iPhone5で日本製部品が急増! 誇るべきか恥じるべきか 2012年10月19日 企業徹底研究 ツイート アップルから待望の新製品「iPhone(アイフォーン)5」が発売された。3日間のグローバル販売台数は500万台。前機種の「iPhone 4S」の1.25倍というハイペースだ。 米調査会社IHSアイサプライの推計によると、iPhone5には多くの日本メーカーによる部品が使われているそうだ。 バッテリーはソニーとTDK、Wi-Fiモジュールは村田製作所、カメラはソニー、フラッシュメモリは東芝、DRAMはエルピーダメモリの製品だという。 液晶パネルはシャープ、韓国のLGエレクトロニクスに加え、ジャパンディスプレイが供給している。ジャパンディスプレイは、ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社を統合し、今年4月に事業を開始した会社だ。 ◇ パナソニックモバイル「高齢化で経営判断ミス犯した」 iPhone 4Sは全世界で1億台以上を販売し、部品市場は1兆円以上と推計されている。iPhone5が日本経済に与える追い風も小さくないだろう。「日本メーカーはもう終わり」「ロクなものを生み出していない」という批判は、誤りだったと言っていい。 ただし、安心するのはまだ早い。これまでアップルは、韓国のサムスン電子から多くの部品の供給を受けていた。 しかし、昨今の特許紛争の影響で「サムスン外し」が起こり、日本メーカーには棚ボタ状態がやってきたに過ぎない。紛争が解決すれば、元に戻ってしまう可能性もある。 なにより、日本メーカーにこれだけ部品供給力があるのにもかかわらず、自分たちの力でiPhoneのような商品を作れないことに対し「恥じるべき」という声も上がっている。 パナソニックモバイルコミュニケーションズの研究部門で働く30代の男性社員は、この原因を「高齢化」と指摘する。 自部門の平均年齢は40代後半で、マネジャークラスは全員50代。経営幹部は、もうすぐ定年の「おじいさんばかり」だ。 「会社の将来性を考えている上層部は皆無で、皆ひたすら現状維持を貫き自分の定年まで(すなわち、あと数年)会社がもてばそれで良いと考えている。当然、年寄りが最新技術や若者の流行についていけるはずもない。そのため世間でiPhoneやAndroidが騒がれ始めた頃、スマホ開発を見送るという致命的経営判断ミスを犯した」 大企業の社員には、健全なエリート意識を持っていただかないと、高い給料が支払われている社会的な意味がない。自分の身の回りの生活だけでなく、国益を考えられる社員がどの程度残っているのだろうか。 ◇ 外資買収直前でも「やりがいを感じる」エルピーダ そういえばDRAMを担当するエルピーダメモリは、もはや日本企業とはいえないのかもしれない。 日立製作所とNECのDRAM事業部門の統合により設立されたNEC日立メモリが前身で、2009年には公的資金が注入されたが経営は改善しなかった。2012年2月に会社更生法適用を申請し、現在は米マイクロンによる買収が予定されている。 それでも社員は、自分の会社が外資に買われることを、あまり気にしていないようにも見える。30代のフィールドエンジニアの男性は、世界の大手企業を顧客とするので商談内容は大きく「やりがいを感じる」と目を輝かせている。 「顧客はスマートフォンやタブレットといった製品を開発、販売しているところが大半ですので、その最先端の製品の開発に携わることができ、面白さもあります。ちなみに、担当顧客に関しては比較的自分の裁量でやらせてもらえるので、自分で考え行動することも可能です」 この社員が、アップルとの商談をまとめてきた可能性もありそうだ。考えてみれば純日本企業を維持できていたとしても、「皆ひたすら現状維持」では退屈なだけだ。社員たちは、自社が外国企業に買収されたことを意外と歓迎しているのかもしれない。 【その他の企業徹底研究の記事はこちら】 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年9月末現在、45万社、20万件の口コミが登録されています。
iPhone5で日本製部品が急増! 誇るべきか恥じるべきか
アップルから待望の新製品「iPhone(アイフォーン)5」が発売された。3日間のグローバル販売台数は500万台。前機種の「iPhone 4S」の1.25倍というハイペースだ。
米調査会社IHSアイサプライの推計によると、iPhone5には多くの日本メーカーによる部品が使われているそうだ。
バッテリーはソニーとTDK、Wi-Fiモジュールは村田製作所、カメラはソニー、フラッシュメモリは東芝、DRAMはエルピーダメモリの製品だという。
液晶パネルはシャープ、韓国のLGエレクトロニクスに加え、ジャパンディスプレイが供給している。ジャパンディスプレイは、ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社を統合し、今年4月に事業を開始した会社だ。
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パナソニックモバイル「高齢化で経営判断ミス犯した」
iPhone 4Sは全世界で1億台以上を販売し、部品市場は1兆円以上と推計されている。iPhone5が日本経済に与える追い風も小さくないだろう。「日本メーカーはもう終わり」「ロクなものを生み出していない」という批判は、誤りだったと言っていい。
ただし、安心するのはまだ早い。これまでアップルは、韓国のサムスン電子から多くの部品の供給を受けていた。
しかし、昨今の特許紛争の影響で「サムスン外し」が起こり、日本メーカーには棚ボタ状態がやってきたに過ぎない。紛争が解決すれば、元に戻ってしまう可能性もある。
なにより、日本メーカーにこれだけ部品供給力があるのにもかかわらず、自分たちの力でiPhoneのような商品を作れないことに対し「恥じるべき」という声も上がっている。
パナソニックモバイルコミュニケーションズの研究部門で働く30代の男性社員は、この原因を「高齢化」と指摘する。
自部門の平均年齢は40代後半で、マネジャークラスは全員50代。経営幹部は、もうすぐ定年の「おじいさんばかり」だ。
「会社の将来性を考えている上層部は皆無で、皆ひたすら現状維持を貫き自分の定年まで(すなわち、あと数年)会社がもてばそれで良いと考えている。当然、年寄りが最新技術や若者の流行についていけるはずもない。そのため世間でiPhoneやAndroidが騒がれ始めた頃、スマホ開発を見送るという致命的経営判断ミスを犯した」
大企業の社員には、健全なエリート意識を持っていただかないと、高い給料が支払われている社会的な意味がない。自分の身の回りの生活だけでなく、国益を考えられる社員がどの程度残っているのだろうか。
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外資買収直前でも「やりがいを感じる」エルピーダ
そういえばDRAMを担当するエルピーダメモリは、もはや日本企業とはいえないのかもしれない。
日立製作所とNECのDRAM事業部門の統合により設立されたNEC日立メモリが前身で、2009年には公的資金が注入されたが経営は改善しなかった。2012年2月に会社更生法適用を申請し、現在は米マイクロンによる買収が予定されている。
それでも社員は、自分の会社が外資に買われることを、あまり気にしていないようにも見える。30代のフィールドエンジニアの男性は、世界の大手企業を顧客とするので商談内容は大きく「やりがいを感じる」と目を輝かせている。
「顧客はスマートフォンやタブレットといった製品を開発、販売しているところが大半ですので、その最先端の製品の開発に携わることができ、面白さもあります。ちなみに、担当顧客に関しては比較的自分の裁量でやらせてもらえるので、自分で考え行動することも可能です」
この社員が、アップルとの商談をまとめてきた可能性もありそうだ。考えてみれば純日本企業を維持できていたとしても、「皆ひたすら現状維持」では退屈なだけだ。社員たちは、自社が外国企業に買収されたことを意外と歓迎しているのかもしれない。
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*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年9月末現在、45万社、20万件の口コミが登録されています。