株主総会は「ジジイのガス抜き」なのか 各社で「お騒がせ質問」相次ぐ 2014年7月1日 キャリコネ調査班 ツイート 日本証券業協会の2013年調査によると、個人投資家の74.5%は50代以上。過半数が60歳以上のシニア層で、65歳以上が38.7%もいる。 そんな個人投資家たちが年に一度、色めき立つ場が「株主総会」だ。何か一言「モノ申したい」という株主たちが集まり、経営陣に質問を投げかける。そんな様子がマスコミで多く報道されている。 ホンダ総会「本田選手をCMに使って」 「ロボットをもうやっていないのは残念。カメラよりロボットがほしい」 「コミュニケーション機能を持ったロボットの原型はソニーではなかったか」 株主からこんな声が飛んだのは、約1300億円の赤字にあえぐソニーだ。去年まで配っていたお土産も廃止し、株主からは不満の声が相次いだ。 経営不振にヤジが飛び、退場させられる株主もいる荒れた総会になった。そんな中での「ロボット発言」を、ウォール・ストリート・ジャーナルはこう評する。 「年配の株主たちは、ウォークマンやトリニトロンテレビのような象徴的で記憶に残る製品を、ソニーが再び創り出してくれると期待している」 しかしソニーは「リストラ断行中」で、短期的勝算なくしてロボット事業に投資する余裕はない。年配株主の郷愁だけで、経営を動かすわけにはいかないだろう。 5000億円以上の黒字と好調のホンダでも、夢見がちな質問が相次いだ。創業者の故・本田宗一郎氏は航空機事業への参入が悲願だったが、株主からもこんな要望が出た。 「空飛ぶ車を作ってほしい」 池史彦会長はこの質問に「ご意見として承ります」と答えるにとどめた。さらに他の株主からは、「サッカーの本田(圭佑)選手をCMに使ってほしい」とダジャレのような質問も出たという。 「お食事券」に2万人以上が長蛇の列 さらにホンダの年配の株主からは、昨今の国際関係を反映して「中国への投資を控えてほしい」という質問もあったという。 中国や韓国をめぐる質問は三菱重工の総会でも見られ、戦時徴用をめぐる訴訟で韓国の裁判所が賠償金の支払いを命じる判決を出したことに質問が相次ぎ、「賠償金は支払わないでほしい」との声もあがったという。 ツイッターでは、外食チェーンを運営するコロワイドの総会で「長蛇の列」ができていることが話題になった。議決権行使書枚数分のお食事券(3000円分)とクッキー詰め合わせ欲しさに、2万人以上の人が集まったという。 一方、優待やお土産に満足できない任天堂の株主からは、「株主優待についてだが、ゲーム機とは言わないがソフトが欲しい」という注文が出たと、ゲーム業界に詳しいサイト(まこなこ)が報告している。ここまで来ると「おねだり」に近いが、君島達己常務取締役は真摯に回答する。 「ピカチュウのクッキーとスーパーマリオのバスタオルをお土産として用意している。株主優待はせず、配当で対応する。ソフトは既に持っている人には喜んでもらえない」 こうした「おねだり」は、球団を所有している企業の総会でも多く見られる。スワローズを有するヤクルトの総会では、株主から異例の提案があった。 「低迷を続けるヤクルト(球団)のファンのためにも、キューバの有望選手を獲得してほしい」 阪神株主「カネでチームを作るのはやめて」 この注文に衣笠剛球団社長は、今夏に職員を派遣し、来季以降の選手獲得に向けて動くことを公言した。一方、タイガースを有する阪急阪神ホールディングスの株主の注文は辛らつだ。 総会が開催されたのはセ・パ交流戦の最中で、タイガースは最下位。株主からは、こんな質問が相次いだという。 「カネでチームを作るのはやめてほしい。大リーグで使われなくなった選手を巨額の費用で買いあさるのではなく、ぜひ自前の選手を育ててほしい」 これに南信男球団社長は「やみくもに補強しないが、実際に負けが込むとお叱りを受ける。勝ちながら、育てることが必要」とかわしたが、その後ヤンキース3Aに所属していた建山義紀投手の獲得を発表した。 総会の情報に詳しい「株主総会に行こうブログ」では、総会の意味について、 「議案を内定した段階で主要株主に根回しし、賛否を確認している。ですから株主に招集通知を発送する前には、ほぼ可決されることが決まっているのが実態」 と書いている。株主総会の発言は、大株主でなければ大勢に影響がないということだろう。だがそれでも、個人株主に嫌われたくない企業は、高齢者の「ガス抜き」の場を設けていくしかない。 あわせてよみたい:ワタミ、ゼンショーの「ブラック株主総会?」の様子は・・・ 最新記事は@kigyo_insiderをフォロー/キャリコネ編集部Facebookに「いいね!」をお願いします
