就活生の大きな勘違い 面接は「自分を売り込む場」ではない 2014年3月20日 採用担当者が斬る「シューカツの迷信」 ツイート 「いらっしゃいませ~! 今日は、どのようなものをお探しですか? 実はさっき、こんなジャケットが入荷したんですよ。素敵でしょう? この色。きっとお似合いですよ。いまなら少し割引するので、ぜひ買ってくださいね!」 初めて入った洋服屋さんで、いきなり強引に商品を売り込まれたら、どう思いますか? 「うるさいなあ。二度と来るもんか!」と思うのではないでしょうか。 こちらの事情を知ろうともしない人から、相手の都合で一方的に売り込まれたら、誰だって嫌になります。それが人間の心理というものです。それなのに、なぜ採用面接の場で、就活生は人が嫌がる「売り込み」をするのでしょうか。(河合浩司) 「アルバイトは何を?」と聞いただけなのに それは、就活本や就活サイトに、当たり前のように「面接は自分を売り込む場です」と書かれているからです(試しに検索してみてください)。しかし、採用の現場にいる私からすると、これは明らかに誤った認識です。面接は「自分を売り込む場」ではありません。 不幸なことに誤った情報を刷り込まれた就活生は、「アルバイトは何かしていましたか?」と質問を受けたら、どんな返答をするのでしょうか。下記は、実際に私が実際に就活生からされた返答です。 「はい! 私は3年間、居酒屋でアルバイトをしてきました。このアルバイトを通して、継続力とコミュニケーション能力を身につけることができました。継続力は、3年間続けてきたことによります。今までやり始めて続いたことがなかったのですが、社会人になるには継続力が必要だと考え、大変な時もありましたが、挫けずに続けてきました。コミュニケーション能力は、ホールスタッフを担当することで、様々なお客様と接する中で身につけました。年齢も職業も違う方々との会話を重ねることが、成長に繋がりました。これらの力を活かして、ぜひとも御社で活躍したいと思っております!」 彼は一気にまくしたてた後、満足げな顔をしていました。しかし、残念ながら私には不信感が募っていました。なぜなら、私は「アルバイトは何をしていたの?」と聞いただけなのですから……。 にもかかわらず、就活生は一方的に自分の話をしただけです。その挙句、「御社で活躍したい」と結んでいますが、関連性がよく分かりません。伝えたい情報や意気込みは分からないではないのですが、正直な本音を言えば「この人は身勝手だなあ」という感覚しか私には残りません。 質問したことに対して適切に答えてくれない人は、聞き手の期待をはぐらかしているように感じてしまいます。このような返答をしてしまう原因は、おそらく「面接は自分を売り込む場なんだ」という思い込みから来ているのでしょう。 会話は「キャッチボール」で進むもの 面接とは、正しくは「会話をする場」です。会話を通じて、お互いが相手の人となりを把握しようとするのです。会話は、キャッチボールをすることで進むものです。どちらかが一方的に話すのは、もはや会話ではありません。面接担当者からすると、勝手に全部話されてしまうと、質問することがなくなってしまいます。 とはいえ、「聞かれたこと以外は答えるな」というわけではありません。「アルバイトは何かしていましたか?」という問いに対して、「はい」だけでは会話が広がりません。たとえば、このような感じでいいのです。 「アルバイトは何かしていましたか?」 「はい、今も居酒屋でアルバイトをしています」 「長く続けているんですか?」 「大学に入ってからなので、もう3年になります」 「がんばっておられますね」 「ありがとうございます」 「3年も続けていると、いろいろ学ぶことがあったと思います。このアルバイトを通して、学べたことは何かありますか?」 「そうですね。いろいろありました。一番の学びは……」 面接担当者が「心地良いテンポで会話をしてくれる人だなぁ。この人ともっと話してみたいな」と思えたら、面接は合格となります。「面接は会話をする場」という認識をもって、必要なレベルで「会話」というボールを投げ返してください。面接担当者は、就活生とのテンポの良いキャッチボールを楽しみにしています。 【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。
就活生の大きな勘違い 面接は「自分を売り込む場」ではない
初めて入った洋服屋さんで、いきなり強引に商品を売り込まれたら、どう思いますか? 「うるさいなあ。二度と来るもんか!」と思うのではないでしょうか。
こちらの事情を知ろうともしない人から、相手の都合で一方的に売り込まれたら、誰だって嫌になります。それが人間の心理というものです。それなのに、なぜ採用面接の場で、就活生は人が嫌がる「売り込み」をするのでしょうか。(河合浩司)
「アルバイトは何を?」と聞いただけなのに
それは、就活本や就活サイトに、当たり前のように「面接は自分を売り込む場です」と書かれているからです(試しに検索してみてください)。しかし、採用の現場にいる私からすると、これは明らかに誤った認識です。面接は「自分を売り込む場」ではありません。
不幸なことに誤った情報を刷り込まれた就活生は、「アルバイトは何かしていましたか?」と質問を受けたら、どんな返答をするのでしょうか。下記は、実際に私が実際に就活生からされた返答です。
彼は一気にまくしたてた後、満足げな顔をしていました。しかし、残念ながら私には不信感が募っていました。なぜなら、私は「アルバイトは何をしていたの?」と聞いただけなのですから……。
にもかかわらず、就活生は一方的に自分の話をしただけです。その挙句、「御社で活躍したい」と結んでいますが、関連性がよく分かりません。伝えたい情報や意気込みは分からないではないのですが、正直な本音を言えば「この人は身勝手だなあ」という感覚しか私には残りません。
質問したことに対して適切に答えてくれない人は、聞き手の期待をはぐらかしているように感じてしまいます。このような返答をしてしまう原因は、おそらく「面接は自分を売り込む場なんだ」という思い込みから来ているのでしょう。
会話は「キャッチボール」で進むもの
面接とは、正しくは「会話をする場」です。会話を通じて、お互いが相手の人となりを把握しようとするのです。会話は、キャッチボールをすることで進むものです。どちらかが一方的に話すのは、もはや会話ではありません。面接担当者からすると、勝手に全部話されてしまうと、質問することがなくなってしまいます。
とはいえ、「聞かれたこと以外は答えるな」というわけではありません。「アルバイトは何かしていましたか?」という問いに対して、「はい」だけでは会話が広がりません。たとえば、このような感じでいいのです。
面接担当者が「心地良いテンポで会話をしてくれる人だなぁ。この人ともっと話してみたいな」と思えたら、面接は合格となります。「面接は会話をする場」という認識をもって、必要なレベルで「会話」というボールを投げ返してください。面接担当者は、就活生とのテンポの良いキャッチボールを楽しみにしています。
【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。