途上国支援に走る若者を、大阪の中小企業経営者が一喝 「社会貢献? きれいごと言ってたらあかんのよ」 2015年3月22日 キャリコネNEWS ツイート 途上国向けのビジネスは、いま「BOPビジネス」と呼ばれている。Base Of the Economic Pyramid、すなわち経済ピラミッドの底辺にいる貧困層、という意味だ。とはいえ合計すれば40億人、600兆円ともいわれる巨大市場だ。 2015年3月19日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、そんなBOPビジネスの最前線で活躍する日本の中小企業、日本ポリグルの小田兼利会長(74歳)を紹介した。 ビジネス企画だけした学生には「現地へ行け」 大阪市にある日本ポリグルは、従業員35人。規模は小さいが、世界40カ国で水の浄化ビジネスを展開している。アジア最貧国のバングラデシュやアフリカの危険地域にも、納豆のネバネバを原料とした独自の浄化剤を販売し、現地で運営できる浄水施設も作っている。 現地の人を雇い、浄化剤の普及・販売をする「ポリグルレディー」や、浄化した水を運ぶ「ポリグルボーイ」などの雇用も生み出し、永続的なビジネスを成立させている。現地をたびたび訪れるという創業者の小田氏は、こう語る。 「ボランティアだけでやろうとしていたら、息切れしている。ビジネスとしていかにすれば両立できるかが、私たちのテーマだ」 今年3月、BOP事業案を競う「40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」が開かれた。全国から106組の応募があり、小田氏も審査員として最前列でプレゼンを見守った。 ある若い女性は「アフリカに健康と笑顔を届ける」をテーマに、「富山の置き薬」形式のビジネスモデルをプレゼンした。この女性に、小田氏は鋭く指摘する。 「預けるやり方だと、間違いなく売り飛ばされる。責任者を選んで、リスクを負わせないと収益性ゼロだ」 バングラデシュでのビジネスを提案したものの、現地には行っていないという男性には、「少ないお金でいいから、身ひとつで現地から始めた方がいい」と厳しくアドバイスした。小田氏は、コンテスト終了後の感想をこう漏らす。 「社会貢献なんて言われたら、私はアレルギーを起こす。そんなものじゃない。お互いに利益を出さないと。きれいごと言ってたらあかんのよ」 カネ儲けの失敗が海外進出のきっかけに 日本ポリグル入社3年目の水野花菜子さん(26歳)は、大学院卒業後、ボランティアでなく民間企業として国際協力に関わる仕事をしたいと入社した。 自分の足と目で現地の状況を見なければ分からないという小田氏の方針でタンザニアに同行し、単独での現地調査も任されていた。水野さんはやりがいをこう語る。 「日本にいると想定していなかったやり方、使われ方のビジネスが現地で展開されていたりするので、『こんなふうに発展しているんだ』と実際に見られるのはやりがいを感じます」 小田氏は元々機械工学のエンジニアで、空調メーカーのダイキン工業に勤めた後に独立し、いくつものヒット商品を生み出したアイデアマンだ。水質浄化剤の発想は、阪神淡路大震災で被災した際に思いついた。 6年掛かりで開発した水質浄化剤で「大儲けできる」と思ったが、日本ではほとんど相手にされず、スマトラ沖地震で被災地に寄付したことをきっかけに、海外に販路を見出した。バングラデシュでの販売にあたり同行した現地の実業家からは、こんな誘いも受けた。 「この浄化剤を我々に任せてくれれば、大きなビジネスになりますよ。もちろん、あなたも大儲けできる」 「意識の高い若者たち」に違いが通じるか このやりとりを見ていた村長は、「金持ちの彼らに任せたら、きっと我々には買えない値段になってしまう。儲けは少ないかもしれんが、なんとか私たちと直接取り引きしてくれんだろうか」と頼み込んできた。小田氏は、迷わず村と直接取引することを選んだ。 「(村長たちの)困っている状況を見て、ああいう切ない顔で依頼されたら、やっぱり『ノー』とは言えませんよ」 「大儲けしたいという気持ちは、素朴な人たちに触れて変わった。やっと生きがい、幸せを感じている」 若者を「お互いに利益を出さないと」と叱咤したものの、小田氏は最大利益を追求しているわけではない。事業の継続を可能するだけの利益を出しながら、最終的には社会貢献に確実につなげている。この小さいようで非常に大きな違いが、「社会貢献」と声高に言いたがる今どきの「意識の高い若者たち」に通じるだろうか。(ライター:okei) あわせてよみたい:男女が共に涙を流しながら運命の人を探す「涙婚」
