年金受給「70歳」に引き上げか? 社会保障費「手詰まり」の懐事情 2014年5月7日 キャリコネ調査班 ツイート 読売新聞は5月7日、政府の経済財政諮問会議が「70歳までを働く人と位置づける」と提言していると報じた。これによって、年金の受給開始年齢が70歳に引き上げられる可能性が出てきた。 この提言は、4月21日に開催された同会議の有識者による「選択する未来」委員会の第6回会合において、中間整理として議論されたものだ。 高齢者は70歳まで働く。女性は出生率を増やす 「このまま何もしないと、2060年には1.2人で1人の高齢者を支えるという、現役世代の負担が非常に重くなるということになる」 内閣府幹部の羽深成樹氏は、議事録でこう危機感を募らせている。2014年の段階では、1人の高齢者を現役世代2.6人で支えているが、46年後には負担が倍以上になってしまう。 7564万人いる「現役世代(20~64歳)」も、2060年には4105万人まで減り、高齢者(65歳以上)は2948万人から3464万人に増える。これでは現在の社会保障のモデルでは到底立ち行かなくなる。 そこで、70歳になるまでは「現役世代」として働いてもらうことで、70歳以上の高齢者を支えてもらおうというのだ。これを前提に試算すると、合計特殊出生率が現在のまま(1.35~1.40程度)でも「1.6人に1人」で高齢者を支えることが可能になる。 加えて、もしも合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の平均数)が、2030年までに内閣府「少子化危機突破タスクフォース」が目標とする2.07にまで回復すれば、「1.9人に1人」にまで軽減する。とはいえ、負担は決して軽いものではない。 「死ぬまで働けということか?」と批判もあるが しかし、この提言にはネットで批判も多い。そのほとんどは「年金がもらえない」「死ぬまで働かなければならない」ことに対する諦めの声だ。 「女も働け、ジジババも死ぬまで働けって!! 子ども育てる人どこにもいない」 「政府は『働いているなら年金いらないよね?』と『死ぬまで働いてください』をセットにして切り抜ける気マンマンだな」 「現行の納付、支給ベースで考えた場合、79歳まで生きてないと年金の元が取れない。平均寿命を勘案すると死ぬまで働き続けなけばならない」 とはいえ、この「定年70歳」が即実施されることになれば、当面のターゲットとなるのは、現在65歳から67歳に達しようとする「団塊の世代」だ。まずは彼らに社会保障の受益を先送りしてもらうことは、若いネットユーザーにも悪くない話ではないのか。 もしもこのような取り組みを避ければ、国の財政や社会保障システムは、より悪化することは目に見えている。特に、団塊世代の高齢化によって、医療・介護分野の支出は急速に伸びることが予想される。 内閣府の推計によると、2012年度の社会保障給付費は109.5兆円。これが2025年度になると、148.9兆円にまで膨らむ。中でも医療・介護分野の支出は43.5兆円から73.8兆円と、約1.7倍に伸びてしまう。 消費税が「62.8%」になってもいいのか もちろん、社会保障の給付カットに強硬に反対する人もいる。しかしその場合には、何らかの形で税収アップを図る必要がある。 早稲田大学教授の原田泰氏の推計によると、2060年度には社会保障給付費が対GDP比で53.5%にまで達し、これを消費増税で賄おうとすると、税率は62.8%にまで膨れ上がるという。 要するに、現在の社会保障を維持するために必要なお金を増税のみで賄うのは、事実上不可能であり、給付カットと増税の両方が必要になるということだ。 海外では、同じ状況が起こっている先進国もある。5月2日にはオーストラリアが、財政悪化を理由に年金支給開始年齢を「65歳から70歳に引き上げる」としている。実施は2035年の予定だ。果たして、日本もそれまで待てるのだろうか。 あわせてよみたい:NHKが「社会保障は風俗に敗北した」と警鐘
年金受給「70歳」に引き上げか? 社会保障費「手詰まり」の懐事情
読売新聞は5月7日、政府の経済財政諮問会議が「70歳までを働く人と位置づける」と提言していると報じた。これによって、年金の受給開始年齢が70歳に引き上げられる可能性が出てきた。
この提言は、4月21日に開催された同会議の有識者による「選択する未来」委員会の第6回会合において、中間整理として議論されたものだ。
高齢者は70歳まで働く。女性は出生率を増やす
内閣府幹部の羽深成樹氏は、議事録でこう危機感を募らせている。2014年の段階では、1人の高齢者を現役世代2.6人で支えているが、46年後には負担が倍以上になってしまう。
7564万人いる「現役世代(20~64歳)」も、2060年には4105万人まで減り、高齢者(65歳以上)は2948万人から3464万人に増える。これでは現在の社会保障のモデルでは到底立ち行かなくなる。
そこで、70歳になるまでは「現役世代」として働いてもらうことで、70歳以上の高齢者を支えてもらおうというのだ。これを前提に試算すると、合計特殊出生率が現在のまま(1.35~1.40程度)でも「1.6人に1人」で高齢者を支えることが可能になる。
加えて、もしも合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の平均数)が、2030年までに内閣府「少子化危機突破タスクフォース」が目標とする2.07にまで回復すれば、「1.9人に1人」にまで軽減する。とはいえ、負担は決して軽いものではない。
「死ぬまで働けということか?」と批判もあるが
しかし、この提言にはネットで批判も多い。そのほとんどは「年金がもらえない」「死ぬまで働かなければならない」ことに対する諦めの声だ。
とはいえ、この「定年70歳」が即実施されることになれば、当面のターゲットとなるのは、現在65歳から67歳に達しようとする「団塊の世代」だ。まずは彼らに社会保障の受益を先送りしてもらうことは、若いネットユーザーにも悪くない話ではないのか。
もしもこのような取り組みを避ければ、国の財政や社会保障システムは、より悪化することは目に見えている。特に、団塊世代の高齢化によって、医療・介護分野の支出は急速に伸びることが予想される。
内閣府の推計によると、2012年度の社会保障給付費は109.5兆円。これが2025年度になると、148.9兆円にまで膨らむ。中でも医療・介護分野の支出は43.5兆円から73.8兆円と、約1.7倍に伸びてしまう。
消費税が「62.8%」になってもいいのか
もちろん、社会保障の給付カットに強硬に反対する人もいる。しかしその場合には、何らかの形で税収アップを図る必要がある。
早稲田大学教授の原田泰氏の推計によると、2060年度には社会保障給付費が対GDP比で53.5%にまで達し、これを消費増税で賄おうとすると、税率は62.8%にまで膨れ上がるという。
要するに、現在の社会保障を維持するために必要なお金を増税のみで賄うのは、事実上不可能であり、給付カットと増税の両方が必要になるということだ。
海外では、同じ状況が起こっている先進国もある。5月2日にはオーストラリアが、財政悪化を理由に年金支給開始年齢を「65歳から70歳に引き上げる」としている。実施は2035年の予定だ。果たして、日本もそれまで待てるのだろうか。
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