• なぜ「優秀な部下」ほど静かに辞めていくのか? 管理職が見落としがちな「離職シグナル」 NEW

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    私が担当する管理職向けのマネジメント研修では、「部下が辞めてしまって困っている」といった悩みがよく出ます。表現は悪いですが、辞めてほしいと思っている部下ではなく、辞められたら困ると思っている部下ほど辞めていく現状に頭が痛いと皆さん話します。

    今回は、辞めて欲しくない部下の離職シグナルに気づき、管理職として取っていきたいコミュニケーションについてご紹介して参ります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)

    離職を告げられたときにはもう手遅れ

    優秀な部下が離職を考える根底には、「この環境では自分の価値を活かしきれない」という思いがあることが多いです。悩みを抱えながら静かに離職の準備を進めていくため、その兆候に気が付きにくく、離職を告げられた時にはもう離職を留まらせることは難しいようです。

    優秀な部下は日常から自律的に仕事をこなし、自律的に自分のキャリアを考えているため、不満を口にすることが少ない傾向にあります。目の前の状況を自分の力で切り開いていくといった思いから、静かに次のステージに移っていってしまうのです。しかし、優秀な部下でも、離職前に静かなサインを出しています。ここに気づけるかどうかが、管理職としてのマネジメント力を左右していきます。

    優秀な部下が出す7つの離職シグナル

    部下がいつも突然「辞めてしまう…」と感じている皆さんは、以下の7つのシグナルに気をつけてみてください。

    (1)相談や雑談が減る
    心理的な距離が生まれ、以前は雑談を気軽にしていたのに、必要最低限な会話しかしなくなっていきます。

    (2)主体的な提案が減る
    優秀な部下ほど仕事や組織の課題に対して主体的に動きますが、モチベーションの低下とともに「〇〇しませんか?」とか「私がやります」と言った発言が減っていきます。

    (3)勤務態度は変わらないが笑顔が減る
    与えられた仕事はきっちりこなしますが、笑顔が減り感情表出が減っていきます。

    (4)職場での人間関係への気遣いが減る
    これまでは良好な人間関係を築けていたのに、人間関係構築のための積極的なコミュニケーションが減っていきます。

    (5)キャリアの話が個人的なものになる
    所属している会社での将来キャリアとは思えないキャリア展望を、周囲に語る機会が増えていきます。

    (6)有給休暇を計画的に取る様になる
    次のステージへの資格取得や転職エージェントとの面接のため、計画的に有給休暇を申請する様になります。

    (7)自身の仕事を整理しだす
    優秀な部下ほど、飛ぶ鳥跡を濁さずの思いのもと引き継ぐ仕事を整理し、自身がいなくなった後の影響を最低限にするための準備を始めます。

    思い込みに“揺らぎ”を与える

    上記のようなシグナルに気づいた際は、日頃のコミュニケーションや1on1を通して、「この環境では自分の価値を活かしきれない」といった部下の思いに共感してきましょう。

    そして早い段階で、その思いに揺らぎを与えるコミュニケーションを取っていくのです。次のステップがお勧めです。ところどころで現在の仕事に対する承認やねぎらいの言葉をかけながら進めてみてください。

    ステップ1:キャリアを含め、問題だと感じていることを傾聴する
    業務進捗だけではなく、「今の環境で気になることはないか?」と問いかけ、個人の感情や将来の展望に焦点を当てて本音を引き出します。

    ステップ2:問題を細かな課題に分解させる
    「具体的にどの業務や関係性がネックなのか」を整理し、自分たちの力で対処可能なサイズまで課題を分解します。

    ステップ3:細かな課題が解決されたゴールを描かせる
    「その課題がなくなったら、ここで何を実現したいか?」と本来の欲求を想起させます。その上で「うちでもその形なら実現できるよ」という新たな視点(揺らぎ)を与えます。

    ステップ4:ゴールに向けた行動計画を立てさせる
    いきなり全て解決しようとせず、「来週からこの権限を渡す」など、部下が自分の価値を発揮できる小さな行動を用意します。上司としてどう支援するかも約束してください。

    ステップ5:行動をフォローしていく
    計画を立てて終わりでは部下は再び失望します。「やってみてどうだった?」と定期的に振り返り、変化や貢献を承認し続けることで信頼関係を再構築します。

    以上今回は、優秀な部下ほど静かに退職していくといった問題に対して、そのシグナルに気づき対応していく方法を紹介して参りました。「まさか彼(彼女)が辞めるとは思わなかった」といった状況に出くわさないためにも、本日の内容を働きがい溢れる人と組織のマネジメントに活かしていってください。

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