途上国支援に走る若者を、大阪の中小企業経営者が一喝 「社会貢献? きれいごと言ってたらあかんのよ」
途上国向けのビジネスは、いま「BOPビジネス」と呼ばれている。Base Of the Economic Pyramid、すなわち経済ピラミッドの底辺にいる貧困層、という意味だ。とはいえ合計すれば40億人、600兆円ともいわれる巨大市場だ。
2015年3月19日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、そんなBOPビジネスの最前線で活躍する日本の中小企業、日本ポリグルの小田兼利会長(74歳)を紹介した。
ビジネス企画だけした学生には「現地へ行け」
大阪市にある日本ポリグルは、従業員35人。規模は小さいが、世界40カ国で水の浄化ビジネスを展開している。アジア最貧国のバングラデシュやアフリカの危険地域にも、納豆のネバネバを原料とした独自の浄化剤を販売し、現地で運営できる浄水施設も作っている。
現地の人を雇い、浄化剤の普及・販売をする「ポリグルレディー」や、浄化した水を運ぶ「ポリグルボーイ」などの雇用も生み出し、永続的なビジネスを成立させている。現地をたびたび訪れるという創業者の小田氏は、こう語る。
今年3月、BOP事業案を競う「40億人のためのビジネスアイデアコンテスト」が開かれた。全国から106組の応募があり、小田氏も審査員として最前列でプレゼンを見守った。
ある若い女性は「アフリカに健康と笑顔を届ける」をテーマに、「富山の置き薬」形式のビジネスモデルをプレゼンした。この女性に、小田氏は鋭く指摘する。
バングラデシュでのビジネスを提案したものの、現地には行っていないという男性には、「少ないお金でいいから、身ひとつで現地から始めた方がいい」と厳しくアドバイスした。小田氏は、コンテスト終了後の感想をこう漏らす。
カネ儲けの失敗が海外進出のきっかけに
日本ポリグル入社3年目の水野花菜子さん(26歳)は、大学院卒業後、ボランティアでなく民間企業として国際協力に関わる仕事をしたいと入社した。
自分の足と目で現地の状況を見なければ分からないという小田氏の方針でタンザニアに同行し、単独での現地調査も任されていた。水野さんはやりがいをこう語る。
小田氏は元々機械工学のエンジニアで、空調メーカーのダイキン工業に勤めた後に独立し、いくつものヒット商品を生み出したアイデアマンだ。水質浄化剤の発想は、阪神淡路大震災で被災した際に思いついた。
6年掛かりで開発した水質浄化剤で「大儲けできる」と思ったが、日本ではほとんど相手にされず、スマトラ沖地震で被災地に寄付したことをきっかけに、海外に販路を見出した。バングラデシュでの販売にあたり同行した現地の実業家からは、こんな誘いも受けた。
「意識の高い若者たち」に違いが通じるか
このやりとりを見ていた村長は、「金持ちの彼らに任せたら、きっと我々には買えない値段になってしまう。儲けは少ないかもしれんが、なんとか私たちと直接取り引きしてくれんだろうか」と頼み込んできた。小田氏は、迷わず村と直接取引することを選んだ。
若者を「お互いに利益を出さないと」と叱咤したものの、小田氏は最大利益を追求しているわけではない。事業の継続を可能するだけの利益を出しながら、最終的には社会貢献に確実につなげている。この小さいようで非常に大きな違いが、「社会貢献」と声高に言いたがる今どきの「意識の高い若者たち」に通じるだろうか。(ライター:okei)
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