• 孤独な声優の姿も… 連休中の24時間営業レンタルビデオ店に、現代人のオアシスを見た

    もうひと月ほど前の話になるが、みなさんは今年のゴールデンウィークはどう過ごしただろうか。あれだけの連休ともなると、家族で遠くに旅行に出かけたり、実家に帰省してのんびり過ごしたりした人も多いはず。

    でも、みんながみんなそんな予定を入れるわけでもない。6月12日(金)に放送された「ドキュメント72時間」では、「大型連休・レンタルビデオ店で描く夢」と題して3日間、都心の住宅街にあるレンタルビデオ店に密着取材を行った。(文:松本ミゾレ)

    親子連れやカップルの姿もあるが

    ここなら寂しい思いをせずに済む

    24時間営業のこの店では昼夜問わず、絶えず様々なお客さんがやってくる。大型連休中であっても、売り上げは上々だったようだ。

    番組を観ていてすぐに気が付くのは、連休中だけあって親子連れや若いカップルがひっきりなしに来店している点。帰省せずに気ままに見たいDVDを選ぶカップルや、子どもと一緒にアニメを選ぶパパの姿を見ていると、なんだかほほえましく感じられる。

    一方で、見ているだけで胸が締め付けられそうな気持ちにさせられるお客さんも少なくない。見たところ50代といったところか。1人洋画コーナーを物色している男性に取材カメラが近づく。

    連休の間も特にこれという用事もなく、DVDを借りにきたというこの男性は、奥さんと離婚して以降、度々レンタルビデオ店を訪れて、暇つぶしになる作品を借りて帰っているのだという。その背中が、物悲しく見える。

    また、別の日にお客として訪れた男性は、声優をやっているという。やはり50代に見えるこの男性はカメラに向かって手にして、DVDの吹き替えをしている有名な声優について丁寧な説明をしてくれた。なかなか声優一本で食べていくことは難しいようで、未だに奥さんも彼女も作らないと話す。

    話し相手を求めてやってくるお年寄りもいた

    フィリピンに家を建て、そこに妻子を住まわせているという男性は、洋画ドラマコーナーで人気作のDVDを手にしていた。

    彼は取材スタッフに対して、携帯電話に保存した子どもの画像を見せる。家族とはなかなか会う機会がないようだが、作業着を着ているということは、この連休中も働きづめだったのかもしれない。

    僕は以前、24時間営業のレンタルビデオ店でアルバイトをしていたことがある。勤務して初めて分かることも多かった。

    2時間おきに来店しては、アダルトコーナーの陳列をチェックする人。レンタル解禁日になると、夜明け前からやってきて10時のレンタルスタートまで陳列棚の前で仁王立ちして待つ人。身寄りがなくて、話し相手を求めてやってくるお年寄り…。

    ちょっと癖のある人も多かったけど、今にして思えば、きっとみんな寂しさを抱えていたのだろう。静かにテレビを眺めながら、僕はそんなことを考えていた。

    店内で吟味する人の表情に見えた安らぎ

    レンタルビデオ店は、いうまでもなくVHSやDVDなどを借りることが目的の施設。ただ、番組を観ていくうちに、どうにもこの店が、ある種の孤独さを滲ませる人々にとって、心の拠り所になっているのではないかと思えてくる。

    取材に対し、家に帰っても迎えてくれる人がいないと話した一部のお客さん。彼らはレンタルビデオ店に通うことで、孤独な時間を潰すための相棒を選ぶ。そのさなか。明るい店内で吟味に吟味を重ねる表情は、なんだかとても安堵しているというか、充足しているように見えたのだ。

    もしかすると、現代社会の軋轢に揉まれて疲弊した人々にとって、ここはオアシスのような施設になりつつあるのかもしれない。

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