• 「残業しない手当」で最大月5万円! 「とあるシステム会社」の残業削減策が話題に

    時間外労働の削減に取り組む企業が増える中、長時間労働が常態化しているIT業界にあって「月の残業時間を一桁にした」という企業の話がネット上で話題になっている。

    6月24日、はてなブログに「あるシステム屋さんが平均残業時間一桁を実現した方法」という投稿が寄せられた。SEとして働く20代後半の男性が、地方の中小システム会社の取り組みを紹介している。

    この会社では以前は月残業60時間が当たり前で、100時間オーバーも珍しくない状態だった。しかしある日、社長が「家族揃って晩御飯を食べられる会社にしよう!」という紙を張り出し、改善に乗り出した。

    「残業やめないと周囲の視線が痛い」という風土に

    残業削減方法が話題に。

    とはいえ残業を減らすと言っても、人事や総務が上から命令しただけでは、現場からは「俺たちゃ会社のためにやってるんだ」と反発されてしまう。そこでこの会社では、新しく「残業しない人」に手当を払うというルールを設けた。

    残業時間が20時間未満だった人には、「過去連続で20時間未満だった月数×5000円」を最大2万円まで支給。さらに部内の最長残業時間が30時間未満を達成すると1万円、部内の平均残業時間が10時間未満であれば2万円が加算される。最大で月5万円の計算だ。これが半年に一回ボーナスの度にまとめて支給される。

    こうした施策を行うと、残業時間を過少申告する従業員が出てくる懸念もある。そのため「勤務時間の不正申告は、過多・過少問わず、本人及びその管理者が罰則の対象となる」というルールも設けた。

    この一連の施策が効果絶大だったようだ。個人の残業時間だけではなく、チーム全体の残業時間も考慮されるため、「残業やめないと周囲の視線が痛い」という風土になり、「7時にもなったら、みんな家に帰って誰もいない」という状態になった。

    さらに、誰か一人に負荷が集中しないよう、「作業の標準化を進める」という職場全体の生産性向上につながる効果もあったという。

    「残業は悪であるという考え方は広まって欲しい」

    ダラダラ残業せず効率的に働く人が有利な制度、という発想自体は以前からあったかもしれない。しかしいざとなれば、経営者も管理職も長く熱心に働く人に報いたいという発想を捨てきれず、実現したという話もほとんどなかった。

    しかしこの会社は「家族揃って晩御飯」というビジョンに向かって、妥協のないルールを設計することができたようだ。ネットでも「モラルに訴えても限界あるから、望ましい方向にインセンティブ与えるのが一番いい方法だよね」と賞賛する声が相次いだ。

    「部に対してもルールを作ったのがいいな。同じ部内に残業しそうな人がいれば、手伝うようになる。自分だけ早く帰っても多少のメリットはあるけど、部内全員が早く帰れば全員が報酬もらえる」

    裁量労働制のため「いつもだらだらと働いている」と明かす人も、「早く帰らないと報酬が減る!ってなったら意識変わるだろうなあ」と書いている。「残業は悪であるという考え方は広まって欲しい」という声もあった。

    仕事の「標準化」のために社長も2年で交代

    一方で、「仕事の標準化って難しくないか?」という声もあった。これについては、同じ筆者が6月27日に更新したブログで説明を追加している。

    この会社では、仕事の属人化を防ぐために、「3年ルール」という定期人事異動を採用。平社員から社長まで同じ所属は3年までと決まっている。役職も2年で変わるといい、「社長なんて誰がやっても出来るようにせないかん」という方針だという。

    また、IT企業ではプロジェクトごとに派遣社員を利用するのが珍しくないが、この会社では派遣は一切なし。理由は「長期雇用が約束されていない従業員は、業務の標準化へのモチベーションが低い」からだとしている。

    他にもこの会社では、毎日の朝会で事業部ごとに全員の業務内容を共有したり、「誰が誰に対してどんな指示を出したのか」が可視化されるような仕組みを設けている。上から一方的に「残業を減らせ!」といっても中々変わらない。やはり組織全体のマネジメントが鍵になるということだろう。

    あわせて読みたい:厚切りジェイソンが日本の残業文化を批判

     
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