• 働く人にとって「一貫したキャリア」は不可欠なのか? ちきりん氏の「マジ無用」ブログに賛否

    おもしろそうなことにトライ

    自分の専門性を身につけて、一貫したキャリアを歩むべし――。ビジネスパーソンにとって常識とされる考え方だが、ブロガーのちきりん氏がこれに疑問を投げかけている。

    4月20日付のエントリー「キャリアの一貫性なんてマジ無用」は、ある30代半ばの女性の話を紹介。大学のデザイン科を卒業後、3社でデザインや広報の仕事をした末に、東南アジアに渡ってタウン誌の編集をしていたところ、バンコクの日系金型メーカーの求人を知って総務・経理として採用されたという。

    この女性は「今の仕事はおもしろい。やりがいもある。待遇もいい。でも、私もいつかは自分で会社を興したいし、もっと成功したい」と語ったといい、ちきりん氏も「一貫したキャリア形成が大事」なんて「まったくもって嘘っぱちだよねー」と確信したという内容だ。

    「その時点で、おもしろそうなことをやってみればいい」

    終身雇用の意識は徐々に薄れてきたとはいえ、「この道ひと筋」が好まれるのが日本社会。その一方で事業環境は大きく変化し、従来の専門性が通用しなくなる場面も増えている。

    ちきりん氏自身も大学卒業後に金融機関に就職し、転職してマーケティング業や文筆業とキャリアを変えてきた。諦めたキャリアもあったというが、「それでも全体としては、何の問題もありません」と明かす。

    人材業界の専門家は「無用なインターバルはけっして作らず」「転職回数は 3回まで」「35 歳を超えたら転職はできない」と言うが、ちきりん氏の考えは逆。

    キャリアが一貫している必要はなく、一度や二度、仕事から離れる時期があっても問題ない。就いた仕事の条件が悪くても、おもしろいと思うなら、やってみればいい。転職して、配属された部署が約束の部署と違うことだってある。価値が出せる人は常に求められており、転職限界年齢なんて存在しない、ということだ。

    「『一貫したキャリアを積むべし』などという都市伝説に騙されないようにしましょう」
    「時代も変わるし、自分も変わります。やりたいこと、やれることも変わります。その時点その時点で、おもしろそうなことをやってみればいいんです」

    医師を例に「積み重ねこそが重要」と主張する人も

    ネットでは、ちきりん氏の考えに賛否が分かれている。反対派のひとりは、キャリア形成においては「積み重ねこそが重要」とし、例として「医師2年と10年、どちらに診てもらう?」と問いかけている。

    ブログ「人間到る処青山あり」の筆者は、適応力が高くない人にとって無理な変化はストレスフルと指摘。キャリアによって一貫性が大事な場面もあるので、「誰でも彼でもキャリアの一貫性が大事というのは言い過ぎだけれど、『マジ無用』も、やや言い過ぎに感じた」と明かしている。

    一方、賛成派の女子大学生は「社会人になるの、前より楽しみになった」とツイート。社会経験のない学生からすれば、徹底した一貫性が要求される社会は息苦しく、路線変更が許される社会の方が飛び込みやすい、と感じたことだろう。

    転職回数が多いこと自体は大きな問題ではなく、働きながらでも専門性は身につくのだから、会社も個人も一貫性にこだわって排除する必要はないという人もいた。

    「同意。キャリアの一貫性って、スペシャリスト志望にこそ必要だと思うけれど、全員が必要なわけじゃない」

    異業種経験を積むことによる「非一貫性キャリア」の掛け合わせによって、「市場優位なキャリア」を形成し「有用な人間」になれると主張する人もいた。

    海外アジア特有の事情を指摘する人も

    ブログで紹介された女性と同じような海外経験をした人も、「おもしろいと思うなら、やってみればいい」というちきりん氏に賛意を表す。

    「『こんな給与で働いていていいのか?』っていうのは自分も中国で働いている時思ったなぁ。でも全然関係なかった。日本の給与水準に惑わされることなく、本当にあの時あのタイミングで北京で働いていてよかったと思う」
    「そう言えば今の仕事はオーストラリアで休暇中に出会った友人の紹介だった。人生なんて分からんもんですよ」

    ただし、ちきりん氏が紹介したエピソードの中には、そのまま日本で通用しない話が含まれていると指摘する人も。シンガポールで通訳や翻訳に従事する@yanonanone氏は、

    「海外の日本人労働市場は需給バランスが日本と違い、結構ポテンシャル採用。→キャリアチェンジが楽。でも日本では未経験では採用されにくいのがベース」

    とし、大胆なキャリアチェンジを比較的しやすいバンコクの特殊事情があると示唆している。

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