• 世界中から希少植物を探し出す「プラントハンター」の仕事 緑化こそ「集客装置」になる

    「そら植物園」のウェブサイト

    花や植木の売り上げが1999年をピークに下降を続ける中、独特のやり方で植物の魅力を引き出して集客につなげる動きがある。

    2015年5月19日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、世界を渡り歩き珍しい植物を採取して日本に運び込む「プラントハンター」の仕事を密着取材していた。

    今年3月、東京・日本橋高島屋で「植物とファッションの融合」をテーマにしたイベントが行われた。植物園のようなフロアづくりの指揮をとったのは、西畠清純さん(34歳)だ。

    季節はずれのプールに2万人集客の快挙

    西畠さんは、兵庫県川西市で明治元年から続く花と植木の卸問屋「花宇(はなう)」の5代目。卸の仕事だけでなく世界中を旅して、時には命がけで入手した希少な植物を集めて日本各地でイベントのプロデュースを行っている。

    2年前にはハウステンボスで、夏以外は使用しないプールを珍しい植物で埋め尽くし、1か月で2万人という大きな集客につなげた。西畠さんはこう語る。

    「今までは建物を造るついでに植物を植えていたが、今は緑化こそ強いメッセージを持っていたり、集客装置になることを色んな企業が気付き始めている」

    会社の温室には常時3000種類の植物がストックされており、その7割ほどは海外で見つけて来たもの。西畠さんがプロデュースを得意とするのは、主にアフリカや南米、砂漠などの温帯の植物だ。

    見慣れない変わった形の植物が多く、色のない砂漠に咲くという鮮やかなピンクの花をいとおしげに見せてくれたあと、西畠さんは仕事への覚悟をこう明かした。

    「僕が業界に入った頃は厳しかった。時代が良くなるのを待つのではなく、自分で切り込んでいかなきゃと思って、一生懸命やっています」

    取って置きの「オリーブの巨木」に来場者も感動

    西畠さんがプロデュースする植物は、集客の起爆剤として人気を博す。高島屋・宣伝部の辻さんも「単に植物を見せるのではなく、プラントハンターが世界から集めた貴重な珍種や変わった形のものをきちんとお客様に見せたい」と差別化のポイントを語った。

    神戸市の商業施設「神戸国際会館」は、周辺に競合施設ができた影響で来場客数が年々減少。オープン当初は目玉だった屋上庭園で過ごす客はほとんどいない。

    庭園のテコ入れを依頼された西畠さんは、オリーブの巨木をシンボルツリーにしようとイタリアへ向かった。イメージ通りの木が見つかったものの、輸送期間の問題が発生。諦めざるを得なかった。西畠さんは、

    「切り替えないとしゃあない。お客さんの想像以上のものを最終的につくるのがミッションで、自分の好きな木を入れるためではないから」

    と話し、これまで手放さなかった特別な木を出すことに決めた。その木とは、8年前にスペインで見つけた樹齢500年のオリーブの巨木。今でこそ年間200トン輸入しているが、その第一歩となった木だ。

    4月25日のお披露目には、プラントハンターが手掛けた庭をひと目見ようと、オープン前から長蛇の列が。訪れた客たちからは「オリーブの木を見たときは感動した」「散策する庭になった」と声があがり、大好評だった。

    「命あるものの強さ、エネルギー」が人を引き付ける

    西畠さんは縮れ毛を頭の後ろで束ねており、少しレゲエ歌手にも似た風貌。人懐っこい笑顔が印象的だ。自由人のようなイメージだが、話し出すと植物への強い愛着と、しっかりした仕事への意識を感じる。

    イタリア買付の折にひとめ惚れし、「絶対に売れないけど、持っとかなアカンなってやつ」と即決した巨大なアロエのような植物、アガベ・フェロックス。シチリアから届いたものを嬉しそうに眺め、「美しいね! 枯れた葉っぱすら美しいわ」と満面の笑みを浮かべた。

    「命あるものの強さ、エネルギーがすごくある。いろんな人に見てもらえる機会があったらええなあ」と話す西畠さんは、家業が天職というか、自分の好きな方向へ商売の道筋を立てられた幸せな人だと感じた。(ライター:okei)

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