幕で『早発だろ!!何やってんだ!!』と怒鳴られました」 編集部では橋口さんに取材し、当時の状況を語ってもらった。(文:篠原みつき) 腕時計が15分遅れている乗客が逆ギレ 早発とは、バスが定刻より早くバス停を出発することを指す。しかし、実際にはバスは定刻より5分ほど遅れていた。橋口さんが行き先を確認しても、男性は 「馬鹿にしてるのか!」 と怒鳴るばかりだった。男性が自分の腕時計を見ながら文句を言っていることに気づいた橋口さんが、その時計に目をやると、なんと15分も遅れていた。 それを指摘すると、男性はさらに興奮。見かねた他の乗客が「あんたが悪いんだから!」と注意してくれたことで、男性は一旦落ち着き、後方の座席に座った。その路線は比較的空いており、車内には5~6人しか乗客がいなかった。 身の危険を感じて押した「緊急ボタン」 だが、騒動はこれで終わらなかった。注意してくれた乗客が途中のバス停で降りると、男性は再び運転席の横に立ち、罵声を浴びせ始めたのだ。 「『お前の言い方はなんだ』とか『運転手のくせに生意気だ』とか、罵声の嵐です。他のお客様は知らないふりでした」 運行中にもかかわらず、騒ぎは10分ほど続いた。そしてついに、男性は運転する橋口さんの左腕を掴もうとしてきたのだ。身の危険を感じた橋口さんは一度バスを停めて抗議したが、男性は2分もしないうちに同じことを繰り返した。その時、橋口さんは「普段なら絶対にやらない」という行動に出た。 「たまたま後ろにパトカーがいるのを見て、緊急ボタンを押しました」 行き先表示が「緊急事態発生」に切り替わり、後ろのパトカーがすぐに赤色灯を点灯させた。橋口さんが二車線道路の左側に停車すると、パトカーは、サイレンを鳴らしながらバスの前に回り込んで停車した。橋口さんは、当時の緊迫した状況をこう語る。 「警官が入り口ドア前に来た瞬間に扉を開けて、乗車後すぐに閉じました。事情を説明している最中も(男性は)罵声と今度は暴れ始め、警官に手を出した瞬間に『ゲンタイ(現行犯逮捕)』と一人の警官が言ったと同時にバスの床にねじ伏せられて、そのままパトカーへ!」 上司から「やり過ぎだ」と始末書を要求され… その後、別のパトカーも到着し、乗客への事情聴取が始まった。バスは約20分間その場に停車することになったが、他の乗客たちは警察に協力的で、聴取はスムーズに進んだという。 しかし、話はこれで終わらない。営業所に帰ると、橋口さんは上司から信じられない言葉を告げられた。 「今度は上司から、ちょっとやり過ぎたと言われて、始末書を書くように強制されました」 運転を邪魔してくる客を放置したら事故に繋がる危険性がある。警察を頼るのもやむを得ないと思えるが、会社側はドライバーに非があるかのような対応だった。 橋口さんは「報告書ならまだしも、始末書はおかしい」と断固として提出を拒否した。同僚たちは、自身の評価への影響を恐れてか、この件に関して何も言ってこなかったという。 「何も言われないのは、こちらとしてもむしろありがたかったですが。その後の顛末については、会社からも警察からも一切、何も連絡がなかったためわかりません」 橋口さんは当時、大手バス会社から路線を委託されている会社に勤務していた。それまでいくつかバス会社を経験していたが、「ほかの会社に比べて官僚的な社風は合わなかったです」と当時を振り返る。 現在はバス業界を引退し、社会福祉士の資格を取得して介護兼一般タクシーの乗務員として働いている。現在はバス業界を引退し、介護の仕事に就いている。「当時はこのような事案が発生すると、ドライバーに責任をなすりつける業界でした。今、人が居なくても仕方がないと思います」と、バス業界の問題に静かに言及した。
逆ギレ乗客を警察に突き出したバス運転手、上司から「やり過ぎだ」とまさかの始末書要求 ある男性の回想 NEW
バスの前にパトカーが回り込み、サイレンが鳴り響く。緊迫した雰囲気のなか、車内に乗り込んできた警察官が乗客の一人を取り押さえ、そのままパトカーへと連行していった――。まさに衝撃的な出来事だ。路線バス運転手だった橋口さん(仮名、50代男性)は15年経った今でも忘れられないという。
