就職率99%の辻調理師専門学校 労働力でなく「考える戦力」として働ける人材を育てる 2014年8月26日 ビジネスTVウォッチ ツイート 2014年8月21日放送のカンブリア宮殿(テレビ東京)は、即戦力として圧倒的な就職率を誇る日本最大の食の教育機関、辻調理師専門学校の人材づくりの秘密に迫った。 「皆さんがこれから歩んでいくこの技術の世界には、終着点というものがありません」 これは、辻調理師専門学校を運営する辻調(ツジチョウ)グループ代表の辻芳樹氏が、入学式で学生たちに語りかけた言葉だ。 ジュエル・ロブションも「辻調なら間違いない」 辻調グループは、国内からフランスまで14の調理師学校を展開し、13万人の卒業生たちは世界中の飲食店で活躍している。その教育方針は、「自主的に考える戦力」になる人材を育成することだという。 辻調グループの就職率は98.9%と高く、本拠地である大阪市では辻調の学生限定の会社説明会が開かれるほどの人気だ。リーガロイヤルホテル、ディズニーリゾードなど、名だたる有名ホテルの担当者たちが学生の勧誘合戦を繰り広げる。 都内屈指のフランス料理店、ジュエル・ロブションのエグゼクティブ・シェフも「基礎が叩き込まれているので、辻調なら(採用して)間違いない」と言い切る。 どのようにして料理経験のまったくない10代の若者たちが、たった1年で立派な料理人に変貌するのか。それは東京・国立の学生たちが運営するスイーツ店や、フランスの古城を買い取り本場で学べる環境を用意するなど、徹底的な「本物主義」よる。 実習授業では、学生たちが日替わりで、客と料理人の立場を交代しながらシミュレーションする。人の配置から客に出すまでの最適な温度、味や見た目を徹底的に分析し、ディスカッションする。言葉にすることで、先生が教えなくても「学生が気づくような流れ」に教えがあるのだという。 「自主的に考えさせる」ことが一番の教育の目的 辻芳樹代表は、「自主的に考えさせることが、一番の教育の目的」だと語る。村上龍が、「こういう学校ができる前の、何年もかかる徒弟制度も、要は『自分で考えろ』ってことですよね」と共感すると、こう説明した。 「ただ単に言われたことをやって、それがどういう料理につながっていくかを全く考えないで、やみくもに苦労するというのが悪いパターンの組織だと思います。いかに一人ひとりが労働力ではなくて、”考える戦力”として調理場で働いていられるか。そういう人材を作っていきたい」 作れるレシピが豊富なことで満足するのではなく、一流レストランだろうと大衆向けだろうと、料理にこだわりをもってその道に自ら進んでいく人材を育てているのだという。 辻調グループを設立したのは、芳樹氏の父・静雄氏。1960年、読売新聞の記者を辞めて「辻調理師学校」を開いたのが始まりだ。 静雄氏は、本物のフランス料理とは何かを探求し続け、膨大な知識を体系化した「フランス料理研究」というブ厚い本を著す。フランス料理の奥深さを世界に知らしめた功績は、フランス政府から外国人として初めて「最優秀職人賞」を贈られ世界的な評価を得ている。 芳樹氏はいま、国内外を問わず様々な料理シーンで活躍する辻調の卒業生たちを訪ね歩き、カリキュラムづくりに生かすべく話を聞いて回っている。 学生がもっと自主的に勉強するように、最終的には、就職した時点で自分がどういうキャリア、料理を探し当ててその道に自分の人生を捧げたいと思えるまでを、在学中に与えていきたいからだそうだ。 「言われてやる仕事は仕事じゃない」 小池栄子が「お父様は辻さんにとってどういう方でしたか」と質問すると、芳樹氏はしばし言葉につまり、「アメとムチ満載でした」と苦笑いした。 聞けば「考えて食べるということを徹底して教育された」のだという。家族で地方の旅館に行くと「料理人の年齢あてクイズ」を必ずした。200~300人もやっていると、5歳くらいの差違で分かってくる。 「考えないで食べると美味しいものも美味しくなくなる」という芳樹氏は、創業者である父から「教育につながる美食」を徹底的に叩き込まれたようだ。 村上龍が「『アナタはこれが向いているからやりなさい』というのは簡単だが」と水を向けると、芳樹氏は「言われてやる仕事というのは仕事じゃないですから」と真剣な口調で答えていた。 厳しい言葉ではあるが、「教えなくても考えてやれ」と放り出しているのではない。辻調では、学生3500人に対して教職員が530人。実習では1つの教室に必ず4人は教師がつく。大根の皮むきひとつでも、足の構えから徹底して基礎を教え込むのだ。その上で「自主的に学ぶ」ことを基盤に学びが進められる。 いかに明文化して丁寧に教えるとしても、1年で習得できることは限られるが、自分から永続的に学ぶ気持ちとその方法が分かっていれば技術は向上し続けるだろう。自分で自分のキャリアを考えるという事は、意外と難しいものだが、それを重視して教える姿勢に辻調の比類なさを感じた。(ライター:okei) あわせてよみたい:日本の「冷たい」を熱帯アジアに売り込む 最新記事は@kigyo_insiderをフォロー/キャリコネ編集部Facebookに「いいね!」をお願いします
