ブラック企業をのさばらせる12の「社畜」思想
日本の労働現場では、ブラック企業がのさばる背景として、「社畜」と呼ばれる従順な社員の存在が挙げられます。彼らは自身の権利を軽視し、会社のために自己犠牲を強いられることを当たり前と考えがちです。
このような思考や行動が、ブラック企業の存続を支え、改善を妨げる原因となっています。今回は、ブラック企業を助長する「社畜」の12の価値観を掘り下げます。個々の意識改革が、健全な労働環境の実現に向けた第一歩となるでしょう。
1.有給休暇の取得に罪悪感がある
有給休暇は労働者の当然の権利ですが、「自分が休むことで職場に迷惑がかかる」と感じてしまう人がいます。この罪悪感が、有給を申請することをためらわせ、過重労働を助長します。企業はこの心理を利用して、社員を休ませないまま労働力を搾取します。
2.会社のどんな命令にも従うのが当然
「会社の指示に従うのが大人の責任」という思い込みが、理不尽な要求や違法な命令にも従順に従う原因となります。疑問を持たずに従うことで、ブラック企業は際限なく社員を酷使することが可能になります。
3.与えられた仕事は全部引き受ける
「自分で全部やらないと責任を果たせない」という考えから、業務を他者に任せず一人で抱え込みがちです。この結果、属人化が進み、仕事量が膨れ上がって長時間労働を招きます。さらに、他の社員にも無言のプレッシャーを与え、過労が常態化していきます。
4.長時間労働は美徳
長時間労働やサービス残業、休日出勤を美徳と考え、「会社のために頑張っている自分」に誇りを感じる人もいます。これが、他の社員にも無言のプレッシャーを与え、過労や労働力の搾取が常態化します。
5.仕事の忙しさは成長の証
「仕事が忙しければ成長している証拠」と考え、時間的余裕がないことを誇らしく思う傾向があります。しかし、これが長期的には心身の健康を損ない、会社全体のパフォーマンス低下につながります。
6.体調不良で休む同僚に怒りを覚える
体調不良で休む同僚に対して、「自分は我慢して働いているのに」と不満を感じる人もいます。これが、無理をして出社する風潮を助長し、職場全体の健康リスクを高める要因となっています。
7.上司が残業するなら部下もすべき
「上司が働いているなら部下も帰れない」という同調圧力が、無駄な残業を生み出します。結果として、仕事の効率化よりも、長時間オフィスにいること自体が評価される風土が出来上がります。
8.会社の飲み会は全員参加すべき
飲み会も仕事の一環と考え、全員参加を強要する風潮があります。プライベートの時間を削ってまで参加することで、社員の心身の疲労が蓄積し、生産性の低下につながります。
9.忠誠心は成果より大事
ブラック企業では、社員の貢献度は仕事の成果ではなく、どれだけ会社のために尽くしたかによって評価される傾向があります。そのため、成果を出しても評価されず、長時間労働や過剰な自己犠牲が求められる社員が報われやすい環境が生まれます。
10.新人が残業代なんて甘え
新入社員が適切な残業代を求めることを「甘え」と考え、過剰な無償労働を強いる風潮があります。これが、ブラック企業の若手社員に対する搾取を助長し、新たな「社畜」を育成する温床となります。
11.この会社以外に行く道はない
「他の会社では通用しない」「今の会社にしがみつくしかない」という思い込みが、他の選択肢を排除し、過酷な労働環境に甘んじる原因になります。変化を恐れることで、ブラック企業から抜け出せない要因となります。
12.転職者は裏切り者だ
転職者を「責任感がない」「他の会社では通用しない」「裏切り者だ」と批判する風潮が、転職をためらわせ、劣悪な職場環境に長期間留まることを強要します。この考えが、企業の人材流動性を低下させ、労働市場全体の健全化を妨げています。
「自己犠牲を美徳」が共通点
社畜という言葉は、多くの場合「会社に飼いならされている家畜」、「会社の言うことを何でも聞く奴隷」といった皮肉を込めて用いられています。
単なる「会社人間」や「仕事中毒(ワーカホリック)」を超え、「自分の考えや信念、良心を放棄し、命じられるままに働く」という意味合いが強く込められているのが特徴です。
さらにそこから「セルフマネジメントできない」「効率よく働けない」「みんなと一緒でなければ行動できない」といったネガティブな意味も込められるようになっています。
ブラック企業が存在し続ける背景には、こうした「社畜」思考が深く根付いています。社員一人ひとりが自己犠牲を美徳と捉え、権利の主張をやめることで、企業は労働力を搾取し続けることができるのです。
しかし、働く環境を健全なものにするためには、まずは個々の意識改革が必要です。自分自身を守るために、そして次世代により良い職場環境を引き継ぐために、私たち自らが意識の変化を起こしていきましょう。