• 「脱中国」でミャンマーと手を組む日本企業 魅力は大きな「消費市場」と「労働市場」

    1988年から23年間にわたって軍事政権が続いていたミャンマーだが、3年前テイン・セイン氏が大統領に就任し、大きく民主化に動いた。そこにはミャンマーと唯一関係を持ってきた、中国に頼り切りの経済を見直す思惑もあるという。

    2014年5月19日の「未来世紀ジパング」は、民主化で急成長するミャンマーへ、日本が官民挙げて進出している現場を取材していた。

    「マックもスタバもない。日本企業が先行できる」

    ミャンマーは2011年、民主化の旗印アウン・サウン・スーチーさんの自宅軟禁が解かれ、アメリカの経済制裁が緩和されたことで、経済が活発になっている。日本企業は進出ラッシュ、この3年間で156社が進出している。

    沸騰ナビケーターの後藤康浩氏(日本経済新聞社編集委員)は、手つかずの消費市場と、大きな労働市場が大きな魅力だと解説した。

    「マクドナルドやスターバックスもない。世界中どこにでもあるヒルトンやシェラトンもまだない。日本企業が先行していくチャンスが大きい。人口が6200万人とかなり大きく、識字率92%。若い労働人口が非常に豊富だから、工場労働者の大供給源になる」

    日本の飲食店進出第一号は、鶏料理専門の居酒屋チェーン「てけてけ」だ。運営会社であるユナイテッド&コレクティプの坂井英也社長は、「ミャンマーのパイはこれから成長していく。その成長市場で勝負してみたい」と意欲を語る。

    現地スタッフの大半は地元レストランの経験者で、「日本企業で働きたい」と転職してきた。担当者の本郷さんは、スタッフたちを評して、

    「すごく真面目で純粋。一生懸命自分で仕事を探してきて、しかも楽しそうにやっているのが僕らはうれしい」

    と満足そうだった。若い人たちの労働意欲が旺盛で希望に満ちている様子が伺える。

    停電、物流… 課題はインフラ整備

    問題は、たびたび起こる停電。急成長する経済に、電力供給が追い付いていないのだ。店側は日本式のおもてなしにこだわり、オープン直前に発電機を設置していた。

    ミャンマーでは、電気・通信・道路整備などのインフラ整備が課題となっている。タイとの国境を隔てる川では、タイ側から小舟を使い白昼堂々と中国製や日本製の洗濯機が密輸されていた。

    950キロの陸上ルートは未開拓ゾーンで、標高1000メートルの山岳地帯は断崖絶壁の難所だらけ。日本通運は、ここに新たな物流ルート開拓を進めている。後藤氏は、タイの7000社を超える日本企業を生かすため、ミャンマーに抜ける物流ルートが絶対必要と解説した。

    「ミャンマーからインド洋に直接アクセスできる。向こうにインド・中東・ヨーロッパという巨大市場が待っているんです」

    日本がODAで200億円もの資金を投じて、ミャンマーと共同開発中の工業団地「ティラワ経済特区」もある。完成すれば、山手線の内側の4割に相当する巨大な工業団地になる。

    軍事政権下で経済制裁を受けていた時代、唯一手を差し伸べていたのが中国だった。しかし中国側が見返りとして、インド洋の海洋進出や天然ガスの取り入れなど、影響力を拡大して支配的な政策を取り始めたため、ミャンマー国内では反発が強まってきたという。

    「中国の恩恵」は事実だけれど

    番組ゲストでミャンマー出身のモデル、ニイナさんは国民感情をこう語った。

    「ミャンマー国内は中国製品がたくさんあって、ミャンマーの人たちの物の豊かさにつながっている事は事実です。しかし、ダムの建設などでちょっと利用されているなという部分は、みんな感じているとは思います」

    このまま中国とだけ付き合っていても、国は発展しない――。テイン・セイン大統領の決断で、「脱中国」が始まったそうだ。中国の人件費上昇や経済環境の悪化で、日本も中国への投資を減らし、新たにミャンマーに注目している。潜在的な成長能力の大きさに、日本の資本や技術が入り込むことでお互いにメリットがあるというわけだ。

    番組では、月収の平均が8000円とされるミャンマーで、高級マンションが次々に売れている様子も伝えており、経済発展とともに貧富の差も激しいのだと分かる。

    ただ、ミャンマーの発展のためと言えば聞こえはいいが、希望に満ちた若い労働力を利用して人件費を安く大量に確保するのかと思うと、労働者の1人として複雑な気持ちだ。「中国の人件費が上昇しているのでミャンマーへ」では、国内雇用の更なる置き去り感は否めないと感じた。(ライター:okei)

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