食品スーパー再編 ライフとヤオコー提携の成否を社員の声から読む 2012年6月27日 企業徹底研究 ツイート 食品スーパーで売上高が1位のライフコーポレーションと、同7位のヤオコーが業務提携をすると6月15日に発表。スーパー業界関係者を驚かせた。両社の発表によると、業務提携するのは商品の共同開発・仕入れ、資材等の共同調達など6項目。資本提携の考えはないという。 提携は記者発表が行われるまで、両社の管理職クラスさえ知らないトップ同士の極秘交渉だった。記者会見で、ライフの岩崎高治社長は「この5年で小売業は大きく変わるだろう。しっかり協力して、難しい時代を勝ち抜いてゆきたい」と語った。 一方、ヤオコーの川野清巳社長は「小売業を取り巻く環境はますます厳しさを増している。長い間独立でやってきたが、井の中の蛙になっては時代に流されてしまう」と話した。 両社が提携した背景には、人口減少と高齢化が進む中、出店競争が激化。店舗単位の売り上げの低下も歯止めがかからないという、共通の強烈な危機感がある。さらに、業界再編の加速も後押しした。 今回の提携は、ライフ、ヤオコー双方にメリットがある。一部侵食し合っている地域はあるものの、ライフが首都圏と近畿圏、ヤオコーは埼玉県を地盤としており、出店の競合関係がない。そのため、商品・資材調達や物流センター運営の効率化が図れるからだ。 食品スーパーを巡っては、昨年から今年にかけ、北海道の食品スーパー、アークスが青森のユニバースと岩手のジョイナスを相次いで子会社化するなど、食品スーパーの間でもM&A(企業の合併・買収)や提携で生き残りを模索する気運が高まっている。ライフとヤオコーの提携もこの業界の流れの中で生まれている。 「首都圏最強のタッグ」といわれているライフとヤオコーの提携。成功はするのだろうか。キャリコネに寄せられた両社の社員の口コミから探ってみた。 ◇ 経営者意識が高いライフの社員 ライフは1961年に大阪府豊中市で「スーパーマーケット1号店」を開業した食品スーパーの老舗だ。効率的な店舗運営には定評がある。12年2月期の連結売上高は5031億円。 現在は首都圏と近畿圏で合わせて224店を出店する。長期経営計画では首都圏と近畿圏で現在の約2倍の400店舗体制を目指している 同社の社員の口コミを見ると、不満などの内向きの声より、自分なりの経営者的意識を持って会社に意見している外向きの声が多い。食品スーパー業界で首位の自覚が社員の間でも強いためなのだろうか。 例えば、契約社員の20代前半の男性は、ライバルにイオンをあげて、こう述べている。 「当社と比べて格差はないにしろ、サービス面などではやはりイオンより劣る部分がある。(略)ここに勝つためにはどう思うか、どうすべきかを考えるべき」 「売り場を任せてもらえるのでやりがいはある。(略)上司からの圧力もないし、伸び伸びと仕事に打ち込める」と言うのは、契約社員の30代前半男性だ。社員は仕事について、それなりのやりがいを持っているようだ。 ◇ 「社員は使用人」の扱いでしかないヤオコー ライフと対照的に内向き声が目立つのがヤオコーだ。 20代前半の女性社員は、労働時間の長さ、サービス残業の強制、社員定着率の低さなどの不満をこう漏らしている。 「サービス残業がとても多い。朝7時から仕事を始め、長い時は閉店10時まで。残業代はほとんど出ない。(略)新店が続々とできているので人手不足が悪化している。辞める人も多く、体力に自信がないと正直辛いと思う」 ヤオコーは食品スーパーの超優良企業といわれている。2012年3月期の売上高は2373億円。今期は純益ベースで20期連続の最高益更新を見込む、 同社は、パート社員に販売責任を持たせたり、店内で調理実演を行い主婦たちの関心を高め、販売に結びつける独特の経営スタイルが有名。ところが、現場のパート社員は、この方針に満足してはいないようだ。 「頑張った人、結果を残した人に対しての評価をしない。当然だと考えている。ねぎらうと言った考えがない」(パート社員の23歳女性) ヤオコーの口コミを見ると、会社と社員の人間関係は良くはなさそうだ。企業体質がライフと対照的な印象を受ける。 これは「ライフが現代的な企業経営に努めているのに対し、ヤオコーは『八百幸商店』時代からの家業経営から抜け切っていない」と、業界関係者が話していることからも推察できる。ヤオコーにとって、社員はいまだに「川野家の使用人」に過ぎないようだ。 ◇ 「提携は失敗する」との声も 企業体質の提携は、スーパー関係者の間では期待感もあってか「ライフとヤオコーは業務提携から、資本提携まで進むだろう」との声が多い。ところが、証券関係者の間では「提携はご破算になる」と見ている。スーパー業界担当の証券アナリストは、その理由をこう説明する。 「ライフは三菱商事の出資を受け入れ、岩崎氏を社長に招聘(しょうへい)して、三菱商事の『組織経営』を貪欲に取り入れ、大手総合スーパーに対抗できる経営体質に変えた。一方のヤオコーは、オーナー独裁経営。業績は超優良だがオーナーの才覚と社員の頑張りが頼り。企業体質が違いすぎる」。 さらに「提携協議事項についても両社の経営戦略が違いすぎる。これからの本格交渉で互いを知れば知るほど提携意欲は薄れるだろう」と見ている。提携交渉の成り行きが注目される。 *「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年5月末現在、45万社、18万件の口コミが登録されています。
食品スーパー再編 ライフとヤオコー提携の成否を社員の声から読む
