1回で6000円買う高齢者も 移動スーパー「とくし丸」が救う「買い物弱者」 2015年3月7日 キャリコネNEWS ツイート 2015年3月3日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、大手スーパーやコンビニに押されて苦境に立たされている地方の中小スーパーの、生き残りをかけた取り組みを追った。 「下りのエスカレーターに乗っている感じ。(売上は)毎年落ちていった。もう会社が潰れるのではないかと」 そう話すのは、和歌山市を中心に3店舗を展開する小さなスーパー、サンキョー社長の石原達夫さん(69歳)だ。「今までは守ってばかりでジリ貧。どこかは攻めなければ」と厳しい表情で話し、幹部社員を招集していた。 地域のコミュニケーションの場にも 攻めの一手として目をつけたのが、徳島で生まれた「とくし丸」という移動販売の仕組みだ。地域のスーパーと契約して、地区ごとに週2回、個人宅の玄関先に専用の小型トラックで訪問する。この事業を任されたのは、入社18年目の御所隆さん(35歳)だ。 石原社長が視察に訪れると、商品をぎっしり詰めた小型トラックに近所の高齢者が何人も集まってきて、どんどんまとめ買いする。1回で4000~6000円買う人も稀ではない。 スーパーの店頭価格より1商品あたり10円ほど高いが、買い物に苦労する高齢者には利便性のメリットの方が大きいのだ。客のおばあちゃんは、孫ほどの販売員を「この子と会うのが楽しみ」と笑う。移動販売は、地域のコミュニケーションの場にもなっていた。 ドライバーは、とくし丸から研修を受けるが独立しており、スーパーはとくし丸からドライバーを紹介され、商品を提供して販売してもらう。利益は三者であらかじめ決められた割合で分配し、売れ残りはスーパーに戻すのでドライバーの負担にならない。 ドライバーの中道さんの月収は、手取りで月35万円ほど。売り上げによってドライバーの収入も上がるので、客の要望に応じたサービスに努力は惜しまない。 個人商店の商圏に入り込まない気づかい とくし丸は、個人商店の半径300メートル以内では営業しない。「地域のためのとくし丸が、地域の個人商店をつぶしては意味がない」という住友達也社長の考えによる。 すでに導入しているスーパー、キョーエイ社長の埴渕一夫さんは、とくし丸のトラック13台で月2000万円以上の売り上げをあげていると明かす。 「よそはネットスーパーをしたりするけど、たいがい大赤字。でも、とくし丸はみんなが独立営業者でやっているし、スーパーもリスクがない。売り手よし買い手よし、地域よし」 サンキョーの御所さんも準備に奮闘し、以前撤退した創業店舗があった団地前で移動スーパーを営業。かつての常連客が買い物に集まり、初日は上々の滑り出しだった。 番組ではこのほか、山梨県で健康志向のPB商品「美味安心」をウリにする、いちやまマートを紹介した。糖質カットの惣菜や無添加物食品など、客の健康志向に訴えて400種類以上を展開し人気を博している。 社長の三科雅嗣さん(62歳)は、地方の中小スーパーを救いたいという気持ちで、全国70社の中小スーパーにこのPB商品を卸している。いわく、「『美味安心』で価格競争のない健康志向のステージを目指そう」とのことだ。 大手スーパーより高額のPB商品をいかに売るか しかし、こだわりのPB商品は大手商品より高額でもあり、「コレを置けば客が買う」というわけではない。いちやまマートのやり方は、試食やPOPで具体的に、 「大手商品とどう違うのか、アンケートの結果どちらがおいしかったか」 などを売り場で分かりやすく見せ、大手商品のとの差を強烈にアピールしていた。三科社長は「地域スーパー共闘」の意気込みでPB商品を導入したスーパーにそのノウハウまで伝授していた。 いくら商品が素晴らしくても、それをうまく伝えられなければ意味がない。移動スーパーもただ行けばいいというものではなく、品ぞろえや宣伝、きめ細かなサービスが大事だ。 当たり前のことだが、高齢化で買い物に出られない人が増え、地方のスーパーから客足が遠のいている現実がある。こうした当たり前のことを必死にやる店が生き残っていくのだと感じた。(ライター:okei) あわせてよみたい:ドン・キホーテが「日本食」で米国進出に挑戦 「買い物難民」をなくせ! 消える商店街、孤立する高齢者 (中公新書ラクレ) 発売元: 中央公論新社 価格: ¥ 907 posted with Socialtunes
