引退したホストが「IT企業の正社員」に就職! 人材教育で若者の将来をサポートするホストクラブに驚き 2016年7月25日 キャリコネNEWS ツイート 近ごろ貧困にあえぐ若者が増え、「風俗業」が実質的なセーフティーネットになっているという話を耳にします。学費や生活費を自分で賄う学生たちにとって、短時間で高額の報酬がかなうホステスやホストなどが人気の仕事になっているそうです。 風俗といえば、高収入のウラで厳しい労働環境にあるというイメージが強いもの。ところが7月21日放送の「クローズアップ現代+」(NHK総合)で紹介されたホストクラブは、若者に希望を与える驚きサポートを行っていました。(文:篠原みつき) 「どんな会社に行っても通用する人材になって欲しい」 大阪・ミナミにあるホストクラブ「宝地蔵」。経営者の渡邉清隆さんは、ホストたちの将来を見据えて人材教育を積極的に行っています。 「ホストを卒業した後でも、どんな会社に行っても通用する人材になって欲しい」 まるで職業訓練校の校長先生のような言葉に驚きます。店では社会常識を学ぶ勉強会を開いたり、店の費用負担でビジネス研修に参加させたりと、その内容は真摯かつマジメ。就業斡旋を行うこともあるそうです。 元ホストのWさん(28歳)は、この店の支援でIT企業に正社員として就職しました。ホストを引退したWさんを、店は2年間事務員として雇用。その間にウェブ製作の技術を身に着けさせました。 ホストだったころは、先の見えない不安にさいなまれていたWさん。いま初めて将来の希望が描けていると言います。 「30歳、40歳になったらこうなりたいっていうのがはっきりしてるから、今は不安なくやりがいを感じています。いまの自分があるのは、そういうバックアップがあったから」 今どきの若者事情を特集した番組では、なかなか聞けないポジティブなセリフです。全員がうまくいくかどうかは分かりませんが、ホストを使い捨てにせず、手に職をつけて送り出したこの店を讃えたい思いがします。 スキルのつかない「個人請負」は、いずれ使い捨てになる このホストクラブは、要は将来へのサポートをウリに人材確保しているのでしょう。収益性の高い水商売ですから、これくらいのことをしても元が取れるのかもしれませんが、それにしても手厚い援助で心温まるものでした。 ただし番組全体としては、重苦しい雰囲気が漂っていました。「”消費される”若者たち ~格差社会の新たな現実~」と題して、非正規雇用よりもさらに労働条件が厳しい「個人請負」で働く若者が、長時間労働と低収入で苦しむ姿を伝えていたからです。 いま「個人請負」という働き方は、フリーのIT技術者や経営コンサルタントといった高い専門性を持った人たちだけでなく、Wさんのようなホストのほか、「格安リラクゼーション店」や「バイク便ライダー」といったサービス業にも広がっているということです。 個人請負には「最低賃金」も「労働時間規制」も「社会保険」も適用されません。大きな夢をもって従事する若者もいるのでしょうが、人は誰しも歳を取り、若さや体力を失っていきます。中年以降を知識や技能で乗り切るためには、若いうちからの修練が必要です。 社会が悪い、正社員で雇わない会社が悪いという不満も理解できますが、スキルのつかない個人請負がいずれ使い捨てになるのは分かりきったこと。スキルが身につく仕事には、まずは契約社員や派遣社員からでも携われます。そういう将来を見越した人生設計も大事ではないでしょうか。 あわせてよみたい:最低限の生活には25歳で月22万円
引退したホストが「IT企業の正社員」に就職! 人材教育で若者の将来をサポートするホストクラブに驚き
近ごろ貧困にあえぐ若者が増え、「風俗業」が実質的なセーフティーネットになっているという話を耳にします。学費や生活費を自分で賄う学生たちにとって、短時間で高額の報酬がかなうホステスやホストなどが人気の仕事になっているそうです。
風俗といえば、高収入のウラで厳しい労働環境にあるというイメージが強いもの。ところが7月21日放送の「クローズアップ現代+」(NHK総合)で紹介されたホストクラブは、若者に希望を与える驚きサポートを行っていました。(文:篠原みつき)
「どんな会社に行っても通用する人材になって欲しい」
大阪・ミナミにあるホストクラブ「宝地蔵」。経営者の渡邉清隆さんは、ホストたちの将来を見据えて人材教育を積極的に行っています。
まるで職業訓練校の校長先生のような言葉に驚きます。店では社会常識を学ぶ勉強会を開いたり、店の費用負担でビジネス研修に参加させたりと、その内容は真摯かつマジメ。就業斡旋を行うこともあるそうです。
元ホストのWさん(28歳)は、この店の支援でIT企業に正社員として就職しました。ホストを引退したWさんを、店は2年間事務員として雇用。その間にウェブ製作の技術を身に着けさせました。
ホストだったころは、先の見えない不安にさいなまれていたWさん。いま初めて将来の希望が描けていると言います。
今どきの若者事情を特集した番組では、なかなか聞けないポジティブなセリフです。全員がうまくいくかどうかは分かりませんが、ホストを使い捨てにせず、手に職をつけて送り出したこの店を讃えたい思いがします。
スキルのつかない「個人請負」は、いずれ使い捨てになる
このホストクラブは、要は将来へのサポートをウリに人材確保しているのでしょう。収益性の高い水商売ですから、これくらいのことをしても元が取れるのかもしれませんが、それにしても手厚い援助で心温まるものでした。
ただし番組全体としては、重苦しい雰囲気が漂っていました。「”消費される”若者たち ~格差社会の新たな現実~」と題して、非正規雇用よりもさらに労働条件が厳しい「個人請負」で働く若者が、長時間労働と低収入で苦しむ姿を伝えていたからです。
いま「個人請負」という働き方は、フリーのIT技術者や経営コンサルタントといった高い専門性を持った人たちだけでなく、Wさんのようなホストのほか、「格安リラクゼーション店」や「バイク便ライダー」といったサービス業にも広がっているということです。
個人請負には「最低賃金」も「労働時間規制」も「社会保険」も適用されません。大きな夢をもって従事する若者もいるのでしょうが、人は誰しも歳を取り、若さや体力を失っていきます。中年以降を知識や技能で乗り切るためには、若いうちからの修練が必要です。
社会が悪い、正社員で雇わない会社が悪いという不満も理解できますが、スキルのつかない個人請負がいずれ使い捨てになるのは分かりきったこと。スキルが身につく仕事には、まずは契約社員や派遣社員からでも携われます。そういう将来を見越した人生設計も大事ではないでしょうか。
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