• ビジネスと社会貢献は「二者択一」ではない 自然派・サラヤの試行錯誤

    2014年7月3日の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、「ヤシノミ洗剤」で知られるサラヤを紹介した。環境保護ブームもあって業績は右肩上がりに伸びているものの、10年前、ヤシ油の原料が環境破壊を引き起こしているという批判を受ける。

    「自然派」を旗印に掲げる企業にとって致命的なことだったが、それをきっかけに二代目社長の更家悠介氏は新たな環境保護活動に力を入れ始めた。

    衛生分野の「社会問題」を解決してきたが

    公共施設の洗面所で昔から目にする緑色のせっけん液、これはサラヤの創業者・更家章太(現顧問)が、赤痢などが多発していた1952年から、手洗いと同時に殺菌・消毒ができるように開発し日本中に広めたものだ。

    大気汚染が問題となった1960年代には「自動うがい器」をつくり普及させ、水質汚染問題が叫ばれた際には石油系の原料を使わず自然に分解されるヤシノミ洗剤を発売した。O-157や新型インフルエンザの予防のため開発した手指消毒器は、50%のシェアを誇る。

    給食センターの衛生管理や病原菌ごとの予防法講習会を行うなど、「商品+サービス」にも力を入れる。こうして病気予防や衛生分野を中心に、社会問題を解決することでビジネスを成功させてきた。番組司会の村上龍も、こう感嘆していた。

    「サラヤを見ていると、ビジネスと社会貢献は『二者択一』ではないと感じますね」

    しかし、順調な時期ばかりではなかった。2004年、あるテレビ番組の取材で、看板商品のヤシノミ洗剤の原材料であるアブラヤシ農園の拡大が「自然破壊の原因となっている」と指摘された。

    現状を調査するためボルネオ島へ向かうと、アブラヤシのプランテーションの乱開発で、確かに動物たちは住む場所を失い、傷ついていた。

    アブラヤシからとれるパーム油は世界的に需要が高く、植えた分だけ儲かるため、オーナーが自然保護区にまでヤシを植えていたのだ。その時の衝撃を、更家社長はこう語る。

    「ヤシノミ洗剤は環境に良いと信じてやってきたのに、『ダメじゃないか』と言われた。親父がせっかく作ってきたブランドが、私の時にダメになってしまう」

    環境保護運動は「人間の業」との戦い

    更家社長は、素早く行動を起こす。アブラヤシを使う世界の企業全体に呼びかけ、「ボルネオ保全トラスト」というNGOを設立。同時に、熱帯雨林保全活動のためヤシノミ洗剤シリーズの売上を1%寄付すると決めた。

    この基金で土地を買い戻し、ジャングルの再生や、親とはぐれたオラウータンを保護し野生へ返すなどの活動を行っている。村上龍は、ここでもサラヤの手法を称賛した。

    「環境保護団体とヤシ畑農園の対立では、農園主は耳を貸さないが、実際にヤシ油にお金を払っている所が言えば聞く耳を持つ」

    これに更家社長は慢心するのではなく、「まだまだ力が弱い」と語った。

    「もう少し我々が先駆的な例になって全体を進めなければならない。(パーム油は)需要がどんどん伸びているので、儲かることも事実。だからそこに人間の業みたいなところもあり難しいが、頑張ってやっていくしかない」

    日本の衛生環境向上に貢献してきたサラヤは、2010年から衛生環境の悪いアフリカで、衛生環境改善に取り組んでいる。

    ユニセフと共同で手洗い習慣の普及プロジェクトを開始し、2011年には「サラヤイーストアフリカ」という会社を設立。現地の医療機関に消毒液を提供することで、感染症を激減させた。ウガンダでは、5歳までに1割の子供が感染症で亡くなっていた。

    社会貢献は「企業のイメージアップ」ではない

    この消毒液は現地で生産するラインを建設し、低価格での販売を可能にした。サラヤイーストアフリカの宮本和昌社長(32)は、こう語る。

    「継続的にウガンダの衛生改善に貢献しようと思えば、自分たちで(自立して)利益をあげて、ビジネスとして成功させることが大事」

    寄付やボランティアではなく、ビジネスでやることが重要とのことだが、企業イメージアップのために活動しているのではなく、「社会貢献」を基軸に無理なくビジネス展開しているように思える。

    いまどきの若い人たちは「お金儲け」を嫌い、民間企業を辞めてNPOやNGOに参加したがる人も多いという。しかし彼らも、寄付がなければ動けない。自らビジネスとして利益を生み出すしくみを作り出すことが、自らを生かし、事業を継続させ、結局は世の中のためになるということを、こういう会社に学んで欲しいと思う。(ライター:okei)

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