1回で6000円買う高齢者も 移動スーパー「とくし丸」が救う「買い物弱者」
2015年3月3日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、大手スーパーやコンビニに押されて苦境に立たされている地方の中小スーパーの、生き残りをかけた取り組みを追った。
そう話すのは、和歌山市を中心に3店舗を展開する小さなスーパー、サンキョー社長の石原達夫さん(69歳)だ。「今までは守ってばかりでジリ貧。どこかは攻めなければ」と厳しい表情で話し、幹部社員を招集していた。
地域のコミュニケーションの場にも
攻めの一手として目をつけたのが、徳島で生まれた「とくし丸」という移動販売の仕組みだ。地域のスーパーと契約して、地区ごとに週2回、個人宅の玄関先に専用の小型トラックで訪問する。この事業を任されたのは、入社18年目の御所隆さん(35歳)だ。
石原社長が視察に訪れると、商品をぎっしり詰めた小型トラックに近所の高齢者が何人も集まってきて、どんどんまとめ買いする。1回で4000~6000円買う人も稀ではない。
スーパーの店頭価格より1商品あたり10円ほど高いが、買い物に苦労する高齢者には利便性のメリットの方が大きいのだ。客のおばあちゃんは、孫ほどの販売員を「この子と会うのが楽しみ」と笑う。移動販売は、地域のコミュニケーションの場にもなっていた。
ドライバーは、とくし丸から研修を受けるが独立しており、スーパーはとくし丸からドライバーを紹介され、商品を提供して販売してもらう。利益は三者であらかじめ決められた割合で分配し、売れ残りはスーパーに戻すのでドライバーの負担にならない。
ドライバーの中道さんの月収は、手取りで月35万円ほど。売り上げによってドライバーの収入も上がるので、客の要望に応じたサービスに努力は惜しまない。
個人商店の商圏に入り込まない気づかい
とくし丸は、個人商店の半径300メートル以内では営業しない。「地域のためのとくし丸が、地域の個人商店をつぶしては意味がない」という住友達也社長の考えによる。
すでに導入しているスーパー、キョーエイ社長の埴渕一夫さんは、とくし丸のトラック13台で月2000万円以上の売り上げをあげていると明かす。
サンキョーの御所さんも準備に奮闘し、以前撤退した創業店舗があった団地前で移動スーパーを営業。かつての常連客が買い物に集まり、初日は上々の滑り出しだった。
番組ではこのほか、山梨県で健康志向のPB商品「美味安心」をウリにする、いちやまマートを紹介した。糖質カットの惣菜や無添加物食品など、客の健康志向に訴えて400種類以上を展開し人気を博している。
社長の三科雅嗣さん(62歳)は、地方の中小スーパーを救いたいという気持ちで、全国70社の中小スーパーにこのPB商品を卸している。いわく、「『美味安心』で価格競争のない健康志向のステージを目指そう」とのことだ。
大手スーパーより高額のPB商品をいかに売るか
しかし、こだわりのPB商品は大手商品より高額でもあり、「コレを置けば客が買う」というわけではない。いちやまマートのやり方は、試食やPOPで具体的に、
などを売り場で分かりやすく見せ、大手商品のとの差を強烈にアピールしていた。三科社長は「地域スーパー共闘」の意気込みでPB商品を導入したスーパーにそのノウハウまで伝授していた。
いくら商品が素晴らしくても、それをうまく伝えられなければ意味がない。移動スーパーもただ行けばいいというものではなく、品ぞろえや宣伝、きめ細かなサービスが大事だ。
当たり前のことだが、高齢化で買い物に出られない人が増え、地方のスーパーから客足が遠のいている現実がある。こうした当たり前のことを必死にやる店が生き残っていくのだと感じた。(ライター:okei)
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