外こもりと「トラブル」 窃盗、ドラッグから「命の危険」まで…【外こもりのすすめ(8)】 2014年1月10日 外こもりのすすめ ツイート 外こもりに衝撃を与えた事件があったのは、2008年のことだ。バンコクに住んでいた『外こもりのススメ―海外のほほん生活』の著者、安田誠さん(本名:棚橋貴秀さん)が、同じ外こもり仲間の日本人2人に殺害されたのだ。 「自分がどれだけ持っているか、誰も口にしなくなった」 安田氏の事件はネットなどでかなり大きく取り上げられたので、詳細はここでは述べない。妬みか、金銭トラブルか。原因は諸説あるそうだ。 「彼は株やFXで生活をしていて、資産も1000万円以上はあったらしいです」 貧BPさんは安田氏との面識はない。しかしそのショックは大きいという。 「自分がいくらお金を持っているのかを明らかにしない、というというルールのようなものは以前からありました。が、安田氏の事件以降はますます強まったと思います。自分がどうやってお金を稼いでいるか、どれだけ持っているかを、誰も口にしないようになりました」 同じくバンコクに住む、ふくちゃんという人物も外こもりの間では有名だ。 「ふくちゃんは、資金が底をつき一時期ホームレスにまでなりました。そしてゲストハウスの人の世話になり、ビザの滞在期間の違反で留置所にまで放り込まれ、それでもまだ海外にいる。ただ、今は居酒屋やラーメン屋さんで働いています。過去はともかく、それは立派だなと思います」 ホームレスにまでなった外こもりもいたのだ。しかし貧BPさんはそこまでして外こもりに固執する気はない。 「海外の安宿とはいえ、宿泊してれば毎日シャワーも浴びられます。だからこそ外こもりできているわけですけど、ホームレスになったら汚い格好で路上に寝て、シャワーも浴びられず、食うにも困るわけですよね。私にはそんな気は全くありません」 どのように稼いだのか「知りたい」 安田氏の事件ほどショッキングではなくても、外こもり同士が険悪な雰囲気になることがある。原因は金銭トラブルが多い。 「資産額を口にしなくとも、その人がどれくらいの資産があるかは、滞在期間や雰囲気から分かります。そういう長期外こもりの人と、毎年季節労働で日本に帰らないといけない短期外こもりや、残金少なく先が見えている私のような外こもりとの間には、溝のようなものを感じざるを得ません」 お金の無い方からすれば、どのようにお金を作ったのか、稼いだのかは知りたい情報だし、同時にどうしても妬ましく感じる内容であるのも事実だ。 それくらい、お金にはシビアな面があることは否めない。にもかかわらず、他の外こもりから「お金を貸してくれ」と言われることもある。 「貸し借りは絶対にしない。これが大原則ですね。貸すならあげるつもりで。もしくは、ちょっと外出した際に足りない額をその場で貸すことがあっても、宿に戻ったらすぐに返してもらう。その場で返してもらえないようなら、もう二度と貸さない」 さらには、金銭以外にもトラブルの原因はある。代表的なのは、思想信条や政治観の違いだ。 「単純に、思想傾向が右寄りか左寄りかでも、険悪な感じになることもありますね。特に日韓関係でしょうか」 ただ、韓国人バックパッカーも非常に多い。彼らと接することで、ステレオタイプ的な見方から解放され、逆に親しくなることもあるのだという。 無用なトラブルを避ける「コツ」 トラブル対処法のもとはまだある。海外で日本よりもぐっと身近になるのが「ドラッグ」だ。 「ネットカフェで『おいこれ見ろ』と他の日本人に言われネットニュースを見たら、1ヶ月ほど前に知り合った日本人が成田空港で大麻密輸をしようとして捕まっていて、驚きましたね」 窃盗などの犯罪も多い。もし財布を盗まれたら、まず何がなんでもクレジットカードの停止をしなければならないという。 