「出戻り社員」に浴びせられた厳しい質問 「なぜあなたは、私たちを捨てて辞めたのですか?」 2015年7月14日 キャリコネNEWS ツイート 以前働いていた企業に再び雇用される「出戻り社員」が、いま増えているという。人材サービスの「エン・ジャパン」の調べによると、「出戻り社員を雇用したことがある」と答えた企業は72%にものぼる。 7月10日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、出戻り社員を積極的に受け入れている企業を取材。ソフトウェア開発の「ワークスアプリケーションズ」(東京・港区)は、実績を残した社員に「カム・バックパス認定書」を発行し、退社後3年以内の再入社を認めている。 出戻り実績30人。CEOは「めちゃくちゃいいことじゃん!」 同社人事担当の小島豪洋さんは、出戻りに対する考えを次のように説明した。 「人が辞めるのに、良いも悪いもない。優秀な人材が戻りたいなら、全員戻せばいい」 牧野正幸CEOは、再雇用されることになった池内良太さん(42)が「申し訳ございません」とあいさつに来ると、「めちゃくちゃいいことじゃん! 戻ってきてくれてありがとう」と笑顔を見せた。 池内さんは2年前、他のベンチャー企業に転職したが、「自分のやりたい仕事、社会にどうやって貢献できるか? あとは社風を考えると、この会社が一番いいと判断し戻ってきた」と語る。 戻ってきてすぐ、入社7年目の社員に指導ができるほど優秀なソフトウェア開発者である池内さん。同社には「カム・バックパス」で戻ってきた社員は30人にものぼる。 金融機関として出戻りをいち早く制度化したのが、地方銀行の最大手「横浜銀行」だ。営業部の大宮由也さん(31)は2年前、「畑違いの仕事にチャレンジしてみたかった」と出版業界に転職。しかしわずか1年半で戻ってきた。その大宮さんは理由を次のように語る。 「銀行員としてもう一度戦ってみたい。出てみて銀行の仕事が好きだと改めて思ったのもありました」 横浜銀行は「待遇は退職時のまま」維持 配属こそ以前と違う支店だが、待遇は退職時のまま。周囲からは「外を知らない我々は、辞めてまた戻ってきたいと思える会社なんだと思いました」と自社を見直す言葉もあった。 人財部の堀田室長は、「新入社員は1から教育する形になるが、(出戻り社員は)大幅に育成の時間や労力が削減される」と銀行にとってのメリットを説明する。 企業側のメリットは大きいが、働き続けている社員からの反発を招く恐れもある。スイーツ店などを全国に110店舗以上展開している大阪・守口市の「白ハト食品工業」では、元部下との面接に通った人だけが再雇用されるしくみだ。 営業部長だった7年前に退社した玉城秀幸さん(47)は、退職の理由について「自分で何でもできるというおごりや勘違いがあった」と語る。独立したい思いもあり、逃げ出すように辞めたという。 しかしワインバーの経営を始めるも客が入らず、家族の反対もあり店の継続は断念した。困って再び前職の門を叩いたが、そこで待っていたのは元部下との面接だった。人財開発創造本部の藤田毅本部長の説明によると、3つの質問に対する答えが、部下が納得するものであれば採用される。 「なぜあなたは、私たちを捨てて辞めたのですか?」 「あなたは辞めてから、どういう風に変わりましたか?」 「あなたが戻ってくることで、私たちにどんなメリットがありますか?」 やっぱり優秀で人柄もいい人に限られるのか 玉城さんが率直に謝罪し自分の思いを伝えると、部下たちも納得。現在はエリアマネージャーとして活躍している。飲食店経営の経験が、店舗スタッフの指導に役立っているという。 藤田本部長は玉城さんについて、「たくさんの部下から、玉城さんと一緒に仕事をしたいという声が出た。彼もいま非常にやりがいをもって楽しくやっていると思う」と話した。 仕事をしていれば誰でも一度くらいは、自分を試したい、嫌な環境から逃げたい、など様々な理由で「ここではない別のどこか」を考えることがあるだろう。こうした動きによって「試しに外の風に当たる」という可能性が広がったようにも思う。 しかしやはり、一度辞めても戻れる人というのは「優秀な」社員であり、「人柄もいい」という人に限られるのではないだろうか。(ライター:okei) あわせてよみたい:gloopsがオフィスの3フロアを打ち抜き「内階段」を設置した理由
