2025年「無業者増・所得減」は避けられるか? リクルートワークス研究所が「働き方の再発明」を呼びかけ 2015年6月12日 キャリコネNEWS ツイート 働いている人なら誰しも「10年後の自分はどのように働いているのか」と考えたことがあるだろう。事業環境や就業構造の変化は目まぐるしく、これに合わせて企業も就業者も意識の変革を迫られている。 そうした中、リクルートワークス研究所が2015年6月に発表したレポートが「明解」「非常に示唆的」と話題になっている。内容は10年先の雇用パラダイムに関する未来予測、タイトルは「2025年――働くを再発明する時代がやってくる」だ。 無業者数「500万人増」、所得「56万円減」の可能性 同研究所は、2005年と2011年にも未来予測を発表。「新卒・男性・正社員」中心の雇用パラダイムが終わりを告げ、2020年に向けて「性別・雇用形態・勤務先・年齢にかかわらずすべての人が主役」という世界に移ると予想した。今回は、その第3弾となる。 これからの日本では、高齢化の加速と生産年齢人口の減少が起きると予測されている。2015年現在の高齢者人口は3395万人(25.1%)だが、厚労省の研究機関の調査では2025年には3658万人(30.3%)となり、3分の1近い人が65歳以上となる予測だ。 その一方で、雇用も減る可能性がある。雑誌「AERA」は2015年6月15日号で「AI(人工知能)でなくなる仕事」という特集を組み、10~20年後になくなる「50の仕事」が挙げている。機械によって人間の労働力が代替される時代は、そこまで来ているのかもしれない。 今回の「2025年」レポートでは、こうした環境変化を考慮に入れ、同研究所の独自調査と総務省調査をもとに、2025年の労働市場がシミュレートされている。「悲観的なシナリオ」では、就業者や1人当たり所得が大幅に減る形となっている。 ・就業者数:計5717万人(2015年比:557万人減) ・無業者数:計5025万人(同:500万人増) ・1人当たり所得:299.1万円(同:56.3万円減) 例えば生産工程・輸送・機械運転従事者は、05年には1655万人いたが、15年には1405万人、25年には1125万人にまで減る試算がされている。さらに解雇規制が緩和されると失職リスクは高まり、企業は雇用促進よりも既存従業員の早期離職を勧める可能性が高い。 「従業員の中長期的なキャリア形成」を企業に要請 さらに高齢化が進むことで、家庭に要介護者を抱える人が増える。そのかたわらで家事・育児を行えば、労働時間にも限界が生まれる。制約を抱える労働者に対し、企業が処遇・条件を下げれば、あえて「働かない」という選択をする人も増える可能性がある。 こうした問題がうまく解決されず、労働市場への新規参入確率が半分、離職率が2倍になってしまうと、上記の「悲観シナリオ」が現実になるかもしれない。 では、この悲観的な未来を変えるためには、どうすれば良いのか。同レポートでは悲観シナリオを回避するための「3つの針路」が示されている。 ・針路1:長く「働き続けられる」社会へ ・針路2:「制約があっても」働くことができる社会へ ・針路3:辞めても「次の仕事に就ける」社会へ 老若男女が「長く働き続けられる」社会になれば、高齢になっても生計を維持し、社会参加の機会を得ることができる。しかし現状では、高齢者の就労可能性は限定され、出産・育児期の女性の就労率も低いままだ。 これを改善するには、テクノロジーの利用や業務フローの見直しなどにより「企業の収益と従業員の生活、両者のサステナビリティを追求する」ことが必要だと、レポートは提案している。さらに「制約」があっても働き続けられるよう、多様な人材を活用できるマネジメントの変革が求められるという。 「企業」「個人」「社会システム」の創造性がカギに 多様な人材を活用できるマネジメントが実現できれば、雇用の流動性が高まるかもしれない。レポートは事業環境が変化する中で、企業にこんな要請を出している。 「短期的利益を追求する経営と、従業員の中長期的なキャリア形成を両立する方策を、企業は自ら生み出さなければならない」 こうした方策を尽くし、労働市場への参入確率を2倍にして初めて、就業者は2015年に比べて微増(1.4%)の6389万人に増える。無業者は172万人減り、1人当たり所得は6.2万円増える(361.6万円)という「楽観シナリオ」を描くことができる。 「2025年に向けては、ひとりひとりの持ち味をいかした働き方、働く場を、企業・個人・社会システムが一体となって創り出す(再発明)する時代になる」 「私たちが自ら答えをみつけだし、ひとりひとりがいきいきと働く社会を実現できれば、未来は明るい。その鍵を握るのは、企業・個人・社会システムそれぞれの創造性だ」 レポートでは再三、現状日本の就労環境について「個人、企業、社会システムともに限界ギリギリの状態」だと指摘されている。これがこのまま瓦解するか、新たなシステムが創造されるかは、この10年が分水嶺なのかもしれない。 あわせてよみたい:「キモくて金のないおっさん」が増加中? 彼らの居場所とは
