誰がこんなの教えた?! 就活に「自己分析」など必要ない理由 2014年3月27日 採用担当者が斬る「シューカツの迷信」 ツイート 「就職支援は儲かりますよ」 数年前に、有名な自己分析本の著者から言われた言葉です。彼によると、就活支援ビジネスは「自己分析本で就活生の不安を煽る」ことから始まるのだそうです。 不安に陥った学生に向けて、面接対策やエントリーシート対策の本やセミナーの広告を打てば、彼らは勝手に集まってくるのだと……。「あなたもリストラされたら、ご自身でやればいいですよ」と、彼は助言してくれました。私は怒りのあまり、言葉が出ませんでした。(河合浩司) 「小さいころから笑顔が好き」とか意味がない 自己分析本の著者がすべてこのような人だとは思いたくありませんが、自己分析を学生にさせれば、「自分は大したことをしていない…」と不安に陥るのは当然のことです。 そもそも、昨今では就活に必須と思われている「自己分析」は、本当に必要なのでしょうか。よく聞くのが「自分の過去を振り返ることで、自己の理解を深め、自分に合った仕事を見つけるため」という理由です。 しかし、これはあまりに無理があります。例えば、何のスポーツをもしたことがない人が自分の過去を振り返ったところで、自分に最も向いているスポーツを明らかにはできません。自分に合うかどうかは、いろいろなスポーツの試合を観戦したり、体験したりする中でしか分かりません。 これは仕事も同じです。実際に仕事をしたことがない就活生が自分の過去を分析したところで、職業適性を見出すのは不可能だといっても過言ではありません。 それなのに面接会場では、就活生が自己分析の結果を基に「苦し紛れに作り上げられたストーリー」をもってアピールしてきます。もちろん企業の採用担当者は、それが就活生の必死さゆえのことだと理解しています。 とはいえ、「小さいころから人の笑顔を見るのが好きでした」といった、ほとんど人間の本能のようなことを根拠にし、そこから強引に「だから御社に」とアピールしてくる人を見ていると本当に気の毒になります。と同時に、就活ビジネスのアコギさに怒りがこみ上げてきます。 将来に向けて可能性が開かれているのが、若者の特権です。それなのに、少ない社会経験を元に、大人の世界に過剰に適応させられようとしているのですから……。 就職は「ゴール」ではない。未来に目を向けよ 将来性のある若者たちが就活において時間を注ぐべきなのは、自分の過去をムリに分析することではありません。自分がこれから出ていく世の中について調べ、自分と世の中の明るい未来に思いを馳せることです。 自分が知らなかった仕事や、志望する会社や業界、それに関わる社会のしくみを調べてみれば、自分がその仕事を「してみたい!」と感じるか否かが明らかになります。このことが、適職を見つけることにつながるものです。また、 「自分はどんな人生を歩みたいのか?」 「そのためにどんな仕事ができたらいいのか?」 「どんなことを実現したいのか?」 といった、将来の夢や理想を思い浮かべてみることも有益でしょう。友人たちとこういったテーマで語り合うことが、自分の生き方を方向づけます。人は言語化することで、未来を形作っていくものです。 もし理想を描く手がかりが足りないと思えば、偉人の伝記を読んでみるのもいいでしょう。先人たちの生きざまに、自分の理想の生き方を見つけることもあります。 変えようのない過去に目を向ける時間は、少なくて構いません。それよりも、今から自由に築いていける未来に目を向けてください。就職とは決してゴールではなく、スタートラインでしかないのですから。 あわせてよみたい:面接は「自分を売り込む場」ではない 【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。
誰がこんなの教えた?! 就活に「自己分析」など必要ない理由
数年前に、有名な自己分析本の著者から言われた言葉です。彼によると、就活支援ビジネスは「自己分析本で就活生の不安を煽る」ことから始まるのだそうです。
不安に陥った学生に向けて、面接対策やエントリーシート対策の本やセミナーの広告を打てば、彼らは勝手に集まってくるのだと……。「あなたもリストラされたら、ご自身でやればいいですよ」と、彼は助言してくれました。私は怒りのあまり、言葉が出ませんでした。(河合浩司)
「小さいころから笑顔が好き」とか意味がない
自己分析本の著者がすべてこのような人だとは思いたくありませんが、自己分析を学生にさせれば、「自分は大したことをしていない…」と不安に陥るのは当然のことです。
そもそも、昨今では就活に必須と思われている「自己分析」は、本当に必要なのでしょうか。よく聞くのが「自分の過去を振り返ることで、自己の理解を深め、自分に合った仕事を見つけるため」という理由です。
しかし、これはあまりに無理があります。例えば、何のスポーツをもしたことがない人が自分の過去を振り返ったところで、自分に最も向いているスポーツを明らかにはできません。自分に合うかどうかは、いろいろなスポーツの試合を観戦したり、体験したりする中でしか分かりません。
これは仕事も同じです。実際に仕事をしたことがない就活生が自分の過去を分析したところで、職業適性を見出すのは不可能だといっても過言ではありません。
それなのに面接会場では、就活生が自己分析の結果を基に「苦し紛れに作り上げられたストーリー」をもってアピールしてきます。もちろん企業の採用担当者は、それが就活生の必死さゆえのことだと理解しています。
とはいえ、「小さいころから人の笑顔を見るのが好きでした」といった、ほとんど人間の本能のようなことを根拠にし、そこから強引に「だから御社に」とアピールしてくる人を見ていると本当に気の毒になります。と同時に、就活ビジネスのアコギさに怒りがこみ上げてきます。
将来に向けて可能性が開かれているのが、若者の特権です。それなのに、少ない社会経験を元に、大人の世界に過剰に適応させられようとしているのですから……。
就職は「ゴール」ではない。未来に目を向けよ
将来性のある若者たちが就活において時間を注ぐべきなのは、自分の過去をムリに分析することではありません。自分がこれから出ていく世の中について調べ、自分と世の中の明るい未来に思いを馳せることです。
自分が知らなかった仕事や、志望する会社や業界、それに関わる社会のしくみを調べてみれば、自分がその仕事を「してみたい!」と感じるか否かが明らかになります。このことが、適職を見つけることにつながるものです。また、
といった、将来の夢や理想を思い浮かべてみることも有益でしょう。友人たちとこういったテーマで語り合うことが、自分の生き方を方向づけます。人は言語化することで、未来を形作っていくものです。
もし理想を描く手がかりが足りないと思えば、偉人の伝記を読んでみるのもいいでしょう。先人たちの生きざまに、自分の理想の生き方を見つけることもあります。
変えようのない過去に目を向ける時間は、少なくて構いません。それよりも、今から自由に築いていける未来に目を向けてください。就職とは決してゴールではなく、スタートラインでしかないのですから。
あわせてよみたい:面接は「自分を売り込む場」ではない
【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。