気楽な独身者も、常に孤独でいたいわけじゃない… 急拡大する「おひとりさま」ビジネス

結婚していない単身者、いわゆる「おひとりさま」が増えている。50歳の独身者の割合は、男性が23.6％、女性14.1％と25年前の3～4倍以上で、今後も増え続けると予測されている。

2014年4月29日の「ガイアの夜明け」（テレビ東京）は、急拡大するおひとりさま市場をねらった、さまざまな取り組みを追っていた。

家電もファミリー向けから「単身者」に使いやすく

増える単身者の世帯

「今までひとり暮らしに冷たかった家電が、ひとり暮らしの味方をしてくれていると最近はとっても感じます」

そう笑顔で話すのは、長年ひとり暮らしを続けているFMラジオパーソナリティーの栗原さん（40歳）。今までファミリー向けだった家電も、ひとり用が続々と売り出されている。

他社に先駆けてこの市場で成功しているのが、社員14人のベンチャー企業ウィナーズだ。累計50万台売り上げた小型ジュースミキサー「ソロブレンダー」をはじめ、トースターやコーヒーメーカーなど、おひとりさま向け商品を次々とヒットさせている。

トースターは二段づくりで、下の段でパンを焼き、上でおかずを作れるなど、コンパクトさに加えて様々な用途や便利さがあるのが特徴だ。

社長の岡野真二さんは、20年前にグラフィックデザインの会社としてウィナーズを創業。2006年から輸入家電の販売を始めたところ、ドイツ製のスタイリッシュな小型ドーナツメーカーが10万台を売り上げた。

今までに日本にない製品がヒットしたことで、「今後コンパクトな市場が開けていく自信を得た」と語る岡野さんは、自らも小型家電の製造販売をスタートさせた。

2010年といえば、世帯数の割合で単身世帯が3割を超えたころのことだ。岡野さんは「今後もひとり向けサイズを中心に展開していくつもりです。この市場はこれからも続いていくと確信していますので」と力強く語っていた。

行きたくても行きにくい「おひとりさまツアー旅行」で成功しているのが、3年前に創業したベンチャー企業トリッピースだ。「ラーメンの名店めぐり日帰りツアー」から「南太平洋の無人島で過ごす」「ラオスで象使いの体験」など、年間600本ものツアーを行っている。

興味深いのは、ツアーのほとんどを利用者自らが企画している点だ。まずは旅行に行きたい人が、トリッピースのサイトで旅行の企画を立ち上げ、参加者を募る。参加する人が一定数以上集まると、トリッピースが旅行会社に依頼してツアーが成立する。キャッチフレーズは「みんなで旅をつくるソーシャル旅行サービス」だ。

参加者は代金を旅行会社に支払い、その一部をトリッピースが受け取る。仕掛け人は24歳の若き社長、石田言行さんだ。

「友達とは行きたい所が合わないことが、結構あると思うんですね。行きたい人が集まって、みんなで旅を作って一緒に行くというのは今までなかった」

初対面でもあらかじめネット上で旅行内容を相談し合うため、ある程度知り合ってから一緒に旅ができるというのも大きなメリットだ。

石田社長は岐阜県・飛騨古川の「起こし太鼓」という祭のツアーを企画していた。ふんどし姿の男たちがぶつかりあう勇壮な祭りで400年の歴史があるが、飛騨高山の陰に隠れあまり知られていない。

これをきっかけに地域が元気になればという思いもあり、石田社長はリピーターをつくるために地元の人たちの協力を仰いでいた。このツアーに参加した30代の女性は、

「地域の輪に入れてもらえたような感覚はすごく楽しいですし　昔ながらのお祭りも体験したことがないので、すごく面白いです」

と語り、ひとり旅では味わえない感動を得ることができたようだ。

トリッピースの利用者は当初20代が多かったそうだが、今は30～40代が増えているという。独身で気楽な生活を楽しむといっても、常に孤独でいたいわけではないというニーズを鋭く捉えたビジネスだ。

それを開拓しているのが、既存の大企業ではなくベンチャー企業というのも興味深い。既婚者でも子が独立し連れ合いが亡くなれば、いずれひとりになる時は来る。今後は独身者に限らず高齢の単身者の需要も増え、市場はますます拡大していくのではないか。（ライター：okei）