食品スーパーで売上高が1位のライフコーポレーションと、同7位のヤオコーが業務提携をすると6月15日に発表。スーパー業界関係者を驚かせた。両社の発表によると、業務提携するのは商品の共同開発・仕入れ、資材等の共同調達など6項目。資本提携の考えはないという。
提携は記者発表が行われるまで、両社の管理職クラスさえ知らないトップ同士の極秘交渉だった。記者会見で、ライフの岩崎高治社長は「この5年で小売業は大きく変わるだろう。しっかり協力して、難しい時代を勝ち抜いてゆきたい」と語った。
一方、ヤオコーの川野清巳社長は「小売業を取り巻く環境はますます厳しさを増している。長い間独立でやってきたが、井の中の蛙になっては時代に流されてしまう」と話した。
両社が提携した背景には、人口減少と高齢化が進む中、出店競争が激化。店舗単位の売り上げの低下も歯止めがかからないという、共通の強烈な危機感がある。さらに、業界再編の加速も後押しした。
今回の提携は、ライフ、ヤオコー双方にメリットがある。一部侵食し合っている地域はあるものの、ライフが首都圏と近畿圏、ヤオコーは埼玉県を地盤としており、出店の競合関係がない。そのため、商品・資材調達や物流センター運営の効率化が図れるからだ。
食品スーパーを巡っては、昨年から今年にかけ、北海道の食品スーパー、アークスが青森のユニバースと岩手のジョイナスを相次いで子会社化するなど、食品スーパーの間でもM&A(企業の合併・買収)や提携で生き残りを模索する気運が高まっている。ライフとヤオコーの提携もこの業界の流れの中で生まれている。
「首都圏最強のタッグ」といわれているライフとヤオコーの提携。成功はするのだろうか。キャリコネに寄せられた両社の社員の口コミから探ってみた。
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経営者意識が高いライフの社員
ライフは1961年に大阪府豊中市で「スーパーマーケット1号店」を開業した食品スーパーの老舗だ。効率的な店舗運営には定評がある。12年2月期の連結売上高は5031億円。
現在は首都圏と近畿圏で合わせて224店を出店する。長期経営計画では首都圏と近畿圏で現在の約2倍の400店舗体制を目指している
同社の社員の口コミを見ると、不満などの内向きの声より、自分なりの経営者的意識を持って会社に意見している外向きの声が多い。食品スーパー業界で首位の自覚が社員の間でも強いためなのだろうか。
例えば、契約社員の20代前半の男性は、ライバルにイオンをあげて、こう述べている。
「当社と比べて格差はないにしろ、サービス面などではやはりイオンより劣る部分がある。(略)ここに勝つためにはどう思うか、どうすべきかを考えるべき」
「売り場を任せてもらえるのでやりがいはある。(略)上司からの圧力もないし、伸び伸びと仕事に打ち込める」と言うのは、契約社員の30代前半男性だ。社員は仕事について、それなりのやりがいを持っているようだ。
◇
「社員は使用人」の扱いでしかないヤオコー
ライフと対照的に内向き声が目立つのがヤオコーだ。
20代前半の女性社員は、労働時間の長さ、サービス残業の強制、社員定着率の低さなどの不満をこう漏らしている。
「サービス残業がとても多い。朝7時から仕事を始め、長い時は閉店10時まで。残業代はほとんど出ない。(略)新店が続々とできているので人手不足が悪化している。辞める人も多く、体力に自信がないと正直辛いと思う」
ヤオコーは食品スーパーの超優良企業といわれている。2012年3月期の売上高は2373億円。今期は純益ベースで20期連続の最高益更新を見込む、
同社は、パート社員に販売責任を持たせたり、店内で調理実演を行い主婦たちの関心を高め、販売に結びつける独特の経営スタイルが有名。ところが、現場のパート社員は、この方針に満足してはいないようだ。
「頑張った人、結果を残した人に対しての評価をしない。当然だと考えている。ねぎらうと言った考えがない」(パート社員の23歳女性)
ヤオコーの口コミを見ると、会社と社員の人間関係は良くはなさそうだ。企業体質がライフと対照的な印象を受ける。
これは「ライフが現代的な企業経営に努めているのに対し、ヤオコーは『八百幸商店』時代からの家業経営から抜け切っていない」と、業界関係者が話していることからも推察できる。ヤオコーにとって、社員はいまだに「川野家の使用人」に過ぎないようだ。
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「提携は失敗する」との声も
企業体質の提携は、スーパー関係者の間では期待感もあってか「ライフとヤオコーは業務提携から、資本提携まで進むだろう」との声が多い。ところが、証券関係者の間では「提携はご破算になる」と見ている。スーパー業界担当の証券アナリストは、その理由をこう説明する。
「ライフは三菱商事の出資を受け入れ、岩崎氏を社長に招聘(しょうへい)して、三菱商事の『組織経営』を貪欲に取り入れ、大手総合スーパーに対抗できる経営体質に変えた。一方のヤオコーは、オーナー独裁経営。業績は超優良だがオーナーの才覚と社員の頑張りが頼り。企業体質が違いすぎる」。
さらに「提携協議事項についても両社の経営戦略が違いすぎる。これからの本格交渉で互いを知れば知るほど提携意欲は薄れるだろう」と見ている。提携交渉の成り行きが注目される。
*「キャリコネ」は、社員が投稿した企業に関する口コミ、年収情報、面接体験などを共有するサイトです。2012年5月末現在、45万社、18万件の口コミが登録されています。