違法すぎる“ブラック企業の言い訳”8選
ブラック企業につきものなのが、労働基準法違反。しかしブラック企業の中には、もっともらしい言い訳をつけて労働者側をやり込めようとする会社もあります。もし会社側から以下のようなことを言われたら、労働基準法や関係する法規に違反している可能性がありますから、注意しましょう。
- 「正社員以外には賃金の深夜割増はない!」
- 「年俸制だから残業代の支払い義務はない!」
- 「パート社員には有給休暇の制度がない!」
- 「工場の設備を入れ替えるから社員は休業。その間は無給!」
- 「営業ノルマを達成してないんだから給料は現物支給!」
- 「労災保険は正社員にしか適用されない!」
- 「社員10名中、正社員は2人だけだから就業規則は必要ない!」
- 「仕事中に設備を壊したので、修理代を給料から天引きする!」
1.「正社員以外は賃金の深夜割増はない!」
労働基準法では、午後10時から午前5時までの間の労働分については、通常の労働時間における賃金の25%以上を上乗せした割増賃金を支払わなければなりません。そしてこれは正社員以外のアルバイトや契約社員にも適用されますから、正社員にしか深夜割増が適用されないという言い訳は違法です。
2.「年俸制だから残業代の支払い義務はない!」
年俸制は一年間に支払う賃金の総額をあらかじめ決定しておくものです。そして、その賃金は通常通り働いている状況を想定した金額と見なされます。したがって、年俸制であっても法定労働時間(1日8時間、1週40時間)をオーバーした分については、会社は残業代(時間外手当)を支払う義務があります。
ただし、「年棒には1か月あたり○時間分の時間外労働手当を含む」、「年棒には年あたり○日分の休日出勤手当を含む」といった条件で労働契約している場合は、その分に関しては残業代が支払われません。
3.「パート社員には有給休暇の制度がない!」
有給休暇はパート社員やアルバイトなど、所定労働日数が少ない労働者(フルタイムでない労働者)にも付与されます。したがって、パート社員には有給休暇は付与されないという言い訳は、労基法違反です。
ただし、その付与日数はフルタイムの正社員の場合よりも少なくなります。例えば、フルタイムの正社員の場合、雇用されてから6か月の勤務後に10日分の有給休暇が付与されますが、週3日労働のパート・アルバイトの場合、6か月の勤務後に5日分の有給休暇が付与されます。詳しくは以下の表を参考にしてください。
非正規社員に付与される有給休暇日数
週間 労働日 |
年間 労働日 |
雇入れ日から起算した継続勤務期間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半 | ||
4日 | 169~ 216日 |
7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~ 168日 |
5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~ 120 日 |
3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~ 72 日 |
1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
4.「工場の設備を入れ替えるから社員は休業。その間は無給!」
労働基準法では、使用者(会社、経営者)の都合による休業の場合、使用者は、休業期間中の労働者に平均賃金の60%以上の手当を支払うことが義務付けられています。使用者の都合による休業とは、「工場の機械が壊れたから休業」「材料が届かず仕事にならない」などです。
5.「営業ノルマを達成してないんだから給料は現物支給!」
労働基準法では、賃金は全額を通貨によって支払わなければならないと決められています。そのため、ノルマ未達成や販売促進といった理由があっても、給料を商品の現物支給にすることはできません。ただし労働協約などによって、別途定めがあれば現物支給が認められる場合もあります。転職前には十分注意しましょう。
6.「労災保険は正社員にしか適用されない!」
労災によって労働者が怪我などを負った場合は、正社員だけでなく、契約社員やアルバイト、パート、日雇い労働者、外国人労働者(不法就労者も含まれます)などすべての労働者が労災保険の対象となります。また勤務期間や勤務時間も関係なく、働き始めた当日の労災であっても保険給付を受けることができます。
7.「社員10名中、正社員は2人だけだから就業規則は必要ない!」
10人以上の労働者がいる職場では、必ず就業規則を作成する事が義務付けられています。この労働者とは、正社員や契約社員、アルバイトなどすべての労働者を含みますから、このような言い訳では就業規則を作らない理由にはなりません。
8.「仕事中に設備を壊したので、修理代を給料から天引きする!」
労働者の責任で会社の設備や所有物を壊してしまったとしても、その賠償金を給料から天引きすることは違法です。加えて、「事故や機材の破損は全額労働者が弁償する」といった労働契約を結ぶことも労基法違反です。
そもそも会社には事故を防止し、損害を最小限に留めるように努める危機管理義務があります。そのため、事故・破損を起こした労働者に全負担を求めることは現実的ではありません。ただし、常識的に考えて労働者が注意すべき責任を果たしていない場合、多額の賠償金を求められることもあり得ます。