• 東京23区はこの10年で人口59万人増 「スーパーの出店激戦区」の裏側

    都心は今、スーパーの出店激戦区になっている。東京は、この10年間で高層マンションが次々と立ち、23区では59万人増えているという。

    住人が増えれば、生活必需品を求める客も増えるということで、「マルエツプチ」やイオン系の「まいばすけっと」などが店舗数を大幅に拡大させている。2014年5月27日(テレビ東京)の「ガイアの夜明け」は、激戦化する都心スーパーの新たな戦略を追っていた。

    シャンパンが飛ぶように売れる六本木の「成城石井」

    輸入食材や自社製の総菜・加工品など独自の品揃えで人気の「成城石井」は、都心の狭い店舗でも売上げを伸ばすノウハウを持っていた。

    菓子・酒・惣菜など8部門に分かれる商品を、地域ごとのニーズに合わせて絞り、選択した品目はコンビニをはるかに上回る豊富な品揃えをする。

    六本木ヒルズ店ではOL向けヘルシー食材や酒類・つまみを充実させており、シャンパンが飛ぶように売れるという。在庫は自社物流センターから店舗発注に応じて少量を毎日配達しているため、バックヤードが狭くても問題ない。

    いま、成城石井は積極的に都心の狭い土地に店舗を拡大しており、売上高はここ5年で約3割増の500億円にのぼる。さらに社長の原昭彦さんが「簡単には真似できないビジネスモデル」と自信をもって話すのが、麻布十番に2013年の暮れオープンした、ワインバー「ル バーラヴァン52」だ。

    成城石井初の外食業態で、2階がレストランで1階がスーパーになっており、食べた料理の食材やワインなどを帰り際に買えるしくみだ。

    サラリーマン風の男性客は、「レストランの前菜で出たチーズがおいしかった」とチーズを購入していた。毎月考案される新メニューは、「客が食べて商品を買いたくなるかどうか」がポイント。これが軌道に乗ればさらに店舗を拡大する予定とのことだ。

    上野の老舗「多慶屋」は若い消費者へ品揃え拡大

    成城石井の原社長は、「他社と大きな差別化を図ることが、自分たちの生命線」と語る。

    「相乗効果でスケールメリットが生きてくる。それを最大限生かすことにより、こういうビジネスモデルを伸ばすチャンスがあるし、それが他社との差別化につながる」

    ところ変わって、上野・御徒町。創業67年の老舗店「多慶屋(たけや)」は、生鮮食品から仏壇まで、何でも揃うディスカウントストアとして人気を博してきた。年間900万人が訪れるが、客層の7割が50代以上で売り上げは20年前をピークに年々減少している。

    危機感を募らせた多慶屋は、この春20~40歳をターゲットにした新店舗をオープンさせた。上野駅から3分の、地下1階から3階まであるセレクトショップだ。

    メインの食品売り場作りを任された菊池佳代さん(29歳)は、若者に受ける手軽で目新しい食材やレトルトカレーなどを取りそろえ、子育て世代がベビーカーで通れるよう、売り場の通路も本店と比べて格段に広くした。

    「今までの多慶屋からの脱却なんです。『今までは、とにかく商品を置いて売り上げが欲しい』だったが、この空間で楽しんでもらって、くつろいで買い物を楽しんでもらいたい」

    とはいえ道は険しく、店に入ってすぐの茶葉コーナーを若い人は素通り。開店一週間後の売上げは20~30代の比率が9.9%と、ターゲットにアピールできているとは言い難い。

    過去を振り切って「脱却」できるかどうか

    多慶屋の菊池さんは、試行錯誤して新しい飲み方「新茶ラテ」を提案し、手軽にラテが作れる調理器具も同時に販売していた。「お客様からのニーズを待つだけではなくて、どんどん新しいものを仕掛けていきたい」と語り、一応の手ごたえはあったようだ。

    コンビニとの競争もあり一層の差別化が求められる中、人気食材店と老舗ディスカウントストアは対照的な取り組み方だと感じた。しかし多慶屋の場合、中若年をターゲットにしていながら入口に高齢者向けの茶葉コーナーというのは、脱却と言いながらまだ振り切れていないものを感じる。

    本店で高齢者を中心に、年間2億円を売り上げる商品を無視できないのだろうか。オフィス街では弁当を入り口付近に配置する成城石井の抜け目なさと比べてしまうと、少し気の毒になる。個人的には老舗の成功体験が、若い発想を妨げていないか気になってしまった。(ライター:okei)

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