• 「5万円の証明写真」がもたらす悲劇 目の前に座っているのに本人だと分からない

    履歴書に貼付する証明写真に、高額なお金を払う人がいます。しかし採用担当者からすると、「それはムダなお金である」と言い切れます。

    証明写真は、本人確認に使う程度です。写真の写り具合が合否に大きく影響することは、まずありません。仮に写真で選考する企業があったとしても、面接で会えば一瞬でバレてしまいますので、その程度の対策にしかなりません。

    就活生を狙ったこういった業者は、合同説明会会場前などでチラシを配ったり、勧誘をしたりしています。くれぐれもお気を付けください。

    目の大きさ、ほくろの有無、顔の輪郭まで「加工済み」

    本人とはまるで別人の証明写真が貼ってある履歴書を見たことがあります。

    その日は、いつものようにグループ面接をしていました。2グループ目の5名の学生さんたちに座ってもらい、それぞれの前に各々の履歴書を並べようとした時、1人の女子学生だけはどうしても履歴書が見つからなかったのです。

    それどころか、なぜか他人の履歴書が1枚まぎれています。「あれ? 履歴書の順番を間違えたのかな?」と思い、前後のグループを見ても、目の前に座っている学生さんの履歴書がどうしても見つかりません。

    念のため、1枚だけ残っていた履歴書の名前を確認してみました。

    「○○さんで間違いありませんか?」
    「はい、よろしくお願いします!」

    よくよく見てみると、証明写真の目が少しだけ似ているような気がしました。

    「証明写真、すごい気合入っていますねぇ」
    「はい、この日のために5万円もかけましたから」

    「えぇっ!?」と思わず声をあげそうでした……。長年、採用担当者をしていると、少々のことでは驚かなくなるのですが、この日だけは驚きを隠すのに必死でした。

    彼女が履歴書に貼っていた証明写真は、別人としか思えないほど修正を施されていました。目の大きさ、鼻筋、唇の太さ、ほくろの有無、顔の輪郭、髪の色、ことごとく本人とは違っていました。なにせ面接で目の前にいるのに、本人かどうかを確認しなければならないくらいなのですから。

    カメラマンに撮ってもらうこと自体は悪くないが

    ここまで修正をすれば、5万円もかかるのも無理はありませんが、それは採用試験以外で楽しんでください。他人と間違うほど修正された証明写真を貼ってくる人に対して、採用担当者が好印象を抱くことはありません。

    むしろ、不信感を募らせるだけです。高いお金を使って、わざわざ自分からご縁をなくすようなことはしないでください。

    とはいえ、あまりに手軽過ぎるスピード写真は避けた方がいいかもしれません。自分ではネクタイの曲がりや襟のハネ、ちょっとした寝癖などに気づかないままになることもあるからです。

    そこでオススメなのが、街の写真屋さんです。1枚400円~500円程度で、カメラマンが撮ってくれるものであれば十分です。その際、やたら仰々しいヘアセットや化粧などは必要ありません。顔が変わるような修正も要りません。本人だと確認できれば大丈夫なのです。

    冒頭の女子学生には、面接終了後に「別の写真にした方がいいよ」と伝えました。かわいそうで放っておけなかったからです。まるで別人のような写真を貼った履歴書を持ってくる就活生を合格にするなんて、怖くてとてもできません。本人ではないかもしれませんから……。(河合浩司)

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    【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
    上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。

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