• シューカツの落とし穴! 内定者が語る「内定の秘訣」は鵜呑みにしてはいけない

    「あの、先輩から聞いていたことと違うんですが…」

    私が採用担当者のホンネを就活生に伝えたとき、よく聞く感想です。就活を終え「内定者」となった先輩たちは、自分たちの誇らしい成功体験を元に、後輩たちに様々なアドバイスをしています。

    以前、とある大学の就活支援イベントに参加したときも、内定者が自身の就活体験を話すパネルディスカッションを行っていました。有名企業から内定を受けた4名の学生が、大ホールに集まった3年生の前で話をしていました。(河合浩司)

    「採用された本当の理由」は本人も知らないのに

    鼻高々に思い込み披露鼻高々に思い込み披露

    内定者の4名は、あくまでも純粋に善意で後輩たちにアドバイスをしていたのだと思います。しかし、その内容には残念ながら明らかに間違ったものがいくつもありました。

    「自己PR文はキャッチコピーが大事だから、事前に練っていった方がいい」
    「グループディスカッションでは、実は書記を担当すると通りやすい」
    「アルバイトの話よりも、部活のエピソードが評価が高い」

    いずれも意外性があって目を引くものですが、真偽のほどはかなり怪しいものです。言うまでもなく、あらかじめ作りこんだ自己PRのキャッチコピーを出されると、採用担当者はいかにも売り込みのような印象を受けることがあります。面接において「売り込み」が逆効果になるおそれがあることは、以前にも書いた通りです。

    また、グループディスカッションなどのみんなで意見を交換してもらう場で、黙って書記をする人だけを評価するはずはありません。アルバイトの話をきっかけに、採用を決める場合だって当然あります。

    行為と結果の間には「相関関係」と「因果関係」があります。ある行為をした人が採用されたからといって、それが採用の理由になったとは限りません。内定者が思い込みで「これで私は内定を勝ち取った!」と言うことは、結果的にウソをついてしまっている可能性もあるのです。

    そもそも、内定を出したのは採用担当者です。何が決め手となって採用を決めたのかは、採用担当者しか知りえません。「君を採用した理由はね…」と打ち明けてくれる担当者がいれば別ですが、内定者が真相を知る由もないのです。

    誤解に満ちた悲劇を生まないために

    にもかかわらず、内定者の声を元にした面接対策本やエントリーシート対策本は、数多く出版されています。また、それらをテーマとしたセミナーも開催されていますが、効果のほどは怪しいものばかりです。

    例えば、選考に通過したエントリーシートを見て、「何が通過の決め手となったのか?」は内定者には分かりません。大した内容がなくても、志望企業が学歴しか見ないような会社であれば、「高学歴」が決め手ということになります。

    それを、自分の工夫がさも効果があったかのように、「こう書けば選考に通る!」と打ち出すと、誤解に満ちた悲劇が生まれてしまいます。

    とはいえ、内定者の声が全く参考にならないとは言いません。就活の進め方や筆記試験の対策方法などは、自分自身が進めやすかったかどうかが判断基準となりますから、これは本人の体験談を語れます。

    筆記試験対策も同様に「どの参考書が使いやすかったか?」「どういう勉強方法が学びやすかったのか?」は、勉強をした当人なら話せる内容です。

    これは就活に限った話ではありませんが、他人の意見を参考にする際には「話している人が本当に実情をわかっている人かどうか」を考えてみてください。事実と意見を混同したまま鵜呑みにしてしまうと、ひどい目に遭うのは社会人になっても変わりません。

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    【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
    上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。

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