• 「日本の飲食ビジネス」は有望な輸出商品 食材から厨房機器、おもてなし精神まで

    海外旅行でおかしな日本食に出会って、思わず笑ってしまったことはないだろうか。2014年5月5日の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、そんな「なんちゃって日本食」が浸透した海外に、本格的な日本食を進出させようとする動きを紹介していた。

    台湾はいま、日本食ブーム。「日本語を入れると高級感が出ます」と台湾人の女性店員が言うとおり、街には日本食でなくても、「の」の字や漢字を入れた店の看板が目立つ。その多くは、どこか台湾風の「なんちゃって日本料理」だ。

    台湾でしゃぶしゃぶ、フィリピンでとんかつブーム

    台湾には小さな巻き寿司を数本まとめて太巻きにするなど、奇想天外なシロモノもあるが、これらを「日式」と呼んで、本格的な日本料理とは別物という考えがあるという。

    台湾の「日式」しゃぶしゃぶは、やや厚い肉を野菜と煮込んで食べる「寄せ鍋風」が根付いている。そこに、日本で300店舗以上を展開するしゃぶしゃぶ専門店「しゃぶしゃぶ温野菜」が海外初出店した。担当者の岡部仁さんは市場を見込み、こだわりをこう語った。

    「市場としては年齢層も広く鍋を食べていて、チャンスは非常にあると思う。おいしいとか店がきれいとか、雰囲気がいいのは当たり前。人対人のサービスを追求して、”日式”じゃなくて日本の専門店を感じてもらいたい」

    店は行列ができる賑わいで、台湾の客たちは初めて食べる本格的なしゃぶしゃぶを満足げに堪能していた。

    また、フィリピンの若者の間では「とんかつ」がブームだという。しかしレストランで出しているのは、肉を薄く叩きのばしたものだ。そんな中、本格的なとんかつで大人気なのが、フィリピン人オーナーの店「YABU」だという。

    トレーニングセンターでは、日本の一流とんかつ職人がフィリピン人スタッフに作り方を教えている。オーナーのジョン・コンセプション氏は、これは今後の発展のためだと語った。

    「日本人に全て任せるのではなく、協力してフィリピン人のスタッフを育成し、日本品質のとんかつを作ることが重要だと思ったんだ」

    調理師学校にも外国人学生が増えた

    YABUはわずか2年半で8店舗に拡大しており、監修の武田和也さんは「フィリピンの客たちに、ちゃんとしたとんかつを伝えられるように」との思いで今後も努めていくという。

    調理学校を卒業後に技術を積む辻調理技術研究所では、最近外国人の学生が増えたという。本格的な実習は手際やおもてなし、衛生管理も学ぶ日本式の厳しいもので、台湾出身の学生は「自分の店を持ってミシュランの三ツ星をとりたい」と目標を語っていた。

    日本政府も今年2月、外国人留学生たちの支援を始めた。いままで外国人が調理学校を卒業後、店で修行したくてもかけだしの料理人には就労ビザがおりなかったが、日本料理店で修行する場合、2年間の滞在延長を認めたのだ。

    農林水産省・外食産業室の山口靖室長は、「日本の料理界でもフランス料理が広がったのは、先人が頑張ったから。現地の外国人が、おいしい日本食を提供していく体制づくりが必要」と見解を語った。

    日本だって「なんちゃって洋食」から始まった

    沸騰ナビケーターの戸田顕司氏(日経レストラン編集長)は、「日本の飲食ビジネスは海外に行くのが必然ともいえる状況」で、和食が広まることで食材や日本酒、厨房機器なども付随して売れ、「食だけにとどまらない展開が今後期待できる」と説明した。

    日本人も、カレーライスやナポリタンなど本場にはない味から外国料理になじんで行ったことを思うと、食文化が伝わる過渡期はこういうものかと興味深い。そもそもとんかつだって、日本流の「洋食」だったはずだ。

    フィリピン人のとんかつ料理人も台湾人の留学生も、一様に真面目に日本食に取り組んでいたのが印象的だった。ただ、東南アジア人をはじめとして、日本人ほど真面目な人材が揃う国は、そう多くないだろう。外国人になじみが薄い手厚いサービス=「おもてなし」を提供するには、そういう国民気質が壁になりそうな気もした。もしかすると、逆に日本人がおおらかさを取り入れることが必要なのかもしれないが。(ライター:okei)

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