農協の反発に負けず、零細農家を救う! 「ファームドゥ」創業者の野望 2014年5月29日 ビジネスTVウォッチ ツイート 日本の多くの農業は、農協が価格や流通を決定する。どんなに味に自信があっても、形や大きさで規格外も出るし、まとまった量を作らなければ買い取ってもらえないのが現状だ。 2014年5月22日の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、そんな常識を打ち破り、「農家が喜ぶシステム」を作り上げたファームドゥ創業者・岩井雅之さんを紹介した。 こんにゃく芋を「二束三文で買い叩かれる」原体験 日本の農家は高齢化が進み後継者不足で、農産業はこのままいけば衰退の一途だ。農家が喜ぶシステムが広まれば、若い人や後継者たちが農業に希望を見出せるのではないだろうか。 ファームドゥは、大型ショッピングモールからコンビニ規模の小さな店まで、東京で野菜専門店を次々に出店している。 おもに群馬県内5000軒の契約農家から、早朝採れたての野菜を即日運搬し、開店と同時に売りに出す。鮮度が抜群に良く美味しいと大評判で、野菜は飛ぶように売れていた。番組アシスタントの小池栄子は「地方の産直市場ではなく、なぜ東京なのか?」と質問すると、岩井氏はこう答えた。 「東京は売れるからです。売れなければいくら本気でつくってもダメ。現金収入に直結するということで、東京はいいマーケット」 1954年、群馬県の農家の三男として生まれた岩井氏は、両親の苦労を見て育った。寝る間もなく働き、精魂込めて作ったこんにゃく芋を二束三文で買い叩かれる光景は、まぶたに焼き付いて離れないという。 大学卒業後、地元のホームセンターに入社したが、40歳の時に脱サラし、農業用品店「農援’s(ノウエンズ)」を開店させる。種や農薬、草刈り機などを1カ所で買える店として農家の支持を得た。 ある日、親しい農家に「ここでうちの野菜を売って欲しい」と頼まれたことがきっかけで直売所が開かれ、岩井氏の野菜ビジネスが始まった。 「汗流す農家」が喜ぶシステムを追求 ファームドゥでは農家が価格決定をし、曲がりなどの規格外品でも受け入れる。農協に出荷できる量を作れなくなった高齢・小規模農家でも一定の収入が得られるため、皆一様に「助かってます」と語る。 売りたい地域も選べるため、ある女性は地域ごとの売れ筋データをノートにびっしり書き込み分析。努力のかいあって、収入が80万円を超える月もあるという。当初は農協からの反発はあったものの、 「農家が選択できる余地があった方がいい。彼らが大地を耕さなかったらふるさとがなくなってしまう。相手のいいなりになれば、収入も当然減ってくる。汗流してやっている農家さんが一番大変なんだから」 とポリシーを貫き、農家が喜ぶようなシステムを次々に考え出していった。 MCの村上龍は、自立しきれない中小農家をネットワーク化した岩井氏の発想を「新しい」と評価し、「それでビジネスとして成功しているんだからすごいですよね」と感嘆していた。 したたかな商魂「収入の安定が一番」 いまは、耕作放棄地を農家から借り上げて太陽光発電を行っているが、農家との信頼関係があるから、事がスムーズに運んだのだという。農家には土地の貸料が、ファームドゥには売電収入が入ることに加え、太陽光パネルの陰でも育つフキなどの野菜栽培まで行い、一挙両得の徹底ぶりだ。 さらに、モンゴルで地元企業と共同農場を立ち上げ、野菜作りに着手している。モンゴルで流通している野菜は中国産が中心だが、高品質の野菜に対するニーズは高く、岩井社長は「日本式の安全な野菜を提供できれば、たぶん2倍の値段で売れる」と踏んでいる。 生産者や消費者を喜ばせながら、自身の儲けも確実に押さえている。若い人たちを農業に呼び込むには、「収入を安定して取れるように。それが一番」と語った岩井社長からは、農家の収入安定に対する思いと、したたかな商魂を感じた。(ライター:okei) あわせてよみたい:ビジネスTVウォッチ・バックナンバー
農協の反発に負けず、零細農家を救う! 「ファームドゥ」創業者の野望
日本の多くの農業は、農協が価格や流通を決定する。どんなに味に自信があっても、形や大きさで規格外も出るし、まとまった量を作らなければ買い取ってもらえないのが現状だ。
2014年5月22日の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、そんな常識を打ち破り、「農家が喜ぶシステム」を作り上げたファームドゥ創業者・岩井雅之さんを紹介した。
こんにゃく芋を「二束三文で買い叩かれる」原体験
日本の農家は高齢化が進み後継者不足で、農産業はこのままいけば衰退の一途だ。農家が喜ぶシステムが広まれば、若い人や後継者たちが農業に希望を見出せるのではないだろうか。
ファームドゥは、大型ショッピングモールからコンビニ規模の小さな店まで、東京で野菜専門店を次々に出店している。
おもに群馬県内5000軒の契約農家から、早朝採れたての野菜を即日運搬し、開店と同時に売りに出す。鮮度が抜群に良く美味しいと大評判で、野菜は飛ぶように売れていた。番組アシスタントの小池栄子は「地方の産直市場ではなく、なぜ東京なのか?」と質問すると、岩井氏はこう答えた。
1954年、群馬県の農家の三男として生まれた岩井氏は、両親の苦労を見て育った。寝る間もなく働き、精魂込めて作ったこんにゃく芋を二束三文で買い叩かれる光景は、まぶたに焼き付いて離れないという。
大学卒業後、地元のホームセンターに入社したが、40歳の時に脱サラし、農業用品店「農援’s(ノウエンズ)」を開店させる。種や農薬、草刈り機などを1カ所で買える店として農家の支持を得た。
ある日、親しい農家に「ここでうちの野菜を売って欲しい」と頼まれたことがきっかけで直売所が開かれ、岩井氏の野菜ビジネスが始まった。
「汗流す農家」が喜ぶシステムを追求
ファームドゥでは農家が価格決定をし、曲がりなどの規格外品でも受け入れる。農協に出荷できる量を作れなくなった高齢・小規模農家でも一定の収入が得られるため、皆一様に「助かってます」と語る。
売りたい地域も選べるため、ある女性は地域ごとの売れ筋データをノートにびっしり書き込み分析。努力のかいあって、収入が80万円を超える月もあるという。当初は農協からの反発はあったものの、
とポリシーを貫き、農家が喜ぶようなシステムを次々に考え出していった。
MCの村上龍は、自立しきれない中小農家をネットワーク化した岩井氏の発想を「新しい」と評価し、「それでビジネスとして成功しているんだからすごいですよね」と感嘆していた。
したたかな商魂「収入の安定が一番」
いまは、耕作放棄地を農家から借り上げて太陽光発電を行っているが、農家との信頼関係があるから、事がスムーズに運んだのだという。農家には土地の貸料が、ファームドゥには売電収入が入ることに加え、太陽光パネルの陰でも育つフキなどの野菜栽培まで行い、一挙両得の徹底ぶりだ。
さらに、モンゴルで地元企業と共同農場を立ち上げ、野菜作りに着手している。モンゴルで流通している野菜は中国産が中心だが、高品質の野菜に対するニーズは高く、岩井社長は「日本式の安全な野菜を提供できれば、たぶん2倍の値段で売れる」と踏んでいる。
生産者や消費者を喜ばせながら、自身の儲けも確実に押さえている。若い人たちを農業に呼び込むには、「収入を安定して取れるように。それが一番」と語った岩井社長からは、農家の収入安定に対する思いと、したたかな商魂を感じた。(ライター:okei)
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