民主党のテレビCM「夢は正社員」は、なぜ働く人たちを当惑させるのか 2014年12月8日 キャリコネNEWS ツイート 第47回衆議院選挙が12月2日に公示され、14日の投票日に向けた選挙活動が始まった。巷の予想は与党の圧勝で、「Yahoo!ビッグデータ議席予測」は5日、自民党が300議席を超えるという分析結果を発表している。 対抗する民主党はというと、いまひとつ評価が高まらない。5日から放送が始まった「夢は正社員になること!」というテレビCMへも、ネットでは「それって何か違うんじゃない?」と首を傾げる声があがっている。それはなぜなのか。人材コンサルタントの深大寺翔氏に、ネットユーザーが抱く違和感の原因について分析してもらった。 「夢が小さい」という批判は的外れだとしても 民主党のテレビCM(女性の味方編)に対する反応は、5日夜からネットで急速に広まっているようです。ビジネスパーソンの利用が多いニュースアプリ「NewsPicks」にも、利用者からこのようなコメントが数多く書き込まれていました。 「全く共感できない。誰か止めなかったの?」 「民主党‥この勘違いっぷりがイラっとくる」 「自民党圧勝へのレールを敷いてどうする」 ただしコメントの内容をよく見ると、イライラは分かるものの違和感の理由まで明確に言い表している人は意外と少ないようです。何となくヘンだけど、なぜなのかが分からない…。そんな人がいるように見受けられます。 的外れと思える批判もあります。ある年配のユーザーは「夢が小さいですね」という書き込みをしていますが、正社員で働くことが当たり前だった昭和の感覚で、「そんなハードルの低いことが夢とは情けない」と思っているように読めます。 しかし現実には、正社員登用を熱望し、努力しても叶わない人がいるのも事実です。その点では民主党のCMの方が現実を踏まえていますし、制作者の意図もそんな現代日本社会の世知辛さ(と女性のけなげさ)に焦点を当てることだったと思われます。 問題は「正社員と非正規の格差」だという指摘 一方で、「雇用が安定し給料も高い正社員」だけをここまで理想化しすぎる描き方は、非正規雇用との「理不尽な格差」を追認している印象を与えかねません。あるユーザーは、違和感の理由をこう指摘しています。 「そこじゃないじゃん! 『正社員と非正規の(待遇の)格差』が問題なんだから、全ての労働者を敵に回しているんじゃない?」 「夢は正社員」というキャッチコピーは、裏返すと「非正規は地獄だよ」とも読めます。しかし政治の本来の役割は、非正規を含むすべての働く人たちが悩む理不尽な格差を解消することであるはずです。大企業に勤務する正社員ユーザーが少なくないNewsPicksで、 「このトーンだと却って派遣さんやパートさんが観たらキレるんじゃないかと思った」 というコメントが83件のlikeを集めて人気となったのも、格差を認識し、これが放置されていることに問題意識を持ちながら働いている人が多かった証拠でしょう。 もちろん、正社員と非正規雇用のバランスを取るためには、努力や成果を公平に評価したうえで、正社員だけを優遇する「既得権益」を手放させる必要も出てきます。 「多様な働き方」を認める世の中が望まれている この点について、民主党は「正社員だけが勝ち組のような風潮自体を変えていこう」と言えるでしょうか。ネットユーザーも、そこまでは期待していないようです。 「支持母体の連合が正社員優遇の元凶だから、こっちへおいでよ、おいしいから、というメッセージなのかな? 同一賃金同一労働と言って欲しいね」 「正社員になったら(会社によっては)奴隷ですけど?」 「これはむしろ、全ての派遣社員が可哀想だと勝手に決め付けている人々の票を狙ったCMですな」 そもそも期間の定めのない雇用契約と引き換えに、異動や転勤、残業などの生殺与奪を会社に握られる「正社員」を理想とせず、自ら望んで派遣やパートで働く人も大勢います。そういう人を軽視したように見えるCMに対し、 「これでは『我々民主党に、多様性を認める風土はありません』と公言しているようなもの」 と鋭い批判を下す意見もあります。正社員以外の「多様な働き方」が許容され、それぞれの豊かさの中で生きていける世の中が望まれているからこそ、あのCMに大きな疑問が集まったように思えてなりません。 あわせてよみたい:不規則なシフト勤務の「健康リスク」を英紙が報道
