大学の就職課は残念ながら「就職支援の素人集団」であることが多い 2014年8月29日 採用担当者が斬る「シューカツの迷信」 ツイート 就活で行き詰まったり、悩んだりした学生が大学内で頼れるところといえば、就職課です。しかし、この就職課、実は就職支援に関しては素人集団といわざるをえません。 職員の経歴が高校→大学→大学職員しかなければ、民間企業に就職した経験もなく、「学校」という特殊な環境しか知りません。そのような世間知らずが例年の人事ローテーションで、その年たまたま就職課にいるだけのところが多いのです。(河合浩司) 勉強熱心な職員が安易に「自己分析」させる 就職課の職員も自分が就職支援を知らないことは自覚していますから、自分なりに勉強しようとします。真面目な方が多いですからね。そして本屋さんに行くと、そこに並んでいるのは様々な「就活本」の数々です。 そこに書かれていることは、間違いがかなり多いのですが、民間就職も採用担当者も経験したことがない人には、その真偽を見抜くことができません。その結果、就活本から得た間違った知識を大学内で教えている人が多いのが現状です。 その最たるものの一つが、就職課主導の「自己分析講座」でしょう。数多くの就活本が自己分析を勧めていることも、大学で自己分析が跋扈する要因です。それに加えて、自己分析がキャリアの授業として開催しやすいことも後押しになっています。 自己分析は設問さえあれば、あとは学生が記入していくという内容です。中にはグラフを作らせたり絵を描かせたりするものもありますが、基本的には学生が考えて記入する内容であることに変わりはありません。 つまり、いくつかの設問さえあれば、運営側に特殊な技能や知識がなくとも実施が可能なのです。にもかかわらず、「就活の勉強をした」という充実感だけは受講生に持たせることができます。 大学の就職課は、実はこのような状況ですから、彼らからもたらされるアドバイスや情報は、よくよく検証する必要があります。エントリーシートや履歴書への添削も同様です。 「仕事熱心な就職課の職員」は身近な社会人 とはいえ、就職課に全く相談しに行くな、とは言いません。むしろ、積極的に活用した方がいい場合もあります。その際に必要なのは、「相談する職員を選ぶこと」です。 私は、一度でも学校以外の民間企業に就職した経験がある人を探すことをオススメします。もちろん未経験でもきちんと研究している人もいますし、「1社を数年経験したくらいで…」と思うかもしれませんが、全く知らない職員とは大きな違いがあるものです。 加えて、仕事に精力的な職員を見定めてください。私も仕事柄、様々な大学の就職課に行っていますが、私が会ってきた中では、仕事に熱心な職員さんは多くても2割もいかないのが現状です。しかしゼロではないので、私たち採用担当者は、このような就職課との職員さんと出会えることを夢見て、大学と様々な形でリレーションを築いています。 こういった職員さんとの出会いは、就活生にとっても幸運です。学生の好みや気質を踏まえて、企業の紹介をしてくれることがよくあります。選考に通るかどうかは別問題ですが、企業との出会いの数を増やすことができます。 親身に話を聞いてくれる職員さんの中には、学生が就活を終えるまで何度も電話して支援を続け、卒業してからも関わりを続ける方もおられるほどです。ここまで熱心な職員さんは、なかなかいないかもしれませんが、ぜひ一度探してみてください。 仕事に熱心な社会人を見つける習慣は、合同・単独説明会でも面接でも大事な力となります。いきなり学外で「意識しろ」と言われても難しいでしょうから、まずは学内から目を養う訓練をして欲しいと思います。 あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー 【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。
大学の就職課は残念ながら「就職支援の素人集団」であることが多い
就活で行き詰まったり、悩んだりした学生が大学内で頼れるところといえば、就職課です。しかし、この就職課、実は就職支援に関しては素人集団といわざるをえません。
職員の経歴が高校→大学→大学職員しかなければ、民間企業に就職した経験もなく、「学校」という特殊な環境しか知りません。そのような世間知らずが例年の人事ローテーションで、その年たまたま就職課にいるだけのところが多いのです。(河合浩司)
勉強熱心な職員が安易に「自己分析」させる
就職課の職員も自分が就職支援を知らないことは自覚していますから、自分なりに勉強しようとします。真面目な方が多いですからね。そして本屋さんに行くと、そこに並んでいるのは様々な「就活本」の数々です。
そこに書かれていることは、間違いがかなり多いのですが、民間就職も採用担当者も経験したことがない人には、その真偽を見抜くことができません。その結果、就活本から得た間違った知識を大学内で教えている人が多いのが現状です。
その最たるものの一つが、就職課主導の「自己分析講座」でしょう。数多くの就活本が自己分析を勧めていることも、大学で自己分析が跋扈する要因です。それに加えて、自己分析がキャリアの授業として開催しやすいことも後押しになっています。
自己分析は設問さえあれば、あとは学生が記入していくという内容です。中にはグラフを作らせたり絵を描かせたりするものもありますが、基本的には学生が考えて記入する内容であることに変わりはありません。
つまり、いくつかの設問さえあれば、運営側に特殊な技能や知識がなくとも実施が可能なのです。にもかかわらず、「就活の勉強をした」という充実感だけは受講生に持たせることができます。
大学の就職課は、実はこのような状況ですから、彼らからもたらされるアドバイスや情報は、よくよく検証する必要があります。エントリーシートや履歴書への添削も同様です。
「仕事熱心な就職課の職員」は身近な社会人
とはいえ、就職課に全く相談しに行くな、とは言いません。むしろ、積極的に活用した方がいい場合もあります。その際に必要なのは、「相談する職員を選ぶこと」です。
私は、一度でも学校以外の民間企業に就職した経験がある人を探すことをオススメします。もちろん未経験でもきちんと研究している人もいますし、「1社を数年経験したくらいで…」と思うかもしれませんが、全く知らない職員とは大きな違いがあるものです。
加えて、仕事に精力的な職員を見定めてください。私も仕事柄、様々な大学の就職課に行っていますが、私が会ってきた中では、仕事に熱心な職員さんは多くても2割もいかないのが現状です。しかしゼロではないので、私たち採用担当者は、このような就職課との職員さんと出会えることを夢見て、大学と様々な形でリレーションを築いています。
こういった職員さんとの出会いは、就活生にとっても幸運です。学生の好みや気質を踏まえて、企業の紹介をしてくれることがよくあります。選考に通るかどうかは別問題ですが、企業との出会いの数を増やすことができます。
親身に話を聞いてくれる職員さんの中には、学生が就活を終えるまで何度も電話して支援を続け、卒業してからも関わりを続ける方もおられるほどです。ここまで熱心な職員さんは、なかなかいないかもしれませんが、ぜひ一度探してみてください。
仕事に熱心な社会人を見つける習慣は、合同・単独説明会でも面接でも大事な力となります。いきなり学外で「意識しろ」と言われても難しいでしょうから、まずは学内から目を養う訓練をして欲しいと思います。
あわせてよみたい:採用担当者が斬る「シューカツの迷信」バックナンバー
【プロフィール】河合 浩司(かわい・こうじ)
上場企業のメーカーで人事課長を務める、採用業務15年超のベテラン。学生たちの不安を煽って金を儲ける最近の就活ビジネスを批判し、ペンネームでのツイッター(@k_kouzi7)やウェブコラムを通じて「自然体の就活」を回復するよう呼びかけている。