「地方銀行」の就活生人気は風前の灯か 金融庁が「将来性なさそう」と言及 2014年7月8日 キャリコネ調査班 ツイート 学生の就職先として人気の地方銀行に、気になる動きがある。地銀のビジネスモデルについて、金融庁が「中長期的には成立しない可能性がある」と言及したのだ。 従来の地銀の収益基盤は、地元の中小企業などに資金を貸し出して利益を得る「貸出資金利益」が中心だが、これだけではとても将来性があるとはいえないのだという。 地域の「生産年齢人口の減少」が大打撃 経営が安定している、遠方への異動がない、などの理由で、地銀を魅力的な就職先と捉える就活生は少なくない。特に地元志向が高く、「ブラック企業」への就職を恐れる学生からは、「地銀に入ればとりあえず安心」と評があるそうだ。 実際、給与や福利厚生、休暇などの待遇に恵まれた人もいるようだ。2011年には2ちゃんねるに、「入行5年目」で法人融資を担当すると自称する人のスレッドが立った。月の給与は額面で約35万円、賞与は年2回で70~80万円程度だという。 駅10分の3LDKの社宅に月7000円で住め、駐車場も4000円。定時は17時でサービス残業はなく、5分単位で残業代がつく。ノルマはあるが、パワハラ指導などはない。 土日祝日の出社はなく、唯一問題があるとすれば「有給休暇を年10日程度しか消化できないこと」。離職率は低く、総合職の同期は60人中50人が残っている。3年で半分辞めると言われる大手IT企業とは大きな違いだ。 しかしそんな恵まれた待遇も、今後は維持できないかもしれない。地銀全体の貸出資金利益は、2010年3月期の3.6兆円から右肩下がりが続き、14年3月期には3.2兆円。今後の高齢化や生産年齢人口の減少によって、ますます減ると見られている。 金融庁の資料によると、地域の「企業向け貸出残高」と「生産年齢人口」との間には高い相関関係が見られ、この傾向が続けば、2012~25年の間に貸出残高を10%以上減らす都道府県は34、うち20%以上減らすところが3つもあると試算されている。 関係者「トップダウンの再編が行われる」 このような予測の下、金融庁は地銀を対象とした2014年度のモニタリングを「現行のビジネスモデルに中長期的な持続性があるか」「業務の収益性について十分な管理を行っているか」といった点を重点的に行い、経営実態を把握していくとしている。 しかし関係者によると、これは表向きの言葉であり、実際には金融庁は「地銀の大再編」をトップダウンで行っていく意向をすでに固めているという。 「そもそもエリート意識の高い金融庁は、自分たちが地銀の経営をトップダウンでコントロールできるものと考えています。今回の方針提示も、経営が危なさそうな地銀に立入調査して半ば強制的に再編しますよ、という宣言と理解していいでしょう」 ロイターは、すでに1月中旬に地銀・第二地銀との会合で、畑中金融庁長官が「業務提携、経営統合を経営課題として考えていただきたい」と異例の発言をしたと報じている。 地銀によっては、この流れを先取りしているところもある。2006年には、もみじ銀行(もみじホールディングス、広島県)と山口銀行が経営統合し、山口フィナンシャルグループを創設。2011年に福岡県内の山口銀行を「北九州銀行」に名称変更し、3県をまたぐグループを展開している。 若手行員には「年功序列」のメリットはない このような再編待ったなしの地銀で働いている人は、いま何を考えているのか。キャリコネの口コミを見ると、「安定イメージ」が過去のものになったかのような厳しい状況を告発する書き込みも目に付く。 「貸出資金利益」の伸長を維持するために、地銀はターゲットを法人から個人にシフトするが、そう簡単に成果は上がらない。20代後半の地銀勤務の女性は、後輩の女子就活生に対して「人事は楽な印象の説明しかしない」と注意を呼びかけている。 「リテール営業をしているが、ノルマが激しい。女子にもがっつり無理目な数字が貼られ、進捗が進んでいない人は名指しで詰められ、夜20時まで電話セールス。法人営業でメガバンクに負け収益が稼げない分、個人営業で稼ぐしかない」 また、20代後半の地銀勤務の男性からは、職場には高齢の社員が居座り、経営が硬直化しているという書き込みも寄せられている。 「収益性が著しく低い。退職間近の高齢者が多く、経営側もリストラする気が全くない。団塊が人件費の大半を食っている」 年功序列の組織は安心できる、というのは、組織が成長していた過去の話。収益性の低い組織では、働かない中高年に高い給料を払うための「言い訳」に成り下がっている。先輩たちの給料を稼ぐために、若い社員たちは低い給与で高いノルマ達成を要求される可能性が高い。 キャリコネの口コミで「銀行業」を検索してみる 最新記事は@kigyo_insiderをフォロー/キャリコネ編集部Facebookに「いいね!」をお願いします
