• パナソニック 「津賀改革」に冷ややかな反応 元役員も「反転の材料ない」と落胆

     パナソニックが先月発表した2013~15年度の新中期経営計画は、株式市場で「業績回復への具体策が乏しい」との失望感から翌日の株価は大安売りとなり、一時は前日比8%安の648円まで下げた。

     その後も終値は4月1日が612円、4月8日は711円、4月19日は698円と700円前後で推移、同社の業績回復に対する不信感は市場で止む気配がない。

     新中計は、津賀一宏社長が自信を持って策定したことから「津賀改革」とも呼ばれているが、市場でネガティブの判定を下されてしまった。その内容を簡単におさらいしてみよう。

     12年度に1400億円の見通しの営業利益は、13年度に2500億円、15年度に3500億円以上を目指す。これに向け、赤字事業を止血して1300億円の営業益改善を図ると共に、4月1日から復活させる49事業部に各事業部に5%以上の営業利益率を課していく。

     テレビ、半導体、携帯電話、回路基板、光ドライブ・光ピックアップ事業の「赤字5事業」には、13~14年度の2年間で2500億円の構造改革費用を計上し、15年度に「赤字事業ゼロ」(津賀社長)を目指す。
     
     不採算のプラズマテレビは事業継続を前提に計画を立てたが、「撤退の可能性もある」(津賀社長)。携帯電話も継続が前提で、「事業撤退の安易な選択肢はとらない」と言う。

     また「脱自前主義」による効率化を求め、ヘルスケア事業の医療関連部門には外部資本を導入する計画。13年度末までに血糖値センサ、電子カルテシステム、補聴器などを手掛ける「パナソニックヘルスケア社」の株式一部売却を目指す。

     こうした津賀改革に対し、ある市場関係者は「プラズマテレビを始めとする赤字5事業からの撤退を明言せず、これらに未練を残しているところに津賀改革の中途半端さが見られる」と指摘している。

     一方、記者発表で津賀社長は「大坪社長時代は、大きな設備投資をして大きな事業を作るモデル。私は稼いでから投資するモデルに転換する」と宣言。主戦場も消費者向けから法人向けへ転換すると語り、電動化が進む自動車と、省エネ化が進む住宅を「これからの成長分野」と位置付けたが、どうなるか。

     途中で開発中止になる製品が多数発生?

     ある元役員は「2期連続で7500億円超の赤字計上で膿を出し切り、これから反転と期待していたが、あの津賀改革を見て、実は彼は反転材料を何も持っていないことが分かった。成長戦略は自分の願望を書き連ねただけ」と肩を落としている。

     キャリコネの口コミを見ると、同社が抱えている問題について研究開発の男性社員(30代前半)が、

     「将来の市場の見通しが甘く、途中で開発中止になる製品が多数発生し、お金だけでなく時間的、人的コストにも大きなロスが発生している」

     と明かし、強みを発揮できて確実な収益を稼げる分野以外は「絞りこむ時期にきている」と危機感を募らせている。

     関係者は「津賀社長は社内外のブレーンが集めたデータを頼りに机上で新中計を作るのではなく、こんな時だからこそ現場の社員から集めたデータを元に、汗をかいて新中計を作って欲しかった」と悔しがっている。

     津賀改革の業績回復策は出尽くし感も出てきた。津賀社長は成長戦略も曖昧なままで結果責任が問われる就任2年目に入ろうとしている。

     創業者の孫の松下正幸副会長は、中村邦夫相談役を「経営者が自分勝手な思い込みで経営を壟断(ろうだん。利益や権利を独り占めにすること)し、それが失敗して株主や社員に迷惑をかけた」と暗に批判したと言われている。

     津賀社長は社内の一部で「ミニ中村」と呼ばれているだけに、自らも経営壟断とのそしりを受けることは避けたい。これからは針の筵(むしろ)の1年になりそうだ。

     

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