ブラック企業と戦うための「証拠の残し方」
ブラック企業に入社してしまった場合、残業代の支払いや待遇改善、退職時の対応などについて争いになる可能性があります。時には、裁判や労働監督署といった公的機関の判断を仰ぐ必要もあるでしょう
そうしたときに重要になるのが「証拠」。ブラック企業側から何を言われたのか、どんなことをされたのかを、しっかりデータとして残しておくことが大切です。
「違法では」と思ったら文書で残す
業務で「違法では」、「明らかにおかしい」などと思ったら、その都度、文書として記録しておきましょう。裁判や労働審判などでは、証拠は多ければ多いだけ有利。たかがメモと思わず、意識して記録しておくことが後々のためになります。
記録する内容は、「5W1H(誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どのように)」を意識して書くことが重要です。「○○年○月○日、××さんから~~するよう命令され、~~の理由で断ると~~と脅された」など、第三者が読んだだけでわかるように具体的に書きましょう。
なお、どのような文書で残すかですが、日記帳やノート、パソコンのワードファイルなどで構いません。ただし、あとから容易に改変できるような内容だと、証拠としての確かさが弱くなってしまいますので気を付けましょう。また、ネットのブログなど誰でも見られる形で、かつ個人情報が特定できる形で公開するのは、業務上の秘匿義務から問題になることがありますので避けたほうが無難です。
言葉の暴力・嫌がらせはボイスレコーダーで記録
パワハラやセクハラに悩まされているのであれば、ボイスレコーダーで加害者の発言を録音しておくことも有効です。近年は高性能のボイスレコーダーが数千円程度で購入でき、スーツの胸ポケットに入れておくことも可能。スマートフォンの録音アプリを活用するのも有りでしょう。
こうした録音について違法性を心配する声もありますが、パワハラやセクハラ、その他の違法行為の証拠としてこっそり録音することは、犯罪には当たりません。会社という公共の場での会話、しかも自分自身(=被害者)に向けられた発言を録音するわけですから、プライバシー侵害にも該当しません。
ただし、録音しているのに「録音していません」と伝えて(つまり意図的にだまして)相手の発言を録音すると、裁判等の証拠として採用されないこともあります。また当然ながら、自分以外の第三者に向けられた会話をこっそり録音することも、証拠として採用されない可能性が高いでしょう。
自分の発言も証拠に残しておく
会社側の言動を証拠として残しておくことも大切ですが、自分自身の発言・行動も証拠に残しておくことが求められます。例えば以下のような言動です。
- ・非合理な退職を強いられた際に「辞めるつもりはありません」と返答した
- ・違法な業務を強いられた際に、「受け入れられません」と拒否した
- ・セクハラ、アルハラなどを受けた際にはっきりと「不愉快です」と返答した
こうした発言を記録しておくことで、「退職勧告や違法行為、嫌がらせを承諾しなかった」という証拠になります。口頭で返答するだけでなく、会社側にメール等で改めて伝えておくと「言った・言わない」の争いを避けられます。
その他、残しておきたい証拠
その他にも以下のものがあると、ブラック企業と戦う際に有力な証拠になりえます。
- ・タイムカードのコピー
- ・給与明細
- ・雇用契約書(なければ就業当時の求人票など)
- ・就業規則のコピー
これらの書類は過重労働や残業代未払い、待遇に関する契約内容などの証拠になります。就業規則はいつでも労働者が閲覧できるようにしなければならないため、会社側に要求しても全く問題ありません。もし「就業規則がない」と言われたら、その発言もその場でメモしておきましょう。
タイムカードがないのであれば、出社時間と帰宅時間を毎日記録しておいたり、家族や友人に伝えておいたりすることも一つの方法です。帰宅時にオフィスの写真を(時計なども写るように)撮影しておいてもいいでしょう。またこの時、窓の外から夜景がわかるように撮影すると、深夜まで働いていたことの証明になりやすいです。