ブラック企業が社員を“洗脳”する手口の4段階
ブラック企業が社員を使い倒す手口は、カルト宗教における“洗脳”の手口とよく似ていると言われています。社員の価値観をガチガチに固め、「会社に貢献しなければ」「辛くても辞めるわけにはいかない」と思い込ませているためです。ブラック企業問題が「さっさと辞めればいいのに」で済まない原因はここにあります。
ではその手口とはどのようなものなのでしょうか? ブラック企業にはまり込んでしまわないよう、ブラック経営者が社員を“洗脳”する手口を考えてみましょう。
ブラック企業の洗脳の手口
ブラック企業が社員を“洗脳”する過程は、以下の4つの段階に分けられます。
- 最初は優しく、理想と夢を語る
- いきなり厳しく接する
- 目標までのタスクを与える
- 恩を着せ、負い目を感じさせる
それぞれの段階について、詳しく見ていきましょう。
(1) 最初は優しく、理想と夢を語る
ブラック企業の経営者や幹部は、最初から鬼のような態度で接してくるわけではありません。むしろ、入社面接や新人社員研修の段階では、他者への理解があるような態度を見せてきます。また、ビジネスに関しても“理想”や“夢”を前面に押し出した言葉を語ります。
「あなたの夢は当社で実現できますよ」「日本のために理想の社会をつくっていきましょう」といった言葉で、入社希望者や新入社員の心や自尊心をくすぐります。こうした優しい言葉や理想と夢で、まず社員を手元に置くのです。
(2) いきなり厳しく接する
優しかった経営者・上司は、いきなり社員に対して厳しく接してきます。明らかに達成不可能なノルマを課し、それに到達できないと知ると「こんなこともできないのか!」などと激しくののしります(まったく口をきかなくなる経営者や上司もいます)。また、「新人だけ服装に規定がある」「新人だけ大声であいさつしなければいけない」といった非合理な義務を設けることもあります。
こうした理不尽さや恐怖マネジメントに接することで新入社員たちは自信をなくし、価値観や判断力を失っていきます。また、「自分は下っ端だから叱られるのは当然だ」と思い込み始めます。
(3) 目標までのタスクを与える
上司から責められ、自分の価値観や能力に自信がなくなってしまった社員に対し、ブラック企業は「これこれこういう仕事をやればよい」という目標までのタスク(作業)を与えます。「じゃあ少し作業を軽くするから、これくらいならできるよな?」などと少し優しい(ように見える)言葉をかけることもあります。
実は、ここで与えられるタスクは、サービス残業や徹夜を駆使してなんとかこなせるレベルの激務であることがほとんど。
しかし、自分の価値を見失った社員にとっては、ありがたい“道しるべ”や“お導き”のように見えてしまいます。そのため、疑うことなくそのタスクに取り組み始めるのです。また、激務に身を置いてしまうことで、自分の現状をかえりみる余裕がなくなり、さらに言われるがままタスクを引き受けてします。これが第三段階です。
(4) 恩を着せ、負い目を感じさせる
日々の仕事が“ギリギリこなせる業務量”なので、社員の心身はすり切れていきます。そこで経営者や上司は、タイミングを見て彼らに優しくします。飲み会などで社員に食事・お酒をおごったり、MVPと称して金一封を贈呈したりするのがよくある手口です。
典型的な”アメと鞭(むち)”によるコントロールなのですが、社員たちはそれに気づきません。逆に「こんな出来の悪い自分に優しくしてくれる」「会社の期待に応えなければ」と負い目を感じ、ますます仕事に没頭していきます。こうして完全に疲れ果ててしまうまで“洗脳”され続けてしまうのです。
「自分がだまされるはずがない」と思っている人ほど詐欺に遭いやすいように、こうしたブラック企業の“洗脳”は、実際に体験してみるまで気づきにくいものです。しかし、事前にこうした手口を知っておけば、“洗脳”の途中で「どこかおかしいぞ」と気づきやすくなります。上記の手口を知り、ブラック企業にはまらないようにすることが重要です。