孤独な「自己分析」は効果少ない 自分を知るには他者の存在が不可欠 2014年5月1日 採用担当者が斬る「シューカツの迷信」 ツイート 動物たちが話せたら、このような会話が繰り広げられているかもしれません。 「ハトくん、君ってすごいよな。自分の体一つで、大空を自由に舞えるなんて」 「柴犬くん、そんなにすごいことなのかなぁ。物心ついた時から飛んでるから、自覚ないけど……。でも、君だってすごいじゃないですか。自分の足で大地を力強く踏みしめて、縦横無尽に駆けていけることこそ素敵ですよ」 「そ、そうかなぁ。これくらい普通だよ。みんな走り回ってるしね」 一見それらしいノウハウには頼らなくていい 上記の会話は、就活生にとって他人事ではないのがお分かりでしょうか。就活生が陥りがちな「自分のことを知るために自己分析をする」という行動にも、同じことが言えるのです。 自分のことをいくら自分だけで分析したところで、本当の強みや特徴は掴めません。自分の強みや特徴は、自分からすればあまりに当たり前であるからです。 一方、自分では頑張ったつもりがなくても、他者から見れば強みであることもよくあります。柴犬は、自分が大地を駆け回れることなんて強みだとは思っていません。自分にはない能力を持つハトのことをすごいと感じています。 それはハトも同様です。しかし、空を飛ぶことも大地を駆け回ることも、本来どちらも強みであり、それぞれの特徴なのです。それを自覚し、活かし方を見つけることができれば、誰にだって活躍の場が増えることでしょう。 就活生のみなさんには、そんな自分の特徴を見つけるために、一人で悩まないでいただきたい。人は自分を知るためには、他者の存在が必要不可欠なのです。自分への理解は、他者と関わる中で自然と進みます。わざわざ自己分析などという、一見それらしいノウハウに頼る必要は全くありません。 それよりも、就活という貴重なこの機会を活かし、自分とは価値観や背景が違う方々とたくさんの出会いを経験してください。そのために「学生」という身分は本当に効果的で、様々な人が会ってくれます。OB・OGを始め、採用担当者、果ては経営者までが時間を作ってくれることがあります。学生というだけで「力を貸してあげたい」と思う大人は多いものです。 まずは「自分の考え」を話し、アドバイスをもらってみる とはいえ、やはり意識的な行動なしに社会人と有益な出会いを果たすことは簡単ではないのかもしれません。学生の間は、学生同士で集まりがちなのが自然です。接する社会人と言えば学校関係者が多いでしょうから、それだけでは狭い視点になりかねません。 インターンシップがうまく機能するといいのですが、現状では単なる会社見学ですから、「社会人と接点を持つ」という目的からすると効果が薄いように思えます。それならば、アルバイト先で思いっきり仕事に打ち込む方が、良い社会人との縁を作れるでしょう。 たとえば、社会人が参加するセミナーや勉強会をのぞいてみるのはいかがでしょう。最近は「朝活」も流行っています。私も先日、ある勉強会に参加していましたが、意外なほど学生さんがいて驚きました。 また、インターネットのSNSでも、社会人も参加するコミュニティの参加者を募集しています。情報を集め、自分に必要なものを選択し、人との接点を作って会いに行くという行為は、すでに会社の「営業」と同じといっていいでしょう。 社会人と話す機会ができたら、現時点の仮説でいいので「自分はこんな仕事がしたい、こんな生き方をしたい」という考えを話してみましょう。大人からはきっと、応援やアドバイス、厳しいコメントがあると思います。 それらを取り入れながら、自分の将来に考えを巡らせると、自分は何がしたいのかが見えてきやすくなります。参加するのは、就活イベント以外の場でもかまいません。むしろ、全く関係ない場所の方がいいのかもしれません。 学生の就活という貴重な時期を使って、自分への理解を深め、世界を広げるためにも、たくさんの出会いを経験していただきたいと思います。(河合浩司) あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー 【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。
孤独な「自己分析」は効果少ない 自分を知るには他者の存在が不可欠
動物たちが話せたら、このような会話が繰り広げられているかもしれません。
一見それらしいノウハウには頼らなくていい
上記の会話は、就活生にとって他人事ではないのがお分かりでしょうか。就活生が陥りがちな「自分のことを知るために自己分析をする」という行動にも、同じことが言えるのです。
自分のことをいくら自分だけで分析したところで、本当の強みや特徴は掴めません。自分の強みや特徴は、自分からすればあまりに当たり前であるからです。
一方、自分では頑張ったつもりがなくても、他者から見れば強みであることもよくあります。柴犬は、自分が大地を駆け回れることなんて強みだとは思っていません。自分にはない能力を持つハトのことをすごいと感じています。
それはハトも同様です。しかし、空を飛ぶことも大地を駆け回ることも、本来どちらも強みであり、それぞれの特徴なのです。それを自覚し、活かし方を見つけることができれば、誰にだって活躍の場が増えることでしょう。
就活生のみなさんには、そんな自分の特徴を見つけるために、一人で悩まないでいただきたい。人は自分を知るためには、他者の存在が必要不可欠なのです。自分への理解は、他者と関わる中で自然と進みます。わざわざ自己分析などという、一見それらしいノウハウに頼る必要は全くありません。
それよりも、就活という貴重なこの機会を活かし、自分とは価値観や背景が違う方々とたくさんの出会いを経験してください。そのために「学生」という身分は本当に効果的で、様々な人が会ってくれます。OB・OGを始め、採用担当者、果ては経営者までが時間を作ってくれることがあります。学生というだけで「力を貸してあげたい」と思う大人は多いものです。
まずは「自分の考え」を話し、アドバイスをもらってみる
とはいえ、やはり意識的な行動なしに社会人と有益な出会いを果たすことは簡単ではないのかもしれません。学生の間は、学生同士で集まりがちなのが自然です。接する社会人と言えば学校関係者が多いでしょうから、それだけでは狭い視点になりかねません。
インターンシップがうまく機能するといいのですが、現状では単なる会社見学ですから、「社会人と接点を持つ」という目的からすると効果が薄いように思えます。それならば、アルバイト先で思いっきり仕事に打ち込む方が、良い社会人との縁を作れるでしょう。
たとえば、社会人が参加するセミナーや勉強会をのぞいてみるのはいかがでしょう。最近は「朝活」も流行っています。私も先日、ある勉強会に参加していましたが、意外なほど学生さんがいて驚きました。
また、インターネットのSNSでも、社会人も参加するコミュニティの参加者を募集しています。情報を集め、自分に必要なものを選択し、人との接点を作って会いに行くという行為は、すでに会社の「営業」と同じといっていいでしょう。
社会人と話す機会ができたら、現時点の仮説でいいので「自分はこんな仕事がしたい、こんな生き方をしたい」という考えを話してみましょう。大人からはきっと、応援やアドバイス、厳しいコメントがあると思います。
それらを取り入れながら、自分の将来に考えを巡らせると、自分は何がしたいのかが見えてきやすくなります。参加するのは、就活イベント以外の場でもかまいません。むしろ、全く関係ない場所の方がいいのかもしれません。
学生の就活という貴重な時期を使って、自分への理解を深め、世界を広げるためにも、たくさんの出会いを経験していただきたいと思います。(河合浩司)
あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー
【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。