• 日本の中小企業が「世界のゴミ問題」を救う ボランティアでなくビジネスで担う国際貢献

    「あと10年もすれば、タヒチは大変なことになるんです」

    そう語るのは、タヒチ元大統領のオスカー・テマル氏だ。ハネムーンに大人気の美しい島だが、大量のゴミ処理に頭を悩ませていた。

    2014年5月12日の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、世界中で処理しきれなくなった大量のゴミ問題を、日本の中小企業の技術が救おうとする現場を紹介していた。

    生ゴミを牛に食べさせる町に女性新入社員を派遣

    北九州市は公害を克服した経験を生かし、海外への環境協力を積極的に行ってきた。現在は中小企業の技術力を生かしながら、国際ビジネスへ発展させようとしている。

    北九州市から後押しをされているのが、従業員数100人の西原商事だ。産業廃棄物を資源にリサイクルするエキスパートで、そのノウハウを生かし去年12月インドネシアに進出。スラバヤ市と共にゴミ処理施設である「共同分別場」を運営していた。

    この事業を任されたのが、24歳の女性新入社員、武久詩歩さんだ。武久さんは、会社から否応なくインドネシアに派遣されたワケではない。学生時代インドネシアに留学し、ゴミの問題を目の当たりにした。

    発展著しいインドネシアでは、ゴミの最終処分場に無分別ゴミが毎日1300トン以上集められる。生ゴミを牛に食べさせるために放牧し、「ウエストピッカー」と呼ばれる、ゴミを売って生計を立てる貧困層の人々が資源ゴミを拾い歩く。

    川沿いの地域では川にゴミがたまり、しばしば洪水が起きてしまう。自分に何か出来ないかと思っていた矢先、西原商事のインドネシア進出を知り、入社を希望した。

    「ゴミのせいで洪水が起きているとか、ゴミを触る人の仕事がそこまで仕組み立っていないのをインドネシアで見て、初めてゴミに興味を持って」

    「中小企業の世界進出」が日本の経済戦略に

    武久さんが任されている施設は、ベルトコンベヤーで家庭ゴミを分別、プレス機でゴミを圧縮、生ごみを堆肥処理する施設もある。インドネシアでここまでする企業は初めてだ。

    現地従業員たちは皆、かつてウエストピッカーだった人たちだ。石原商事がリサイクルゴミを大量に回収・分別すれば、彼らの仕事を奪うことになる。そこで会社は、彼らを雇ってしまうことにした。

    元ウエストピッカーだったパティマさんは、「西原商事で働いているおかげで、娘をいい学校にやることができた」と嬉しそうに語っていた。日本の中小企業が、ゴミ処理問題に取り組みながら雇用も生み出していたのだ。

    番組ではこのほか、プラスチックを油に変える技術で世界中から視察や注文が殺到しているブレスト社を紹介。従業員数わずか9人のベンチャー企業にもかかわらず、タヒチやオーロラ観光で有名なカナダのホワイトホースで、地域の人たちと共に美しい環境を守ろうと尽力していた。

    この油化装置は、実は日本の大企業も開発していたが、採算が合わないと見放されていた。沸騰ナビゲーターの山口義行氏(立教大学・経済学部教授)は、「中小企業が自治体を窓口に世界へ進出すること」が、日本の経済戦略のひとつになると解説していた。

    意識の高い若い女性が、はっきりした目的を持って入社し、ボランティアではなくビジネスとして仕組みづくりの一端を担っていることに驚いた。自分の力を役立てたいという思いがあったからこそ、会社も彼女に任せたのだろうし、社長が思い切った判断を下せる中小企業ならではの登用だったのではないだろうか。(ライター:okei)

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