「地方銀行」の就活生人気は風前の灯か 金融庁が「将来性なさそう」と言及
学生の就職先として人気の地方銀行に、気になる動きがある。地銀のビジネスモデルについて、金融庁が「中長期的には成立しない可能性がある」と言及したのだ。
従来の地銀の収益基盤は、地元の中小企業などに資金を貸し出して利益を得る「貸出資金利益」が中心だが、これだけではとても将来性があるとはいえないのだという。
地域の「生産年齢人口の減少」が大打撃
経営が安定している、遠方への異動がない、などの理由で、地銀を魅力的な就職先と捉える就活生は少なくない。特に地元志向が高く、「ブラック企業」への就職を恐れる学生からは、「地銀に入ればとりあえず安心」と評があるそうだ。
実際、給与や福利厚生、休暇などの待遇に恵まれた人もいるようだ。2011年には2ちゃんねるに、「入行5年目」で法人融資を担当すると自称する人のスレッドが立った。月の給与は額面で約35万円、賞与は年2回で70~80万円程度だという。
駅10分の3LDKの社宅に月7000円で住め、駐車場も4000円。定時は17時でサービス残業はなく、5分単位で残業代がつく。ノルマはあるが、パワハラ指導などはない。
土日祝日の出社はなく、唯一問題があるとすれば「有給休暇を年10日程度しか消化できないこと」。離職率は低く、総合職の同期は60人中50人が残っている。3年で半分辞めると言われる大手IT企業とは大きな違いだ。
しかしそんな恵まれた待遇も、今後は維持できないかもしれない。地銀全体の貸出資金利益は、2010年3月期の3.6兆円から右肩下がりが続き、14年3月期には3.2兆円。今後の高齢化や生産年齢人口の減少によって、ますます減ると見られている。
金融庁の資料によると、地域の「企業向け貸出残高」と「生産年齢人口」との間には高い相関関係が見られ、この傾向が続けば、2012~25年の間に貸出残高を10%以上減らす都道府県は34、うち20%以上減らすところが3つもあると試算されている。
関係者「トップダウンの再編が行われる」
このような予測の下、金融庁は地銀を対象とした2014年度のモニタリングを「現行のビジネスモデルに中長期的な持続性があるか」「業務の収益性について十分な管理を行っているか」といった点を重点的に行い、経営実態を把握していくとしている。
しかし関係者によると、これは表向きの言葉であり、実際には金融庁は「地銀の大再編」をトップダウンで行っていく意向をすでに固めているという。
ロイターは、すでに1月中旬に地銀・第二地銀との会合で、畑中金融庁長官が「業務提携、経営統合を経営課題として考えていただきたい」と異例の発言をしたと報じている。
地銀によっては、この流れを先取りしているところもある。2006年には、もみじ銀行(もみじホールディングス、広島県)と山口銀行が経営統合し、山口フィナンシャルグループを創設。2011年に福岡県内の山口銀行を「北九州銀行」に名称変更し、3県をまたぐグループを展開している。
若手行員には「年功序列」のメリットはない
このような再編待ったなしの地銀で働いている人は、いま何を考えているのか。キャリコネの口コミを見ると、「安定イメージ」が過去のものになったかのような厳しい状況を告発する書き込みも目に付く。
「貸出資金利益」の伸長を維持するために、地銀はターゲットを法人から個人にシフトするが、そう簡単に成果は上がらない。20代後半の地銀勤務の女性は、後輩の女子就活生に対して「人事は楽な印象の説明しかしない」と注意を呼びかけている。
また、20代後半の地銀勤務の男性からは、職場には高齢の社員が居座り、経営が硬直化しているという書き込みも寄せられている。
年功序列の組織は安心できる、というのは、組織が成長していた過去の話。収益性の低い組織では、働かない中高年に高い給料を払うための「言い訳」に成り下がっている。先輩たちの給料を稼ぐために、若い社員たちは低い給与で高いノルマ達成を要求される可能性が高い。
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