離職率50%を12%へ 1000円カットのQBハウスが敢行した「働く人がすべて」の改革 2015年4月5日 キャリコネNEWS ツイート 「10分1000円、髪を切るだけ、シャンプーなし」で知られるQBハウスは、国内外に585店舗を展開し18年連続で成長を続ける国内トップのカット専門店だ。 2015年4月2日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、運営会社キュービーネットの社長・北野泰男氏を紹介した。1995年に大阪外語大学を卒業し日本債券信用金庫に入行したが、その3年後に勤務先が経営破たんし国有化された経験を持つ。 「お客様に選ばれること」だけ考えていた反省 「まさか銀行がつぶれるとは」 職場は不安に包まれ、リストラの嵐が吹き荒れた。周囲の人たちが次々と辞めていく中、北野氏は「働く人を幸せにできなければ、会社は存続する価値がない」と気付く。 「会社は最終的には人。人がどれだけモチベーション高く、仕事に誇りを持てるかです」 そう語る北野氏は、取引先であるキュービーネット創業者の小西国義氏と意気投合し、乞われて2005年に転職した。小西氏は「人をまとめるのがうまい。現場のために何ができるのか考えている」と北野氏を評す。 しかし、入社した北野氏がぶつかったのは、現場スタッフが1年で半数近くも辞めてしまう異常事態だった。急ピッチの出店攻勢で急成長を遂げていたものの、現場のスタッフたちは疲弊しきっていたのだ。 当時を知るベテランは「次々新規店ができて通勤時間が長くなるし、引越しするのもつらかった」と証言する。「現場のことを考えているのか」「こんなに出店してどうすんだ」と不満が渦巻くなか、本部は「本部なめてんのか」という態度。「やってられない」と辞めた人も多かったという。 そんな状況の中、北野氏は2009年に社長就任。「(本部は)お客に選ばれることは考えるが、働く人から選ばれるという視点が欠けていた」と考え、大量出店をやめて様々な改革を打ち出す。 半年間の有給研修で新入社員を戦力化 店舗の評価基準を売り上げから、カット技術や清潔度・接客などに変更し、優秀な店には全国店長会で表彰する。改革で職場の雰囲気はガラッと変わったと、ベテランスタッフは話す。 「すべて良くなった。現場のことを本社がよく見てくれて、本当に気を使ってくれるようになりました」 さらに社員の幸せを考えて行っているのは、新入社員のためのカットスクールだ。1日8時間、半年間かけて訓練し、その間の給料も支払われる。多くは様々な事情で国家資格を取ったもののカットを諦めていた人たちだ。 手荒れで受付をしていた人や、他の美容室でアシスタントをしていたが練習する機会が少なかったという人もいた。出産で実務経験がなく美容師を諦めていた女性は、「お客さまの髪を切れることは自分の中では喜びなので、楽しみです」と語る。 こうした改革によって、人の出入りが激しくなかなか定着しない業界にあって、50%の離職率が最低の時で12%まで下がった。 「1000円カットは安くて技術が低い」は勘違い 北野氏が社長になってから始めた年に1度の社内イベント「QBカットコンテスト」は、全国2000人の頂点を目指して社員たちがカット技術を競う。この大会はパシフィコ横浜で開催され、応援スタッフも含めて大盛況。勝者を惜しみなく祝福する、明るく一体感のあるイベントだった。 村上龍が「どんなに人工知能が発達しても、理容・美容師の仕事はできませんよね」と話を振ると、北野氏は「いくら店を作っても、元気よく働く人がいなければ成り立たないものなので、やっぱり人がすべてですね」と語る。 「1000円カットは安くて技術が低い」というイメージを持たれがちだが、番組に登場したスタッフたちは、常に技術向上を目指す誇り高き技術者集団に見えた。会社に大切にされているという意識を持てるかどうかで、仕事の成果が大きく変わってくる証拠だろう。(ライター:okei) あわせてよみたい:なぜ仕事のできない同僚が自分より先に出世する?
離職率50%を12%へ 1000円カットのQBハウスが敢行した「働く人がすべて」の改革
「10分1000円、髪を切るだけ、シャンプーなし」で知られるQBハウスは、国内外に585店舗を展開し18年連続で成長を続ける国内トップのカット専門店だ。
2015年4月2日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、運営会社キュービーネットの社長・北野泰男氏を紹介した。1995年に大阪外語大学を卒業し日本債券信用金庫に入行したが、その3年後に勤務先が経営破たんし国有化された経験を持つ。
「お客様に選ばれること」だけ考えていた反省
職場は不安に包まれ、リストラの嵐が吹き荒れた。周囲の人たちが次々と辞めていく中、北野氏は「働く人を幸せにできなければ、会社は存続する価値がない」と気付く。
そう語る北野氏は、取引先であるキュービーネット創業者の小西国義氏と意気投合し、乞われて2005年に転職した。小西氏は「人をまとめるのがうまい。現場のために何ができるのか考えている」と北野氏を評す。
しかし、入社した北野氏がぶつかったのは、現場スタッフが1年で半数近くも辞めてしまう異常事態だった。急ピッチの出店攻勢で急成長を遂げていたものの、現場のスタッフたちは疲弊しきっていたのだ。
当時を知るベテランは「次々新規店ができて通勤時間が長くなるし、引越しするのもつらかった」と証言する。「現場のことを考えているのか」「こんなに出店してどうすんだ」と不満が渦巻くなか、本部は「本部なめてんのか」という態度。「やってられない」と辞めた人も多かったという。
そんな状況の中、北野氏は2009年に社長就任。「(本部は)お客に選ばれることは考えるが、働く人から選ばれるという視点が欠けていた」と考え、大量出店をやめて様々な改革を打ち出す。
半年間の有給研修で新入社員を戦力化
店舗の評価基準を売り上げから、カット技術や清潔度・接客などに変更し、優秀な店には全国店長会で表彰する。改革で職場の雰囲気はガラッと変わったと、ベテランスタッフは話す。
さらに社員の幸せを考えて行っているのは、新入社員のためのカットスクールだ。1日8時間、半年間かけて訓練し、その間の給料も支払われる。多くは様々な事情で国家資格を取ったもののカットを諦めていた人たちだ。
手荒れで受付をしていた人や、他の美容室でアシスタントをしていたが練習する機会が少なかったという人もいた。出産で実務経験がなく美容師を諦めていた女性は、「お客さまの髪を切れることは自分の中では喜びなので、楽しみです」と語る。
こうした改革によって、人の出入りが激しくなかなか定着しない業界にあって、50%の離職率が最低の時で12%まで下がった。
「1000円カットは安くて技術が低い」は勘違い
北野氏が社長になってから始めた年に1度の社内イベント「QBカットコンテスト」は、全国2000人の頂点を目指して社員たちがカット技術を競う。この大会はパシフィコ横浜で開催され、応援スタッフも含めて大盛況。勝者を惜しみなく祝福する、明るく一体感のあるイベントだった。
村上龍が「どんなに人工知能が発達しても、理容・美容師の仕事はできませんよね」と話を振ると、北野氏は「いくら店を作っても、元気よく働く人がいなければ成り立たないものなので、やっぱり人がすべてですね」と語る。
「1000円カットは安くて技術が低い」というイメージを持たれがちだが、番組に登場したスタッフたちは、常に技術向上を目指す誇り高き技術者集団に見えた。会社に大切にされているという意識を持てるかどうかで、仕事の成果が大きく変わってくる証拠だろう。(ライター:okei)
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