就職率99%の辻調理師専門学校 労働力でなく「考える戦力」として働ける人材を育てる
2014年8月21日放送のカンブリア宮殿(テレビ東京)は、即戦力として圧倒的な就職率を誇る日本最大の食の教育機関、辻調理師専門学校の人材づくりの秘密に迫った。
これは、辻調理師専門学校を運営する辻調(ツジチョウ)グループ代表の辻芳樹氏が、入学式で学生たちに語りかけた言葉だ。
ジュエル・ロブションも「辻調なら間違いない」
辻調グループは、国内からフランスまで14の調理師学校を展開し、13万人の卒業生たちは世界中の飲食店で活躍している。その教育方針は、「自主的に考える戦力」になる人材を育成することだという。
辻調グループの就職率は98.9%と高く、本拠地である大阪市では辻調の学生限定の会社説明会が開かれるほどの人気だ。リーガロイヤルホテル、ディズニーリゾードなど、名だたる有名ホテルの担当者たちが学生の勧誘合戦を繰り広げる。
都内屈指のフランス料理店、ジュエル・ロブションのエグゼクティブ・シェフも「基礎が叩き込まれているので、辻調なら(採用して)間違いない」と言い切る。
どのようにして料理経験のまったくない10代の若者たちが、たった1年で立派な料理人に変貌するのか。それは東京・国立の学生たちが運営するスイーツ店や、フランスの古城を買い取り本場で学べる環境を用意するなど、徹底的な「本物主義」よる。
実習授業では、学生たちが日替わりで、客と料理人の立場を交代しながらシミュレーションする。人の配置から客に出すまでの最適な温度、味や見た目を徹底的に分析し、ディスカッションする。言葉にすることで、先生が教えなくても「学生が気づくような流れ」に教えがあるのだという。
「自主的に考えさせる」ことが一番の教育の目的
辻芳樹代表は、「自主的に考えさせることが、一番の教育の目的」だと語る。村上龍が、「こういう学校ができる前の、何年もかかる徒弟制度も、要は『自分で考えろ』ってことですよね」と共感すると、こう説明した。
作れるレシピが豊富なことで満足するのではなく、一流レストランだろうと大衆向けだろうと、料理にこだわりをもってその道に自ら進んでいく人材を育てているのだという。
辻調グループを設立したのは、芳樹氏の父・静雄氏。1960年、読売新聞の記者を辞めて「辻調理師学校」を開いたのが始まりだ。
静雄氏は、本物のフランス料理とは何かを探求し続け、膨大な知識を体系化した「フランス料理研究」というブ厚い本を著す。フランス料理の奥深さを世界に知らしめた功績は、フランス政府から外国人として初めて「最優秀職人賞」を贈られ世界的な評価を得ている。
芳樹氏はいま、国内外を問わず様々な料理シーンで活躍する辻調の卒業生たちを訪ね歩き、カリキュラムづくりに生かすべく話を聞いて回っている。
学生がもっと自主的に勉強するように、最終的には、就職した時点で自分がどういうキャリア、料理を探し当ててその道に自分の人生を捧げたいと思えるまでを、在学中に与えていきたいからだそうだ。
「言われてやる仕事は仕事じゃない」
小池栄子が「お父様は辻さんにとってどういう方でしたか」と質問すると、芳樹氏はしばし言葉につまり、「アメとムチ満載でした」と苦笑いした。
聞けば「考えて食べるということを徹底して教育された」のだという。家族で地方の旅館に行くと「料理人の年齢あてクイズ」を必ずした。200~300人もやっていると、5歳くらいの差違で分かってくる。
「考えないで食べると美味しいものも美味しくなくなる」という芳樹氏は、創業者である父から「教育につながる美食」を徹底的に叩き込まれたようだ。
村上龍が「『アナタはこれが向いているからやりなさい』というのは簡単だが」と水を向けると、芳樹氏は「言われてやる仕事というのは仕事じゃないですから」と真剣な口調で答えていた。
厳しい言葉ではあるが、「教えなくても考えてやれ」と放り出しているのではない。辻調では、学生3500人に対して教職員が530人。実習では1つの教室に必ず4人は教師がつく。大根の皮むきひとつでも、足の構えから徹底して基礎を教え込むのだ。その上で「自主的に学ぶ」ことを基盤に学びが進められる。
いかに明文化して丁寧に教えるとしても、1年で習得できることは限られるが、自分から永続的に学ぶ気持ちとその方法が分かっていれば技術は向上し続けるだろう。自分で自分のキャリアを考えるという事は、意外と難しいものだが、それを重視して教える姿勢に辻調の比類なさを感じた。(ライター:okei)
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