「出戻り社員」に浴びせられた厳しい質問 「なぜあなたは、私たちを捨てて辞めたのですか?」
以前働いていた企業に再び雇用される「出戻り社員」が、いま増えているという。人材サービスの「エン・ジャパン」の調べによると、「出戻り社員を雇用したことがある」と答えた企業は72%にものぼる。
7月10日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、出戻り社員を積極的に受け入れている企業を取材。ソフトウェア開発の「ワークスアプリケーションズ」(東京・港区)は、実績を残した社員に「カム・バックパス認定書」を発行し、退社後3年以内の再入社を認めている。
出戻り実績30人。CEOは「めちゃくちゃいいことじゃん!」
同社人事担当の小島豪洋さんは、出戻りに対する考えを次のように説明した。
牧野正幸CEOは、再雇用されることになった池内良太さん(42)が「申し訳ございません」とあいさつに来ると、「めちゃくちゃいいことじゃん! 戻ってきてくれてありがとう」と笑顔を見せた。
池内さんは2年前、他のベンチャー企業に転職したが、「自分のやりたい仕事、社会にどうやって貢献できるか? あとは社風を考えると、この会社が一番いいと判断し戻ってきた」と語る。
戻ってきてすぐ、入社7年目の社員に指導ができるほど優秀なソフトウェア開発者である池内さん。同社には「カム・バックパス」で戻ってきた社員は30人にものぼる。
金融機関として出戻りをいち早く制度化したのが、地方銀行の最大手「横浜銀行」だ。営業部の大宮由也さん(31)は2年前、「畑違いの仕事にチャレンジしてみたかった」と出版業界に転職。しかしわずか1年半で戻ってきた。その大宮さんは理由を次のように語る。
横浜銀行は「待遇は退職時のまま」維持
配属こそ以前と違う支店だが、待遇は退職時のまま。周囲からは「外を知らない我々は、辞めてまた戻ってきたいと思える会社なんだと思いました」と自社を見直す言葉もあった。
人財部の堀田室長は、「新入社員は1から教育する形になるが、(出戻り社員は)大幅に育成の時間や労力が削減される」と銀行にとってのメリットを説明する。
企業側のメリットは大きいが、働き続けている社員からの反発を招く恐れもある。スイーツ店などを全国に110店舗以上展開している大阪・守口市の「白ハト食品工業」では、元部下との面接に通った人だけが再雇用されるしくみだ。
営業部長だった7年前に退社した玉城秀幸さん(47)は、退職の理由について「自分で何でもできるというおごりや勘違いがあった」と語る。独立したい思いもあり、逃げ出すように辞めたという。
しかしワインバーの経営を始めるも客が入らず、家族の反対もあり店の継続は断念した。困って再び前職の門を叩いたが、そこで待っていたのは元部下との面接だった。人財開発創造本部の藤田毅本部長の説明によると、3つの質問に対する答えが、部下が納得するものであれば採用される。
やっぱり優秀で人柄もいい人に限られるのか
玉城さんが率直に謝罪し自分の思いを伝えると、部下たちも納得。現在はエリアマネージャーとして活躍している。飲食店経営の経験が、店舗スタッフの指導に役立っているという。
藤田本部長は玉城さんについて、「たくさんの部下から、玉城さんと一緒に仕事をしたいという声が出た。彼もいま非常にやりがいをもって楽しくやっていると思う」と話した。
仕事をしていれば誰でも一度くらいは、自分を試したい、嫌な環境から逃げたい、など様々な理由で「ここではない別のどこか」を考えることがあるだろう。こうした動きによって「試しに外の風に当たる」という可能性が広がったようにも思う。
しかしやはり、一度辞めても戻れる人というのは「優秀な」社員であり、「人柄もいい」という人に限られるのではないだろうか。(ライター:okei)
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