選考に落ちたのは「既卒」だから? そう思い込むから不利になる 2014年8月14日 採用担当者が斬る「シューカツの迷信」 ツイート 「既卒就活は不利である」――。もはや常識のように、毎年よく聞く話です。私も疑問を持たずにそう思っていた時期もありました。しかし、ふと思い返してみると、採用担当者として「既卒であること」を理由に不合格にしたことは、今まで一度もないことに気づきました。 不合格にする時には、必ず別の理由がありました。それでは、なぜ「既卒は不利だ」と言われることが多いのでしょうか。それは既卒で就活を続ける人たちに、ひとつの傾向があるからではないかと思います。(河合浩司) 「不況」や「進路変更」が理由なら挽回の余地は十分 毎年、採用活動をしている中で、「既卒就活生」になった方々には大きく分けると3つのタイプがあると感じています。 a.景気の好不況による被害者 b.公務員・教員試験などからの進路変更 c.ミスや勘違いを含め当人の言動に理由があった aは、不運にも好不況の波に翻弄されてしまったことが理由で、就職できないまま卒業を迎えてしまった方々です。タイミングが悪かったことは不運だったとしか言いようがありません。しかし、彼らは景気が少しでも上向けば、十分に就職できるのです。諦めずに就活を続けていれば、就職することは可能です。 bは、進路変更により就活を始めるのが遅く、残念ながら卒業までに間に合わなかった方々です。とはいえ、彼らも時間さえあれば、就職できた可能性を大きく持っています。 実際に公務員・教員試験を志望していた学生さんたちは、基礎学力が比較的高い傾向にあり、優秀であるにもかかわらず内定をもらっていないことがあります。私たち採用担当者からすると、とてもありがたい出会いです。 ただし、私が会ってきた既卒の就活生で、最も割合が多いのがcの方々です。中でも面接でお会いした時から、挨拶に元気がなかったり、会話していてもなかなか目が合いにくかったりする人は、採用担当者の印象がよくありません。 さらには、態度からして明らかに「仕事をしたくない」という姿勢が見て取れる人もいます。こういう既卒の人に会うと、「そんなに働きたくないなら、いっそのこと就職以外の道を探してもいいのになぁ…」とすら思ってしまいます。 「既卒は不利じゃない」と前向きに臨もう つまり既卒であっても、aやbの人たちは翌年以降に十分チャンスがあり、不利になる要素はありません。もちろんaの場合は景気の回復が前提となりますが、会社だって人材獲得競争の中、既卒などという小さなことにこだわっていられません。 一方、cの人に内定を出して弊社に入社してもらっても、根本的に本人が働くことを望んでいないのであれば、結局不幸になるだけです。そう考え、不採用としてきました。 繰り返しますが、「既卒だから」という理由で不合格にしたのではありません。就活生が入社した後、社内で幸せになってくれることを全く想像できなかったことが一番の要因です。 あくまで私の肌感覚ではありますが、a:b:cの比率は1:1:8。「既卒就活が厳しい」と言われる1つの理由は、既卒就活生の中にcの方々の割合が高く、結果的に就職に成功する人の割合が低いためではないでしょうか。 確かに、会社によっては「新卒に限る」として既卒就活の門戸が狭い場合もあります。しかしそういう会社でも、電話で問い合わせると選考を受け付けてもらえることも珍しくありません。特にaやbといった事情があり、入社したい動機が強ければなおさらです。 でも、電話した時の対応があまりに元気もなく、会話にすらならなければ断られることはありえます。逆にいうと「既卒だから」と落ち込み、自信なさげにしていることが、かえって不利にしているおそれがあるということです。「既卒は不利じゃない」「落ちる理由は既卒じゃない」と考えて、前向きに選考に臨んでいただきたいと思います。 あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー 【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。
選考に落ちたのは「既卒」だから? そう思い込むから不利になる
「既卒就活は不利である」――。もはや常識のように、毎年よく聞く話です。私も疑問を持たずにそう思っていた時期もありました。しかし、ふと思い返してみると、採用担当者として「既卒であること」を理由に不合格にしたことは、今まで一度もないことに気づきました。
不合格にする時には、必ず別の理由がありました。それでは、なぜ「既卒は不利だ」と言われることが多いのでしょうか。それは既卒で就活を続ける人たちに、ひとつの傾向があるからではないかと思います。(河合浩司)
「不況」や「進路変更」が理由なら挽回の余地は十分
毎年、採用活動をしている中で、「既卒就活生」になった方々には大きく分けると3つのタイプがあると感じています。
aは、不運にも好不況の波に翻弄されてしまったことが理由で、就職できないまま卒業を迎えてしまった方々です。タイミングが悪かったことは不運だったとしか言いようがありません。しかし、彼らは景気が少しでも上向けば、十分に就職できるのです。諦めずに就活を続けていれば、就職することは可能です。
bは、進路変更により就活を始めるのが遅く、残念ながら卒業までに間に合わなかった方々です。とはいえ、彼らも時間さえあれば、就職できた可能性を大きく持っています。
実際に公務員・教員試験を志望していた学生さんたちは、基礎学力が比較的高い傾向にあり、優秀であるにもかかわらず内定をもらっていないことがあります。私たち採用担当者からすると、とてもありがたい出会いです。
ただし、私が会ってきた既卒の就活生で、最も割合が多いのがcの方々です。中でも面接でお会いした時から、挨拶に元気がなかったり、会話していてもなかなか目が合いにくかったりする人は、採用担当者の印象がよくありません。
さらには、態度からして明らかに「仕事をしたくない」という姿勢が見て取れる人もいます。こういう既卒の人に会うと、「そんなに働きたくないなら、いっそのこと就職以外の道を探してもいいのになぁ…」とすら思ってしまいます。
「既卒は不利じゃない」と前向きに臨もう
つまり既卒であっても、aやbの人たちは翌年以降に十分チャンスがあり、不利になる要素はありません。もちろんaの場合は景気の回復が前提となりますが、会社だって人材獲得競争の中、既卒などという小さなことにこだわっていられません。
一方、cの人に内定を出して弊社に入社してもらっても、根本的に本人が働くことを望んでいないのであれば、結局不幸になるだけです。そう考え、不採用としてきました。
繰り返しますが、「既卒だから」という理由で不合格にしたのではありません。就活生が入社した後、社内で幸せになってくれることを全く想像できなかったことが一番の要因です。
あくまで私の肌感覚ではありますが、a:b:cの比率は1:1:8。「既卒就活が厳しい」と言われる1つの理由は、既卒就活生の中にcの方々の割合が高く、結果的に就職に成功する人の割合が低いためではないでしょうか。
確かに、会社によっては「新卒に限る」として既卒就活の門戸が狭い場合もあります。しかしそういう会社でも、電話で問い合わせると選考を受け付けてもらえることも珍しくありません。特にaやbといった事情があり、入社したい動機が強ければなおさらです。
でも、電話した時の対応があまりに元気もなく、会話にすらならなければ断られることはありえます。逆にいうと「既卒だから」と落ち込み、自信なさげにしていることが、かえって不利にしているおそれがあるということです。「既卒は不利じゃない」「落ちる理由は既卒じゃない」と考えて、前向きに選考に臨んでいただきたいと思います。
あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー
【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。