• 医療の行き届かない東南アジアで無償診療 日本人医師たちの「驚くべき志の高さ」

    「居心地のいい日本」を出たくない――。グローバル時代にも、そう考える若い人たちは多い。一方で、日本の居心地のよさをもたらす技術やシステムを、発展途上の国々に伝えようとする志の高い日本人もいる。

    2014年5月26日の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、医療の行き届かない東南アジアで、無償で人々を救う医師たちの姿を追った。医師たちを通じた日本医療への信頼が、日本全体に対する信頼につながっていた。

    日本で半月稼ぎ、海外で半月働く「神の手」眼科医

    眼科医の服部匡志さんは、「神の手」を持つと言われるフリーランスの医師だ。通常2時間かかる難しい手術も、40分で成功させる。月のうち2週間は日本全国の病院で乞われた難しい手術を行っている。

    残りの2週間は、ベトナムで医療活動を行っている。しかも、診断や治療のみならず渡航費・滞在費まですべて無償のボランティア。そんな活動を、もう12年も続けているという。服部医師は、さらりとこう語る。

    「患者を救うために日本に連れてくれば、1人100万円かかる。そんなお金、誰にも払えないです。(でも)僕が行って治療すれば、僕の飛行機代くらいで済む」

    服部医師は大学卒業後、眼科の勤務医として働いていたが、2001年、ある学会でベトナム人医師に「たくさんの人が失明している。助けてほしい」と嘆願された。ベトナムでは、医療費を払えないため白内障で失明した人が200万人いるという。

    「1週間ほどベトナムに行きたい」と病院に願い出たが、「病院をやめてから行け」と言われた。そこで本当に病院をやめて日本で半月稼ぎ、あとの半分をベトナムで無償医療する生活を始めたのだ。

    ベトナム最南端の街カマウで、集まった125人の白内障患者の手術を次々と行い、2日間で全員直してしまった。服部医師は「目が見えるようになった」と喜ぶ人たちに囲まれて、心から嬉しそうに笑っていた。

    「なんともいえず、ニヤッとするよね。ありがとうなんて言わなくていいんだよね」

    「悪霊払い」の残るカンボジアへき地で働く

    活動は、ボランティアだけにとどまらない。眼科医師の育成にも力を入れ、内視鏡を使える医師を増やし、ベトナム・ハノイには「日本国際眼科病院」を建設中だ。

    富裕層をターゲットにして稼ぎ、貧しい人々への無償医療を続けて行く。「メガネのミキ」が資金面で協力しており、ベトナム政府(投資計画省)も協力に動き出した。服部医師の献身的な活動が、ベトナムで大きく広がり始めていた。

    医療水準を計る一つの指標である医師密度は、日本だと医師1人あたりの患者数は435人。ベトナムでは863人だが、ミャンマー(1634人)やカンボジア(4405人)は圧倒的な医師不足に悩んでいる。特にカンボジアでは、ポル・ポト政権下の大虐殺で4000人いた医師が40人になったとも言われている。

    「伝統的治療」と称して悪霊払いのまじないをする場所が残るチューンプレイ地区には、医師はおらず、看護師が症状にあった薬を処方するだけ。そんな東南アジアのへき地に即席の診療所をつくり、患者を治療しているのがNPO法人ジャパンハートだ。

    「地域医療の育成」を念頭に置いた活動も

    日本人の医師と看護師が集まり、診療チームと手術チームに分かれて2~3日ずつ医療にあたる。寄付で運営されているこの活動が画期的なのは、ボランティアに参加したい医師が長期の休暇を取らず、気軽に幅広く参加できるシステムをつくったことだ。

    治療や手術には、カンボジア国内で調達可能な機器や薬品を使い、現地の医療を育てる目的もある。ベトナムの眼科医もそうだが、地域医療の育成を念頭においた活動の「驚くべき志の高さ」には頭が下がる。

    日本で医師をしていれば、もっと経済的に豊かな生活を送る方法があるはずだ。医療どころか生活にも困窮している人々を、インフラも整わない中で必死に助けるという経験は、医師として得難い何かがあるということなのだろうか。一部の人たちではあるが、日本の医師の職業倫理の高さを垣間見る思いがして誇らしい。(ライター:okei)

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