発端は、一人の乗客からの一方的なクレームだった。11月の日曜日の夕方のこと、橋口さんが都内のターミナル駅と大学を結ぶ路線バスを運転していると、都心のバス停から一人の男性が乗車してきた。
「ジャケットを着たおしゃれな身なりの70代くらいの男性で、いきなりすごい剣幕で『早発だろ!!何やってんだ!!』と怒鳴られました」
編集部では橋口さんに取材し、当時の状況を語ってもらった。(文:篠原みつき)
腕時計が15分遅れている乗客が逆ギレ
早発とは、バスが定刻より早くバス停を出発することを指す。しかし、実際にはバスは定刻より5分ほど遅れていた。橋口さんが行き先を確認しても、男性は
「馬鹿にしてるのか!」
と怒鳴るばかりだった。男性が自分の腕時計を見ながら文句を言っていることに気づいた橋口さんが、その時計に目をやると、なんと15分も遅れていた。
それを指摘すると、男性はさらに興奮。見かねた他の乗客が「あんたが悪いんだから!」と注意してくれたことで、男性は一旦落ち着き、後方の座席に座った。その路線は比較的空いており、車内には5~6人しか乗客がいなかった。
身の危険を感じて押した「緊急ボタン」
だが、騒動はこれで終わらなかった。注意してくれた乗客が途中のバス停で降りると、男性は再び運転席の横に立ち、罵声を浴びせ始めたのだ。
「『お前の言い方はなんだ』とか『運転手のくせに生意気だ』とか、罵声の嵐です。他のお客様は知らないふりでした」
運行中にもかかわらず、騒ぎは10分ほど続いた。そしてついに、男性は運転する橋口さんの左腕を掴もうとしてきたのだ。身の危険を感じた橋口さんは一度バスを停めて抗議したが、男性は2分もしないうちに同じことを繰り返した。その時、橋口さんは「普段なら絶対にやらない」という行動に出た。
「たまたま後ろにパトカーがいるのを見て、緊急ボタンを押しました」
行き先表示が「緊急事態発生」に切り替わり、後ろのパトカーがすぐに赤色灯を点灯させた。橋口さんが二車線道路の左側に停車すると、パトカーは、サイレンを鳴らしながらバスの前に回り込んで停車した。橋口さんは、当時の緊迫した状況をこう語る。
「警官が入り口ドア前に来た瞬間に扉を開けて、乗車後すぐに閉じました。事情を説明している最中も(男性は)罵声と今度は暴れ始め、警官に手を出した瞬間に『ゲンタイ(現行犯逮捕)』と一人の警官が言ったと同時にバスの床にねじ伏せられて、そのままパトカーへ!」
上司から「やり過ぎだ」と始末書を要求され…
その後、別のパトカーも到着し、乗客への事情聴取が始まった。バスは約20分間その場に停車することになったが、他の乗客たちは警察に協力的で、聴取はスムーズに進んだという。
しかし、話はこれで終わらない。営業所に帰ると、橋口さんは上司から信じられない言葉を告げられた。
「今度は上司から、ちょっとやり過ぎたと言われて、始末書を書くように強制されました」
運転を邪魔してくる客を放置したら事故に繋がる危険性がある。警察を頼るのもやむを得ないと思えるが、会社側はドライバーに非があるかのような対応だった。
橋口さんは「報告書ならまだしも、始末書はおかしい」と断固として提出を拒否した。同僚たちは、自身の評価への影響を恐れてか、この件に関して何も言ってこなかったという。
「何も言われないのは、こちらとしてもむしろありがたかったですが。その後の顛末については、会社からも警察からも一切、何も連絡がなかったためわかりません」
橋口さんは当時、大手バス会社から路線を委託されている会社に勤務していた。それまでいくつかバス会社を経験していたが、「ほかの会社に比べて官僚的な社風は合わなかったです」と当時を振り返る。
現在はバス業界を引退し、社会福祉士の資格を取得して介護兼一般タクシーの乗務員として働いている。現在はバス業界を引退し、介護の仕事に就いている。「当時はこのような事案が発生すると、ドライバーに責任をなすりつける業界でした。今、人が居なくても仕方がないと思います」と、バス業界の問題に静かに言及した。