株主総会は「ジジイのガス抜き」なのか 各社で「お騒がせ質問」相次ぐ
日本証券業協会の2013年調査によると、個人投資家の74.5%は50代以上。過半数が60歳以上のシニア層で、65歳以上が38.7%もいる。
そんな個人投資家たちが年に一度、色めき立つ場が「株主総会」だ。何か一言「モノ申したい」という株主たちが集まり、経営陣に質問を投げかける。そんな様子がマスコミで多く報道されている。
ホンダ総会「本田選手をCMに使って」
株主からこんな声が飛んだのは、約1300億円の赤字にあえぐソニーだ。去年まで配っていたお土産も廃止し、株主からは不満の声が相次いだ。
経営不振にヤジが飛び、退場させられる株主もいる荒れた総会になった。そんな中での「ロボット発言」を、ウォール・ストリート・ジャーナルはこう評する。
しかしソニーは「リストラ断行中」で、短期的勝算なくしてロボット事業に投資する余裕はない。年配株主の郷愁だけで、経営を動かすわけにはいかないだろう。
5000億円以上の黒字と好調のホンダでも、夢見がちな質問が相次いだ。創業者の故・本田宗一郎氏は航空機事業への参入が悲願だったが、株主からもこんな要望が出た。
池史彦会長はこの質問に「ご意見として承ります」と答えるにとどめた。さらに他の株主からは、「サッカーの本田(圭佑)選手をCMに使ってほしい」とダジャレのような質問も出たという。
「お食事券」に2万人以上が長蛇の列
さらにホンダの年配の株主からは、昨今の国際関係を反映して「中国への投資を控えてほしい」という質問もあったという。
中国や韓国をめぐる質問は三菱重工の総会でも見られ、戦時徴用をめぐる訴訟で韓国の裁判所が賠償金の支払いを命じる判決を出したことに質問が相次ぎ、「賠償金は支払わないでほしい」との声もあがったという。
ツイッターでは、外食チェーンを運営するコロワイドの総会で「長蛇の列」ができていることが話題になった。議決権行使書枚数分のお食事券(3000円分)とクッキー詰め合わせ欲しさに、2万人以上の人が集まったという。
一方、優待やお土産に満足できない任天堂の株主からは、「株主優待についてだが、ゲーム機とは言わないがソフトが欲しい」という注文が出たと、ゲーム業界に詳しいサイト(まこなこ)が報告している。ここまで来ると「おねだり」に近いが、君島達己常務取締役は真摯に回答する。
こうした「おねだり」は、球団を所有している企業の総会でも多く見られる。スワローズを有するヤクルトの総会では、株主から異例の提案があった。
阪神株主「カネでチームを作るのはやめて」
この注文に衣笠剛球団社長は、今夏に職員を派遣し、来季以降の選手獲得に向けて動くことを公言した。一方、タイガースを有する阪急阪神ホールディングスの株主の注文は辛らつだ。
総会が開催されたのはセ・パ交流戦の最中で、タイガースは最下位。株主からは、こんな質問が相次いだという。
これに南信男球団社長は「やみくもに補強しないが、実際に負けが込むとお叱りを受ける。勝ちながら、育てることが必要」とかわしたが、その後ヤンキース3Aに所属していた建山義紀投手の獲得を発表した。
総会の情報に詳しい「株主総会に行こうブログ」では、総会の意味について、
と書いている。株主総会の発言は、大株主でなければ大勢に影響がないということだろう。だがそれでも、個人株主に嫌われたくない企業は、高齢者の「ガス抜き」の場を設けていくしかない。
あわせてよみたい:ワタミ、ゼンショーの「ブラック株主総会?」の様子は・・・
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