• 「ダメになった商店街を見てこい」 バブル期に失敗例を視察させた理事長の先見性

    いま日本の商店街の約4割が、空き店舗を10%以上抱える「シャッター商店街」だという。2014年3月27日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、郊外の大型店に客を奪われ危機に瀕しながら、みごと復活させた商店街を紹介していた。

    香川県高松市にある高松丸亀町商店街は、全長470メートル。ルイ・ヴィトンなどの高級店をはじめ約200店舗が立ち並び、休日には1日3万人が訪れる。都市部のショッピングモールのような賑わいだが、一度はシャッター商店街になる危機があった。

    土地の「所有」と「利用」を切り離す策が奏功

    バブル期の瀬戸大橋開通がきっかけで郊外に大型店が多数進出し、一気に客を奪われ商店街は廃れていった。実はこの危機は、丸亀商店街振興組合の前理事長・鹿庭幸男さんによって予見されていた。

    売り上げがピークの頃に、鹿庭さんは商店街の後継者たちにこう指示を出した。

    「丸亀町商店街もいずれダメになる。ダメになった商店街を見てこい」

    オヤジが何を言う、と思いながら電気店の後継者が見たものは、大型店に客を奪われた、全国の廃れ行く商店街の姿だった。何か策をと1000回以上の会議を重ね考えた末、現理事長・古川康造さんは「土地の所有と利用を切り離す」という大胆な策を打ち出す。

    店の土地を将来返すという条件で一定期間借り上げて、商店街全体をバランスよく作り替えるという計画だ。2006年12月壱番街が竣工。その後、売り上げは以前の2倍、通行量は3倍までになった。

    商店街は店であると同時に、2階に住民が住む人の街でもある。しかし丸亀商店街は、バブル景気で地価が沸騰した事で、1000人いた住民が75人になってしまった時期がある。

    そこで、住民を呼び戻すために「定期借地権付きマンション」を建てた。62年後に取り壊されるため普通より4割も安く、同じマンション内に診療所まである。近くにはスーパーを誘致し、道路もバリアフリー完備。1回100円で乗れる「まちバス」も商店街が運営している。

    「需要があれば供給はついてくる」

    こうした環境整備によって、75人だった商店街の住人を約500人に増やし、コミュニティも再生させた。番組編集長の村上龍は、「1000人から1500人の居住者を呼び戻せれば、放っておいてもビジネスは再生する」という古川さんの言葉の意味を問いかけた。

    「これは商売の大原則で、需要があれば供給は必ずついて回るということ。よくあるケースは、先に供給を用意して需要を喚起しようとするが、そうではない」

    今後高齢化で、車が必需品である郊外での生活は困難になる。手近な範囲で必要なものがなんでもあり、高度医療を24時間体制で受けられるのは理想的だ。住民数が増えるのも頷ける。

    はじめは再開発を渋った商店主たち全員を4年かけて説得し、同意を得た。古川さんは「小さいころから一緒に遊んでいたような仲間、コミュニティが残っていたからできた」と話す。これが外部から来たディベロッパーなら、20年かかっていたかもしれないという。

    そうなれば、もう地域のための商店街復活の道はなかっただろう。前理事長・鹿庭さんの先見の明や、古川さんという経営能力のあるリーダーがいたこと、地域のコミュニティが残っていたことが、この商店街にとって何よりの財産だったのだと分かった。(ライター:okei)

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