• 「女性向け」に「素人お断り」… 差別化で生き残るホームセンターの「熾烈な戦い」

    日曜大工用品や園芸用品、日用雑貨など豊富な品ぞろえで人気を得てきた「ホームセンター」は、今や全国に4500店舗以上ある。店が増えたことによる集客争いが激化し、100円ショップや家電量販店などに押される競合商品も多い。

    2014年5月6日の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、厳しい過当競争の中で他にはない特色を出し、客をつかもうとするホームセンターの生き残り戦略を紹介していた。

    ターゲットを女性客にしぼった「ユニディ」

    ホームセンターが変わるホームセンターが変わる

    ホームセンターの客層は、ふつう男性6割、女性4割だそうだ。しかし首都圏に10店舗を展開するホームセンター「ユニディ」は、あえて30~40代の女性客にターゲットを絞り、ブランド輸入雑貨やおしゃれな調理器具をそろえてライバルとの差別化をはかっている。

    魅力ある品ぞろえを任される女性社員のひとり、バイヤのー尾坂奈津さん(32歳)は、農業大学で造園を学び「人の生活を楽しく、快適にする仕事をしたい」とホームセンターに入社した。

    尾坂さんは、通常は百貨店などに置くブランド輸入雑貨を、ホームセンターへ置くことに渋る代理店をなんとか口説き落として仕入れに成功していた。

    「他のホームセンターには絶対ない商品やサービスとか品ぞろえを、ユニディに来ればありますよ、というふうにお客様に認知していただきたい」

    この戦略は、いままでの客層割合をひっくり返し、売り上げも順調だという。

    「バラエティ」だけでは生き残っていけない

    そのユニディを運営するユニリビングを、メーカーのアイリスオーヤマが今年4月に買収した。本社が仙台市にあり、宮城県内でホームセンターも運営しているが、今回の買収で首都圏進出を果たす。アイリスの大山健太郎社長は、

    「直接、生活者・消費者にアクセスしデータを分析する中で、売れ筋商品やお客さんの反応をリアルに感じていきたいし、それをベースにして”新しいものづくり”に活用していきたい」

    と話す。ユニリビングの社員を集め、「このままだと、全ての企業が生き残るのはなかなか厳しい。新しいホームセンターをつくっていこう」と語りかけていた。

    ユニディとはまた違った路線で差別化を図ろうとする会社もある。埼玉県三郷市にある、リクシルグループ運営の「ビバホーム」は、建設関係のプロ向け商品が充実している。利用する職人は笑いながら、「ここにはなんでもある。無いのは棺桶だけ」というほどだ。

    プロ仕様の工具や資材などのほか、スニーカーに見える安全靴など、職人向けのオリジナル商品開発にも力を入れている。リクシルビバの豆成勝博社長は、ホームセンター業界の危機感をこう語る。

    「リピーターの率はプロの方が高く、一般の方が少し低い。5年10年先を考えた場合には、今のバラエティ(多様な)業態のままだと、非常に混沌とするのではないか」

    「中途半端」を捨てるメリットとリスク

    リクシルは、すでに建設業のプロ向け専門店を拡大させている。会員制で一般のお客様はお断り、という「建デポプロ」だ。

    利用客は、「朝6時半に買って9時には現場で作業が出来る」「子どもが走ったりしていない。他のホームセンターにもあるが、より欲しいものがある」と好評で、仕事上なくてはならないという雰囲気さえ伝わってきた。

    1日の来客数は300人ほどだが、客単価が1万円以上で、1カ月の売り上げは1億円を超える。建デポ・推進統括部の若林均さんは、店のコンセプトをこう話す。

    「一般の方まで入れたり、この事業領域を広げるというのは、結果的に中途半端になるだけ。特化することによって自分たちの強みを出したい。お客さまに評価される店をつくっていきたい」

    ホームセンターの乱立は身近に感じていたものの、ここまで危機的状況とは思っていなかった。安さだけなら、スーパーやドラッグストア、家電量販店に対抗することは難しい。選ばれるためには特色を出さなければならないが、「選択と集中」は外れれば壊滅的な打撃を受ける。

    とはいえ、かつて町の荒物屋が廃れていったように、薄く広くの旧態依然としたホームセンターではいずれ淘汰されてしまうのだろう。(ライター:okei)

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