• 「苦情のメールはベゾスまで」 アマゾン社員は「?」メールに戦々恐々

    アマゾンと言えば今や通販界の巨人だが、2000年に日本に上陸した当初は国内業者ではありえないズサンなサービスで有名だった。

    たとえば初回限定盤CDの予約受付が完了したと連絡が来て安心していたら、後になって「実は在庫がなかった」とメールが来るといったことが多発した。

    その知らせのメールに怒りの抗議を返しても、「この件に関するクレームにはあと2回しかお返事できません」という旨の非情すぎる返事が来たものだった。どうしても入手したいものはアマゾンで注文できないのか、と問うと「そういうことになりますね」というそっけない返事を受け取った人もいた。

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    その意味は「これはいったいどうなっているんだい?」

    担当者では埒が明かないと会社にクレームを入れようにも、サイトのどこを探しても住所も電話番号もメールアドレスも見つからない。まるで「クレーム対応なんて手間やコストのかかることはやりませんよ」と突っぱねるかのような姿勢だった。

    そんなアマゾンも、いまでは日本語サイトの利用規約の下の方に「日本でのお問い合わせ先」と、アマゾンジャパンの代表取締役ジャスパー・チャン氏のメールアドレスが記されるようになった。とはいえ、やはり分かりやすい場所にあるとは言えないが。

    本国アメリカのアマゾンではどうなのか。顧客からの苦情や要望のメールは、実はジェフ・ベゾス会長の元に転送されているらしい。これがいかに社員のプレッシャーになっているかについて、米ビジネスインサイダーが記事にしている。

    彼はメールの内容について「もっともだ」と感じると、メールに「?」の文字を加えて担当者に転送する。たった一文字だけだが、それが含む内容は「おい君、これはいったいどうなっているんだい?」という意味と受け取らざるを得ない。

    このメールを受け取った社員は「狂乱状態」になるという。顧客に状況を説明しトラブルを解決しつつ、原因を調べ、対処法をベゾス氏に報告する必要がある。

    もたもたしていれば、きっと「何をしているんだ!」と催促のメールが届くことだろう。記事ではこの時の社員の様子を「あたかもチクタクとタイマーが鳴る(時限)爆弾を受け取ったかのよう」と表現している。

    「リアルショップ全滅作戦」は進行中か

    記事によれば、ベゾス氏はアマゾンの成功で億万長者になったものの、「顧客に身近な存在でありたい」という思いは変わっていないという。

    仕事がルーチン化すると、顧客からのクレーム対応がマンネリ化しがちだ。ベゾス氏がクレーム処理に関与することで、それが社内できちんと受け止められているか、経営者自身がチェックする仕組みになっているともいえる。

    クレーム対応を別会社にアウトソーシングし、自社の社員を矢面に立たせないようにしている日本企業とは大違いではないだろうか。

    サラリーマンの権力闘争で組織を勝ち上がってきたものの、自社の商品やサービスに対する理解も愛着も全くない経営者たちに、そんなことを望んでも無理だろうか。

    あるブロガーがアマゾンの社員に会社でのミッションを尋ねたところ、

    「世の中にあるリアルショップをすべて無くすこと。それも10年以内に」

    と答えたという。街の小さな書店が姿を消すことは寂しいが、取次からの配本を受け入れているだけの書店は潰れて当然だ。個人資産が2兆円を超える会長が膨大なクレームに目を通すアマゾンが、圧倒的な強さを見せるわけである。

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