ブラック企業と「仕事に厳しい会社」の違い
ブラック企業について語るとき、しばしば「ノルマを達成できないだけで怒られるからブラックだ!」、「成果が出ないとすぐに減給されるからブラック企業!」といった声が上がることがあります。しかし、ノルマがあったり給与に差をつけたりするだけで、ブラック企業といえるのでしょうか? それは単なる“仕事に厳しい会社”である可能性もあります。
世の中には、「ノルマや人事評価は厳しい会社だけど、自分のスキルアップにつながる会社」だってあるはずです。そんな会社を見逃さないためにも、ブラック企業と厳しい会社を比較してみましょう。
これだけではブラック企業とは言えない!
まずは以下に「間違ったブラック企業批判」をいくつかピックアップしてみました。これらに当てはまるだけでは、仕事に対するプレッシャーが厳しい会社とは言えても、ブラック企業とは言えません。
- ・高い数値ノルマがある!
- ・ミッション達成へのプレッシャーが強い!
- ・常に前年を上回る目標設定を課される!
- ・個人の成果が給与や人事評価に直結する!
社員の給与は天から降ってくるものではありません。求められるパフォーマンスを発揮し、雇用契約や事前の話し合いで交わしたミッション(仕事の役割)を達成することで会社から支給されるものです。また同時に、会社というものは営利組織です。つまり、求めるパフォーマンスに満たない社員や、ミッションを果たさない社員に対しては厳しく接しなければ存続が立ち行かなくなってしまいます。上の4点を満たしたからといって、必ずしもブラック企業とは言えないことをしっかり認識する必要があるでしょう。
ブラック企業と厳しい会社の違い
ではブラック企業と厳しい会社は、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか。社員に対してシビアな判断が下されやすいシーンを例に、両者を比較してみましょう。
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ブラック企業 |
仕事に厳しい会社 |
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社員に課すミッションについて |
個々人の職種や雇用契約を無視した場当たり的なものである。また、他社と比較して給与や待遇に見合わないことが多い。 |
個々人の職種や雇用契約と合致しており、他社と比較しても給与・待遇に見合ったミッションである。 |
ノルマ未達成について |
「お前は馬鹿だ」、「給料泥棒」といった人格を否定する言葉で社員を罵倒する。未達成分を自腹で補てんさせることもある(自爆営業)。 |
社員を叱責するものの、「なぜノルマ達成できなかったのか」、「今後はどうするのか」などロジカルなチェックや助言がある。 |
社員評価について |
社員の能力・成果に関わらず、上司や経営者の好き・嫌いや「鶴の一声」で決まることが多い。 |
社員ごとに給与や待遇の差はあるが、能力や成果に基づいた一貫性のある基準で評価される。 |
社員のミスについて |
罰金や暴力行為で処分する(誤発注を自腹で買い取らせるなど)。 |
人事評価として処分し、ミスそのものは会社が責任を負う。 |
ブラック企業側に共通するのは理不尽さや不合理性、対して厳しい会社側に共通するのは合理性や一貫性と言えそうです。たとえ高いノルマを課されても、またたとえ人事評価が厳しくても、そこに合理性と一貫性があれば──つまり“納得できる根拠”があれば、ブラック企業と判断することはできないでしょう。
間違ったブラック企業観に振り回されない!
ここまで見てきたように人事評価の厳しい会社、仕事へのプレッシャーがある会社が、必ずしもブラック企業だとは言えません。転職先企業の求人票や会社の口コミ情報などを検討する際、「人事評価が厳しそうだ。ブラック企業かも…」などと思い込まないようにする必要があるでしょう。
もちろん、「シビアな会社は性格的に合わないから、辞退する」といった判断は自由です。大切なのは、ブラック企業を恐れるあまりに偏ったブラック企業観や思い込みで会社選びをしないこと。フラットな視点で転職先企業を検討することで、多種多様な企業に目を向ける余裕が生まれ、ひいては幅広いキャリアの選択につながるのです。