2025年「無業者増・所得減」は避けられるか? リクルートワークス研究所が「働き方の再発明」を呼びかけ
働いている人なら誰しも「10年後の自分はどのように働いているのか」と考えたことがあるだろう。事業環境や就業構造の変化は目まぐるしく、これに合わせて企業も就業者も意識の変革を迫られている。
そうした中、リクルートワークス研究所が2015年6月に発表したレポートが「明解」「非常に示唆的」と話題になっている。内容は10年先の雇用パラダイムに関する未来予測、タイトルは「2025年――働くを再発明する時代がやってくる」だ。
無業者数「500万人増」、所得「56万円減」の可能性
同研究所は、2005年と2011年にも未来予測を発表。「新卒・男性・正社員」中心の雇用パラダイムが終わりを告げ、2020年に向けて「性別・雇用形態・勤務先・年齢にかかわらずすべての人が主役」という世界に移ると予想した。今回は、その第3弾となる。
これからの日本では、高齢化の加速と生産年齢人口の減少が起きると予測されている。2015年現在の高齢者人口は3395万人(25.1%)だが、厚労省の研究機関の調査では2025年には3658万人(30.3%)となり、3分の1近い人が65歳以上となる予測だ。
その一方で、雇用も減る可能性がある。雑誌「AERA」は2015年6月15日号で「AI(人工知能)でなくなる仕事」という特集を組み、10~20年後になくなる「50の仕事」が挙げている。機械によって人間の労働力が代替される時代は、そこまで来ているのかもしれない。
今回の「2025年」レポートでは、こうした環境変化を考慮に入れ、同研究所の独自調査と総務省調査をもとに、2025年の労働市場がシミュレートされている。「悲観的なシナリオ」では、就業者や1人当たり所得が大幅に減る形となっている。
・就業者数:計5717万人(2015年比:557万人減)
・無業者数:計5025万人(同:500万人増)
・1人当たり所得:299.1万円(同:56.3万円減)
例えば生産工程・輸送・機械運転従事者は、05年には1655万人いたが、15年には1405万人、25年には1125万人にまで減る試算がされている。さらに解雇規制が緩和されると失職リスクは高まり、企業は雇用促進よりも既存従業員の早期離職を勧める可能性が高い。
「従業員の中長期的なキャリア形成」を企業に要請
さらに高齢化が進むことで、家庭に要介護者を抱える人が増える。そのかたわらで家事・育児を行えば、労働時間にも限界が生まれる。制約を抱える労働者に対し、企業が処遇・条件を下げれば、あえて「働かない」という選択をする人も増える可能性がある。
こうした問題がうまく解決されず、労働市場への新規参入確率が半分、離職率が2倍になってしまうと、上記の「悲観シナリオ」が現実になるかもしれない。
では、この悲観的な未来を変えるためには、どうすれば良いのか。同レポートでは悲観シナリオを回避するための「3つの針路」が示されている。
・針路1:長く「働き続けられる」社会へ
・針路2:「制約があっても」働くことができる社会へ
・針路3:辞めても「次の仕事に就ける」社会へ
老若男女が「長く働き続けられる」社会になれば、高齢になっても生計を維持し、社会参加の機会を得ることができる。しかし現状では、高齢者の就労可能性は限定され、出産・育児期の女性の就労率も低いままだ。
これを改善するには、テクノロジーの利用や業務フローの見直しなどにより「企業の収益と従業員の生活、両者のサステナビリティを追求する」ことが必要だと、レポートは提案している。さらに「制約」があっても働き続けられるよう、多様な人材を活用できるマネジメントの変革が求められるという。
「企業」「個人」「社会システム」の創造性がカギに
多様な人材を活用できるマネジメントが実現できれば、雇用の流動性が高まるかもしれない。レポートは事業環境が変化する中で、企業にこんな要請を出している。
こうした方策を尽くし、労働市場への参入確率を2倍にして初めて、就業者は2015年に比べて微増(1.4%)の6389万人に増える。無業者は172万人減り、1人当たり所得は6.2万円増える(361.6万円)という「楽観シナリオ」を描くことができる。
レポートでは再三、現状日本の就労環境について「個人、企業、社会システムともに限界ギリギリの状態」だと指摘されている。これがこのまま瓦解するか、新たなシステムが創造されるかは、この10年が分水嶺なのかもしれない。
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