「すぐにセンターに電話して、止めてもらいます。カード番号なんかわからなくて大丈夫です。旅行保険に入っていれば、警察署に行って盗難届の提出ですね。これをすればある程度、損失が補填されます」 その他、無用のトラブルを避けるためのコツを訊いてみた。 「危ないところには行かない、美味しい話は信用しない。これに尽きると思います。でも、そういう生活をしていれば安全ですけど、つまらない日々になりがちです。たとえば現地人と仲良くなって家に来いと言われる。そういうのを全部断っていたらたしかに安全ですけど、出会いの機会を無くしているとも言えます」 危険な目をかいくぐってきたことで、貧BPさんの「外こもり経験値」は上がっているようだ。 (第9回につづく) 本連載は、外こもりの中でもひときわ異彩を放つ「貧BPの人生オワタ\(^o^)/旅」という大人気ブログの書き手である貧BPさんに取材し、考え方や行動などを再構成し、一つの突き抜けた生き方を提示するもの。けっして働くことを否定する内容ではない。なお、貧BPという名前は、外こもり専用掲示板のハンドルネームに由来する。貧しいバックパッカー、略して貧BPである。 [恵比須半蔵(えびすはんぞう) / ノンフィクションライター]
外こもりと「トラブル」 窃盗、ドラッグから「命の危険」まで…【外こもりのすすめ(8)】
外こもりに衝撃を与えた事件があったのは、2008年のことだ。バンコクに住んでいた『外こもりのススメ―海外のほほん生活』の著者、安田誠さん(本名:棚橋貴秀さん)が、同じ外こもり仲間の日本人2人に殺害されたのだ。
「自分がどれだけ持っているか、誰も口にしなくなった」
安田氏の事件はネットなどでかなり大きく取り上げられたので、詳細はここでは述べない。妬みか、金銭トラブルか。原因は諸説あるそうだ。
貧BPさんは安田氏との面識はない。しかしそのショックは大きいという。
同じくバンコクに住む、ふくちゃんという人物も外こもりの間では有名だ。
ホームレスにまでなった外こもりもいたのだ。しかし貧BPさんはそこまでして外こもりに固執する気はない。
どのように稼いだのか「知りたい」
安田氏の事件ほどショッキングではなくても、外こもり同士が険悪な雰囲気になることがある。原因は金銭トラブルが多い。
お金の無い方からすれば、どのようにお金を作ったのか、稼いだのかは知りたい情報だし、同時にどうしても妬ましく感じる内容であるのも事実だ。
それくらい、お金にはシビアな面があることは否めない。にもかかわらず、他の外こもりから「お金を貸してくれ」と言われることもある。
さらには、金銭以外にもトラブルの原因はある。代表的なのは、思想信条や政治観の違いだ。
ただ、韓国人バックパッカーも非常に多い。彼らと接することで、ステレオタイプ的な見方から解放され、逆に親しくなることもあるのだという。
無用なトラブルを避ける「コツ」
トラブル対処法のもとはまだある。海外で日本よりもぐっと身近になるのが「ドラッグ」だ。
窃盗などの犯罪も多い。もし財布を盗まれたら、まず何がなんでもクレジットカードの停止をしなければならないという。
その他、無用のトラブルを避けるためのコツを訊いてみた。
危険な目をかいくぐってきたことで、貧BPさんの「外こもり経験値」は上がっているようだ。
(第9回につづく)
本連載は、外こもりの中でもひときわ異彩を放つ「貧BPの人生オワタ\(^o^)/旅」という大人気ブログの書き手である貧BPさんに取材し、考え方や行動などを再構成し、一つの突き抜けた生き方を提示するもの。けっして働くことを否定する内容ではない。なお、貧BPという名前は、外こもり専用掲示板のハンドルネームに由来する。貧しいバックパッカー、略して貧BPである。
[恵比須半蔵(えびすはんぞう) / ノンフィクションライター]