• 落合新GMが選手を「完全掌握」 大減俸飲ませる「交渉術」とは

    プロ野球・中日ドラゴンズのゼネラル・マネージャー(GM)に就任した落合博満元監督が、選手らに軒並み大胆な減俸を行い、その「オレ流」手腕に注目が集まっている。

    中日の年俸交渉は5日、名古屋の球団事務所でスタート。12年ぶりのBクラスに転落し、観客動員数も18年ぶりに200万人を下回った中日。落合GMは「責任はみんなにある」と明言。選手たちにも次々と厳しい評価をつきつけた。  

    現実のひどさを認めさせ「勝てば上がる」と約束

    今季振るわなかった荒木雅博内野手は、野球協約で定められた減額制限いっぱいの40%減の1億2000万円で契約を更新。4番の和田一浩外野手も8000万円減の2億5000万円でサインした。

    年俸1億円未満の選手にも容赦はなく、小田幸平捕手が900万円減、山本昌投手が2000万円減と次々と減俸。80%を超える減俸を提示されたと見られる井端弘和内野手が退団する騒ぎもあったが、主要選手含め多くの選手が厳しい条件を飲んだようだ(金額は推定)。

    ただ選手からは、意外なほど納得の声が出ている。

    「今年のチームの成績と自分の成績を考えれば納得しています」(荒木内野手)
    「やってやろうという反骨心が芽生えた」(吉見一起投手)
    「十分評価してもらってると思います」(和田一浩外野手)

    企業では大幅な給与削減をすると、従業員から不満の声が出るのが普通だ。落合GMはどのような方法で選手に減俸を提示し、納得させたのだろうか。GMのコメントには、徹底した「信賞必罰」の姿勢が現れている。

    「(中日は今季)何位だったの? 勝てば当然上がる。でも下がる時は下がる。間違った評価はしていない。受け止めて来年頑張ればいいだけ」

    組織論が専門の太田肇・同志社大学教授も、落合GMの采配に注目している一人だ。「いつも客観的であることに徹底していて、ぶれない」と評価する。

    「とにかく私情を挟まない。さらに見る目もあるので、選手としては減俸を提示されても『落合さんが言うのだから』と納得するしかないのでしょう」  

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    勝利にこだわり、必要な手段を貫く姿勢

    2004年から11年まで監督を務めたときは、生え抜き選手の優遇などチームの慣習を徹底的に排除して勝ちにこだわり、すべての年でAクラス入り、4度のリーグ優勝に導いた。

    その一方で、勝ちにこだわるワンマンな姿勢が、旧態依然としたフロントに嫌われ、生え抜きの高木守道氏に監督を譲ることに。しかし下馬評どおり、チームの成績は下降線をたどり、12年ぶりのBクラスに転落した。

    落合GMは内心「だから年功序列の仲良しクラブじゃ、プロはダメなんだって」と呆れていたに違いない。太田教授も目標は勝利であることにこだわり、必要な手段を徹底的に客観視して組み立て筋を通すから、選手は受け入れざるをえなくなるという。

    ただし落合GMは、選手に対しては個別にフォローすることも忘れない。小田捕手は交渉の席につくやいなや、GMから「(来季も)必要だ」と言われ、「その一言でどんな額でもサインしようと思った」。今季成績がいまいちだった荒木内野手は、「まだまだできるんだから、しっかりやれ!」と激励の言葉を送られたという。

    雇用や待遇の「安定」や「安心感」ばかり追求して、会社を傾かせてしまった大手企業の社員や労働組合、経営者たちは、今季のドラゴンズの成れの果てをどう見たのだろうか。

    「いやいや、年俸を何億も貰う野球選手と、サラリーマンを一緒にするなよ」と本気で思っているのなら、プロフェッショナル精神の欠如がもたらす結果は明らかだ。

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