民主党のテレビCM「夢は正社員」は、なぜ働く人たちを当惑させるのか
第47回衆議院選挙が12月2日に公示され、14日の投票日に向けた選挙活動が始まった。巷の予想は与党の圧勝で、「Yahoo!ビッグデータ議席予測」は5日、自民党が300議席を超えるという分析結果を発表している。
対抗する民主党はというと、いまひとつ評価が高まらない。5日から放送が始まった「夢は正社員になること!」というテレビCMへも、ネットでは「それって何か違うんじゃない?」と首を傾げる声があがっている。それはなぜなのか。人材コンサルタントの深大寺翔氏に、ネットユーザーが抱く違和感の原因について分析してもらった。
「夢が小さい」という批判は的外れだとしても
民主党のテレビCM(女性の味方編)に対する反応は、5日夜からネットで急速に広まっているようです。ビジネスパーソンの利用が多いニュースアプリ「NewsPicks」にも、利用者からこのようなコメントが数多く書き込まれていました。
ただしコメントの内容をよく見ると、イライラは分かるものの違和感の理由まで明確に言い表している人は意外と少ないようです。何となくヘンだけど、なぜなのかが分からない…。そんな人がいるように見受けられます。
的外れと思える批判もあります。ある年配のユーザーは「夢が小さいですね」という書き込みをしていますが、正社員で働くことが当たり前だった昭和の感覚で、「そんなハードルの低いことが夢とは情けない」と思っているように読めます。
しかし現実には、正社員登用を熱望し、努力しても叶わない人がいるのも事実です。その点では民主党のCMの方が現実を踏まえていますし、制作者の意図もそんな現代日本社会の世知辛さ(と女性のけなげさ)に焦点を当てることだったと思われます。
問題は「正社員と非正規の格差」だという指摘
一方で、「雇用が安定し給料も高い正社員」だけをここまで理想化しすぎる描き方は、非正規雇用との「理不尽な格差」を追認している印象を与えかねません。あるユーザーは、違和感の理由をこう指摘しています。
「夢は正社員」というキャッチコピーは、裏返すと「非正規は地獄だよ」とも読めます。しかし政治の本来の役割は、非正規を含むすべての働く人たちが悩む理不尽な格差を解消することであるはずです。大企業に勤務する正社員ユーザーが少なくないNewsPicksで、
というコメントが83件のlikeを集めて人気となったのも、格差を認識し、これが放置されていることに問題意識を持ちながら働いている人が多かった証拠でしょう。
もちろん、正社員と非正規雇用のバランスを取るためには、努力や成果を公平に評価したうえで、正社員だけを優遇する「既得権益」を手放させる必要も出てきます。
「多様な働き方」を認める世の中が望まれている
この点について、民主党は「正社員だけが勝ち組のような風潮自体を変えていこう」と言えるでしょうか。ネットユーザーも、そこまでは期待していないようです。
そもそも期間の定めのない雇用契約と引き換えに、異動や転勤、残業などの生殺与奪を会社に握られる「正社員」を理想とせず、自ら望んで派遣やパートで働く人も大勢います。そういう人を軽視したように見えるCMに対し、
と鋭い批判を下す意見もあります。正社員以外の「多様な働き方」が許容され、それぞれの豊かさの中で生きていける世の中が望まれているからこそ、あのCMに大きな疑問が集まったように思えてなりません。
あわせてよみたい:不規則なシフト勤務の「健康リスク」を英紙が報道