ブラック企業でよくある退職引き止めの5パターン
ブラック企業で退職の意思を切り出すと、多くの場合は会社側に引き止められます。中には脅しまがいのセリフで引き止め工作を行う会社もあるため、「辞められないかも」と思い悩む人もいるでしょう。ブラック企業でありがちな退職引き止めの事例と、その対応策を考えてみます。
- 法的措置をちらつかせた脅し
- 後任者の不在を持ち出す
- 給与改善・待遇改善の意思を示す
- 退職者の情に訴える
- 退職者の人格を否定する
1. 法的措置をちらつかせた脅し
法的措置をにおわせるセリフで退職を撤回させようとします。例えば、「お前が辞めると顧客に迷惑がかかる。賠償金を請求するがそれでもいいのか」といったセリフです。しかし仮に顧客企業に迷惑がかかったとしても、それは後任者を準備できなかった会社側の責任です。そのような脅しに応じる必要は全くありません。
雇用契約書を持ち出して、「『期間の定めなし』と書いてある。契約違反だ!」と引き止める会社もあるようですが、これも間違いです。雇用契約書における「期間の定めなし」とは、「会社側に雇用の期限がない(=会社側が簡単に解雇できない)」ということであり、永久にその会社で働くということではありません。したがってこの脅し文句も無視してOKです。
これら以外の法的措置を持ち出された場合でも、退職を撤回してはいけません。もし本気で訴えてきそうであれば、「では労基署と相談します」と返答し、すぐに労基署に事実関係を伝えてアドバイスを求めましょう。
2. 後任者の不在を持ち出す
「後任がいないので辞められると困る」、「後任者が見つかるまで待ってくれ」といったセリフがこのパターンに該当します。しかし後任者を見つけるのは会社側の役目であり、退職者には関係がありません。後任者不在は転職を思いとどまる理由にはならないと、しっかり認識しておきましょう。
ただし、後任者への業務引き継ぎは退職者の仕事です。こちらの記事を参考にして、業務引き継ぎについて予習しておきましょう。また、後任者不在で引き継ぎ業務を行えそうにないのであれば、引き継ぎマニュアルを作成すればOK。自分の業務内容とその処理手順、取引先リスト、必要資料の場所などを文書にまとめ、パソコンフォルダに残すか、ファイルとして残しておきましょう。もちろん、引き継ぎマニュアルの置き場所を上司に伝えておくことも忘れずに。
3. 給与改善・待遇改善の意思を示す
甘い言葉を見せるのも、ブラック企業の引き止め工作によくある例です。「給料を上乗せするから辞めないでくれ」、「もっと良いポジションに昇格させるよ」といった言葉で、考え直すよう説得してきます。
こうした誘いは口先だけの可能性が高いので、退職を取り下げてはいけません。また、仮にその場では給与・待遇が改善されたとしても、将来はどうなるでしょうか? 退職まで思いつめないと雇用条件が改善しない会社は、まともな人事評価が機能していないということです。キャリアを曲げてまで働き続ける価値は低いので、退職の意思を貫きましょう。
4. 退職者の情に訴える
「今まで育ててやったのに…」、「一緒に働いてきた仲間たちを見捨てるのか」といったセリフがこれに当たります。しかし、ブラック企業やその経営者、上司があなたの望む人生や将来のキャリアを実現してくれる保証はどこにもありません。情に流されず、ビジネスライクに考えることが大切です。
「君のような優秀な社員に抜けられると倒産してしまう」などと、自尊心をくすぐる言葉を投げかけてくるブラック企業もあります。しかし、社員が1人抜けただけで倒産するような会社に未来はないでしょう。さっさと退職したほうが賢明です。
5. 退職者の人格を否定する
退職の意思を伝えると、悪口雑言で罵倒してくるブラック企業もあります。「お前のような奴は転職先でも成功しない」、「逃げ出すなんて最低だ」といった具合です。当然ながらそうした言葉を真剣に受け止める必要も、耳を貸す必要もありません。適当に受け流して、退職の準備に取り組みましょう。
日本国憲法の第22条には「職業選択の自由」が定められており、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と記されています。いざとなれば労基署や司法機関を味方につけることも可能ですから、ブラック企業に退職を妨害されても怖気づくことはありません。堂々と退職届を出し、転職活動を行ってください。