• アジアで「北海道」が大ブーム! 前例主義を破った「仕掛け人」たちの献身

    「日本はどこも素晴らしいけど、中でも北海道は特別だよね」

    そう語るのは、伊勢丹シンガポールで開催されていた「北海道物産展」の男性客だ。並べられている商品は、あくまで北海道産のみ。それでも来場者は11日間で3万人を超えた。

    いま、アジア各国で「北海道」が人気だという。ツアーも大人気で、口コミで北海道の品が飛ぶように売れる。2014年7月7日の「未来世紀ジパング」(テレビ東京)は、このブーム仕掛人の舞台裏を紹介していた。

    自費で往復3200万円の飛行機をチャーター

    シンガポール人の観光客に大人気なのが、北海道をレンタカーでドライブするツアーだ。シンガポールの国土は、東京23区とほぼ同じという狭さ。そこで彼らは、海外に出て行ってドライブを思い切り楽しむのだという。

    これに着目したのが、シンガポールの旅行会社「フォローミージャパン」会長の西村紘一さんだ。2005年、国土交通省北海道開発局から「外国人観光客を増やしたい」との相談を受けて視察に来た西村さんは、駅前で空車タクシーが大行列をつくる光景に愕然とした。

    「シンガポール人は毎年20万人が、オーストラリアやニュージーランドに行ってレンタカーで旅行している。あの集団が来るはずだ。北海道を走らせよう」

    しかし、そこから先が簡単ではなかった。北海道庁や運輸局の反応は冷たく「アジア辺りからわけの分からない人が来て、ドライブして事故でも起こしたらどうするんだ」と許可がでなかったのだ。西村さんはこの時の心境をこう語った。

    「『ばかもん!』とは言わなかったが、これだから日本はダメになるんだ、と」

    西村さんは諦めず、なんと自費で往復3200万円の飛行機1機をチャーターしたという。当時は希少だった英語ナビ付きレンタカーも50台揃え、初回は160人が参加。倒産のリスクを背負いながらの挑戦だった。

    太っ腹北海道庁「金は出すが口は出さない」

    1人あたり35万円からとの旅行代金は安くはないが、この試みが功を奏し、いまや年間2000人が参加する大人気ツアーに成長した。

    経済ジャーナリストの財部誠一氏の解説によると、このツアーは外国人に「日本を自由にドライブしろ」と放り出しているのではなく、出発前に交通安全や日本でのマナーなど、何度も講習会をやっているのだという。

    現地では3台の車からフォローミージャパンのスタッフが見守り、GPSで追いながらも旅行客の自由度を維持しながらコントロール、マネージメントして日本を楽しんでもらっている。凄まじいバックヤードの努力があって成立しているツアーだそうだ。

    フィリピンでも、人気タレントを起用した北海道での旅番組が高視聴率を記録した。北海道庁がスポンサーとなったが、「金は出すが口は出さない」という方針により、フィリピン人スタッフたちが興味を持ったことを題材に番組を制作できた。

    タレントが生まれて初めての雪と戯れるシーンには、2分も使っていたが、フィリピンの人たちにとって興味があることを存分に紹介した結果なのだろう。

    「他の自治体は単なる真似ではダメ」

    西村さんのところへは、日本の各自治体からレンタカーツアーの依頼が殺到しているそうだ。しかし財部氏は、他の自治体も同じことをするのではなく、「地域の付加価値や魅力に合わせて新しいモデルをどう作れるかがポイント」だと指摘した。

    西村さんにしろ北海道庁にしろ、いわゆる「お役所仕事」の限界に挑戦し、それを突破したところが成功していると感じた。リスクを伴うこともあるかもしれないが、真面目に型どおりのことをやっているだけでは立ち行かなくなっていて、いまはこういった姿勢が重要なのだと感じた。(ライター:okei)

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